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学園・出逢いは唐突に
第7話 親睦会
教室に入ってきたのは、レオンハルトの予想通りシュナイダーである。
その後ろにはレオンハルトの試験官だったクールビューティーな美人教師が共に入ってくる。心なしか、顔がひどく疲れたように見えた。
「はい、みんなおはよう。このクラスを受け持つことになったシュナイダーだよ。気軽に接していいからね。ジュナくんとか呼んでくれていいからね。あっ、こちらは副担のミネルヴァ先生だ」
「ミネルヴァです。このクラスの副担任を受け持つことになりました。3年間、みんなといい思い出をーー」
「はい、拍手!パチパチパチ」
「ちょっと! まだ自己紹介の途中です!」
開始早々いきなりかましていくシュナイダーに振り回されているミネルヴァ。苦労人である。
しかし、生徒たちはそれどころじゃなかった。
「おいおい、麗剣のシュナイダーが担任かよ!」
「最っ高! マジか! 最っ高!」
「きゃー! シュナイダー先生かっこいい!」
護国の三騎士が担任ということで皆のテンションが天元突破しようとしていた。レオンハルト以外は、と但書は付くが。
しばらく立ち、生徒たちに落ち着きが見えると、シュナイダーが、
「はーい、じゃー自己紹介終わり! みんな仲良くするように。折角頑張って皇立学院に入ったんだ。楽しまないと損だよ」
「約1名、頑張ってない人もいるようですけどー」
「全くだ! 不正野郎と一緒に授業できるか! エルサと同意見なのはむかつくけどな」
「私もあんたと同意見なのはむかつくわよ!」
「何を!」
「何よ!」
再び喧嘩を初めてしまうのは、やはりと言うべきかエルサとバースだった。
しかし、2人ともレオンハルトを認めようとしないのは共通している。
それを見たミネルヴァは何か言おうとする。
「ちょっと、2人とも。あれはーー」
「まった、ミネルヴァ先生」
「シュナイダー先生?」
しかし、それはシュナイダーによってはばかれる。
シュナイダーは下顎に手を添え、考える仕草を見せる。そして、ニヤリと口元を歪ませ、犬歯を露わにする。
「全く、仲良くって言ったばっかなのにねぇ。困ったよぉ。どうしようかなぁ……そうだ! 今からクラスで親睦会をやろうか!」
「「「親睦会?」」」
「そう! てなわけで、みんな! 着替えて着替えて。訓練場にいくよ~……ふふ、楽しくなってきた」
ポンと手を叩き、取ってつけたかのような喋り方で、シュナイダーが言い放つ。
生徒、そしてミネルヴァ先生も置いてけぼりである。
そんな中、レオンハルトの嫌な予感は増していったのだった。
◆
右も左も分からず、生徒たちは着替えて訓練場に集合していた。シュナイダーは生徒たちの前に立ち、その横にはずらりと武器が並んであった。
「はーい。じゃーそれぞれ、自分の得意の武器を取ってってね」
「……あの、先生」
「なんだい?」
「これのどこが親睦会なんですか?」
「何を言ってるだい? 立派な親睦会じゃないか! 今時の青春と言ったら! 友情、努力、喧嘩! この3本柱は外せないでしょう! と言うわけで、みんなには今から喧嘩してもらいます!」
「「「はあ!?」」」
「あっ、大丈夫大丈夫。保健の先生連れてきたから、死ななければ怪我なんてすぐに治るよ」
「いきなり連れて来られて、どうしたのかと思ったら……あんたってやつは」
これまた1人、苦労人のようか面構えである。金髪碧眼の美女であるが、シュナイダーが急いで引っ張ってきたせいか、多少汗をかいており、息もきれていた。
「と言うわけで! チーム分けを発表します! ドキドキ、ワクワク」
「「「……」」」
「ごっほん! まずはA~チーム! アーサー・ヴェルエム、エルサ・ローカム、ディール・アルハジオン…….」
次々と生徒の名前が呼ばれていく。Aチームの人数が半分を超えたところで、生徒たちは異変を察知する。シュナイダーが一向に止まる気配がないというとこだ。
「……ワトソン・グリム。以上19名!」
「あの、先生ーー」
「引き続きB~チーム!」
「あっ」
シュナイダーに疑問を呈しようとする生徒たちだが、その前にシュナイダーは次のチーム発表にうつっていた。
「レオンハルト・ライネル! 以上1名! このチームで戦ってもらうよ」
「はぁ……」
