Re:征服者〜1000年後の世界で豚公子に転生した元皇帝が再び大陸を支配する〜

鴉真似≪アマネ≫

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転生・蘇る大帝

第5話 武器、そして疑念

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 レオンハルトたちが武器を求めて領内一の鍛冶屋へとやってきた。物寂しげな室内には無骨な武器がずらりと並んでおり、飾り気のない室内には鉄を打つ音が響き渡り、置かれている武器たちと共鳴していた。

 その職人の空間に水を差すようにーー

「失礼する!ガイアス殿はおられるか!武器の制作を依頼したい!」

 腹に目一杯の力を込めて、まだ幼い声帯を震わせて、レオンハルトはそう叫んだ。
 鍛冶屋の奥に聞こえる金槌の音がピタリと止み、入れ替わるように野太い男の怒鳴り声が室内を震わせた。

「なんだいなんだい!一体どこのお子ちゃまだ!」

 そういって裏から出てきたのはその声に似つかわしい威厳たっぷりの面をした男だった。
 身長は低く、しかしそれでもレオンハルトより高い。そしてレオンハルトとは違う意味で横幅が広く、ボディービルダーよりも二回り大きい上半身は鎧のような筋肉を纏っていた。

「おうおう!貴族のボンボンだあ?!帰れ!ここは子供のあそび?……あぁ?……お前さん、何もんだ?」

 突然の態度の切替にレオンハルトを含んだ3人は戸惑いを隠せずにいた。
 そんな中でいち早く反応したのはレオンハルト。

「俺はレオンハルト。このライネル領の領主代理をやっている、といっても今は名ばかりだがな。こっちの2人は従者のセバスチャンとシリアだ。貴殿がガイアス殿であるな?」
「……ああ、オレがガイアスで間違いない……しかしお前さん、何もんだ?」

 先ほどと全く同じ質問をガイアスはレオンハルトにぶつける。

「ん? レオンハルトといったはずだが」
「そういうんじゃ……なんつうか……こう、雰囲気がな、ガキのそれじゃねんだよ。立ち姿も武人のそれだ。その体型なのに威圧感は他と段違いだ……何もんだ?」

 鋭い、とレオンハルトは思った。

 レオンハルトにはアレクサンダリア1世の人格が宿っていることを気づいたたものはいない。かつてのレオンハルトとは違うのだろうとは思うが、それは改心によるものだと決めつけている。

 しかし、ガイアスは見た目に惑わされることなく、レオンハルトの本質を見抜いていた。亜人特有の勘の鋭さもあるだろうが、ガイアスの人を見る目が確かなのは間違いないだろう。

「何者でも構わないだろう。ドワーフは武器を使いこなせるかどうかで客を判断するのだろ? 俺が何者かは関係ないではないか?」
「……確かにそうだが」
「それに何者だと言われても、俺は俺。それだけだ……まあ、仲良くなれば昔話ぐらいはしてもいいがな」
「……わかった。武器が欲しいんだったな。そこら辺に置いてあるから気に入ったのがあったら」
「いや、そうじゃない。オーダーメイドを頼みたい。少々特殊な武器でな」
「ほう?」

 ガイアスはわずかに目を細めた。視線に鋭さがまし、ただでさえ剛面の顔に凶悪さが加えられた。泣く子がさらに泣き喚くぐらいの効果はありそうだ。

「作って欲しいのは大刀、俗に言う偃月刀と呼ばれる武器だ」
「特別珍しいというわけでもないだろ。そこら辺にも置いてあるんじゃねーか?」
「ああ。だが材料が少々問題があってな……全部黒鉄で作って欲しいんだ」
「はあぁ!?」

 黒鉄というワードに、ガイアスはわかりやすく動揺した。レオンハルトの後ろに控える従者2人も驚きを隠せずにいた。

「レオンハルト様、黒鉄と言うとあの?」
「ああ、あれ以外に黒鉄と呼ばれるものはないだろ?」
「ばかな! 純黒鉄の武器なんぞ使えるわけねぇだろ! あれはそんじょそこらの金属の何十倍も重いんだぞ!」

 黒鉄とは、鉄に大量の魔力が染み込んだ魔導金属である。魔導金属の中で有名なのものには、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンなどがある。いずれも天然で採取されるものばかり。

 しかし、黒鉄は違う。黒鉄は元々はただの鉄であり、それがとりわけ魔力の濃い場所に長年置かれたことで変質したもの。ただの金属が後天的に魔導金属としての性質が与えられたということ。

 黒鉄以外の、と言うより天然の魔導金属の特徴は魔力を通しやすい、軽るく、防具や杖に多用される。

 だが、黒鉄は後天的に生まれた魔導金属であり、鉄に大量の魔力が染み込んでいる。普通の魔導金属よりも遥かに濃い密度で存在している。そのため、魔導金属のほとんどの性質を持っているにも関わらず、重いのである。

 このことから魔力には重さがあるのではないか、という学説が生まれたのだがこれはまた別の話。

 ちなみに、魔導金属はどれも貴重だが、名に色が用いられたものは、その中でも最上位に位置する。

 つまるところ、レオンハルトが武器に魔力が通りやすいこと、頑丈であること、そして重いことを求めている。

「俺から言わせれば軽い武器なんぞ、甘えだ。武器は重ければ重いほどいい。質量がそのまま攻撃力になるからな。上から落とすだけで敵を圧殺できるぐらいものがちょうどいい」
「でも使えなきゃ意味ねぇだろ」
「だから、それが甘えだといっている。使えないなら、使えるようになるまで」
「……本気なんだな?」
「無論だ。作ってくれるか?」
「……正直にいうとあまり気乗りしねぇ、がお前さんは使いこなせるんなだ?」
「使えるかどうかはガイアス殿の腕次第だ。俺が使うにふさわしい武器を作ってくれよ?」
「かぁ~いうじゃねぇか。いいだろ、このガイアス、お前さんの依頼、引き受けた!」
「おお! それはよかった。正直断られると思ったぞ」
「あんなこと言われて断れっかよ。まったく」
「そうか、では頼んだぞ!」
「おうよ!」

こうして、無事レオンハルトの武器入手の目処が立ったのであった。

「っあ、そういえば……シリア」
「あ! はい!」

思い出したかのようにレオンハルトはシリアに命じてとあるものを取り出させた。

「ガイアス殿。この酒なんだが」
「うおぉ! こいつぁ『龍殺し』じゃねーか」
「これをガイアス殿にあげよう。もう一樽あるんだが、それは依頼完遂後だ。満足のいく武器が作れたらそれもあげよう」
「まじでかああぁぁ!」

 こうして、無事にガイアスのやる気を引き出せたのであった。



 屋敷への帰り道、上機嫌なレオンハルトとは反対に、浮かない顔のセバスチャンであった。

 何か決心したかのようにセバスチャンが口を開く。

「レオンハルト様、少しよろしいでしょうか?」
「ん? いいぞ」
「先ほどガイアス殿がおっしゃったことですが……レオンハルト様には他にない凄みがある、と。私もそう思っています。しかし、失礼ながらレオンハルト様に関する噂はお世辞にも良いものとはいえません。……決闘の後に、一体なにがあったのでしょう?」
「……ああ、それか。あったといえばあったな。まあ、ガイアス殿にもいったが、仲良くなったら俺の昔話でもしてやろう、と。今はそれで納得しろ」
「……はい」

 望む答えを引き出せず、げんなりとしてしまったセバスチャンの横でシリアが、

「わ、わたしは、なにがあっても、レオンハルト様についていきますので!」
「ははは、ありがとうな、シリア。頼りにしてるぞ」
「はい!」

 望む答えを引き出したシリアは上機嫌であった。

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