「「「はあ!?」」」
19対1。まさかのチーム分けである。いや、レオンハルトはある程度予想していたようだが。
「ちょっと待ってくだい! いくらなんでもこのチームは分けはあんまりじゃないですか?」
「そうよ! いくら裏口入学だからってクラス全員でボコボコにすることないじゃない!」
「いいんじゃね? 俺はすっきりするし」
上からフレデリック、エルサ、バースである。
フレデリックはレオンハルトを庇い、エルサもなんだかんだいってレオンハルトを庇っている。バースだけは闘う気満々であるが。
「そう? そっちにはリンシアもいるし、いい勝負になると思うんだけど?」
「はい?」
「そんじゃー始めるよー!」
「ちょっと!」
「あっ、言い忘れてたけど、手、抜いちゃダメだからね。授業で手を抜くことは、このシュナイダー先生が許しません! あっこれ、一回言ってみたかったんだよね~」
生徒たちはさらにどよめく。
生徒側からしたら、手加減せずにレオンハルトをボコボコにしろと言われたのだと思っている。しかし、レオンハルトだけは違った。
「……それ、どういう意味かわかってるのか?」
「もちろんさ」
「……そうか」
「それじゃー今度こそ始めるようー.....用~意、スターット!」
その瞬間、レオンハルトは消えた。
陸跡魔闘術ーー歩跡・凩
(この技は一度見せているからな。使わなかったら手加減って言われかねない)
歩跡・凩を使い、素早く間を詰めていくレオンハルト。
一方、レオンハルトの速度に反応できる同級生はいなかった。
一番近かったクラスメイトに近づき、力こそ込めなかったが、走った勢いのまま腹に一撃打ち込む。
(まずは1人っと)
それだけで、そのクラスメイトは弾丸のように吹っ飛んでいき、訓練場の壁にぶつかってやっと止まる。
それでも、他のクラスメイトは反応できない。
1人吹き飛ばされた?と吹き飛ばされた生徒の方に首を向けると、次の瞬間別の方向にもう1人が吹き飛んでいく。
「「「は?」」」
吹き飛ばされたり、地面に叩きつけられたり、気絶させられたりと、次々とやられていくクラスメイト。
やっと、レオンハルトの動きが止まり、嵐が過ぎ去ったかのような惨状だけが残る。
この時点で立っていられたのは、5人。
ディール、フレデリック、バース、エルサ、そしてリンシアである。
何もこの5人が特別に強いわけではない。
ただ、運よくレオンハルトに攻撃されなかっただけのこと。そして、レオンハルトが止まったのは、彼らを指導するため。流石に、このままでは一方的過ぎるからだ。
「攻めないと勝てないぞ。そもそも、5人中4人は構えてもいないではないか」
「「「……」」」
4人とは、ディール、フレデリック、バース、エルサのこと。リンシアだけはしっかり武器を取ってレオンハルトを見据えていた。
その目に、レオンハルトは思わず鼓動が高鳴る。
レオンハルトとリンシアが睨み合いをしている間に、4人が我に返る。
「おい、どういう状況だ! これ!?」
「私だってわかんないわよ!」
「みんなやられたのか!?」
「……状況から見て、間違いないでしょ。彼、強いね」
「嘘でしょ!? 強いなんてもんじゃないわよ!? あの一瞬で14人も! どういうこと? 彼、裏口入学って言われてたわよね!」
「そんなの嘘に決まってんだろ! あの威圧をみろ、オレ、さっきから足がプルプル震えてるぜ」
「なっさけないわね……と言いたいところだけど、私も」
「おれもだ。ったく、強いとは思ったがここまでとは」
「無駄話してる場合じゃないよ。彼のいう通り構えないと。またあれをやられたらひとたまりもないよ」
フレデリックの指摘に3人とも構えをとるが、それがレオンハルトに通用するかどうかは別である。
「構えがお粗末だぞ。ここをつかれたらどう対応するつもりだ?」
「な!?」
フレデリックは長剣を構えているが、その構えには隙が多かった。いや、隙が多いというほどではないが、レオンハルトから見たら穴だらけもいいところだ。
あっという間に崩されたフレデリックは足元がふらつく。
「足が疎かだぞ」
そう言って穂先を足の着地地点に向かって突き出す。ただでさえ不安定な体勢だったのだから、当然のように転ぶ。
だか、彼が転ぶ前にレオンハルトが一歩踏み込んで、一回転し、回し蹴りで彼を蹴り飛ばす。
(……ん? なんだ、この感触は?)
「フレデリック!」
「何をぼうっと見ている。せっかく4人いたのに3人になったではないか」
「「「!?」」」
改めて3人に向き直ると、3人は今までとは比にならないプレッシャーを感じる。蛇に睨まれたカエルとはまさにこのこと。
「格上相手に守りに回ってどうする! 攻めろ!」
「「「!!」」」
レオンハルトの一喝により、真っ先に動き出したのがディールである。手に持つハルバードを大きく構えながら突進してくる。
「勢いはよし! だが、動きが荒い!」
「ぐっは!」
そのハルバードを振り下ろす前に、レオンハルトが先に間合いを詰め、石突きを腹部に打ち込む。ディールはそのまま倒れ込み、気を失う。
「バラバラでくるな! 人数の差を利用しろ! といってももう2人しかいないが」
そう言われた2人、同時に動き出す。左右に回り込み、挟むようにレオンハルトに突進する。
2人とも軽戦士タイプで、エルサの手にはレイピア、バースの手にはメリケンサックが嵌められている。
「息ぴったりだな、2人とも」
「「うっさい!」」
やはり息ぴったりである。エルサが突き出すレイピアを槍で弾くが、すぐ後ろにはバースが迫っていた。そのままレオンハルトの後頭部に向かって拳を放つ。
「もらった!」
しかし、レオンハルトは間一髪のところで首を捻り、難なく回避する。
そして、レオンハルトはなんと、手に持っていた槍を手放した。そのまま突き出されたバースの腕を掴み、背負い投げの要領でぶん投げた。
「は!? お、おい」
「ちょ、ちょっと!」
そのぶん投げた先にはエルサがいた。そのままぶつかり、2人仲良く気絶する。
そんな2人に目を向けながら、レオンハルトは手放した槍を拾う。
「待たせたな」
「……いい」
「武器を手放した時にでも攻撃すればいいのに」
「……よくいう……まるで、隙がなかった」
レオンハルトは最後の強敵である、リンシアと向かい合っていた。
「久しぶりだな。3年ぶりか? 俺のこと覚えてるか?」
「……当然。強い人、忘れない」
「あはは、それは嬉しいね」
「……御託は、いい。そんな顔、してない」
「あはは、嬉しいってのは本当さ」
今のレオンハルトの顔はかつてないほど獰猛だった。それこそ、獲物を前に待ったをかけられたライオンのような。
対するリンシアも、普段のクールな顔では想像できないほど凶暴だった。
身の丈ほどの大剣を構え、目は見開き、口角は限界まで上がっている。これはこれで、一種の美しさを作り出しているのだが。
「「いざ!」」
その掛け声とともに、2人は同時に駆け出す。
ーーーーー
あとがき
明日は作者の都合で投稿時間が1時間遅れます。申し訳ございません。
その後ろにはレオンハルトの試験官だったクールビューティーな美人教師が共に入ってくる。心なしか、顔がひどく疲れたように見えた。
「はい、みんなおはよう。このクラスを受け持つことになったシュナイダーだよ。気軽に接していいからね。ジュナくんとか呼んでくれていいからね。あっ、こちらは副担のミネルヴァ先生だ」
「ミネルヴァです。このクラスの副担任を受け持つことになりました。3年間、みんなといい思い出をーー」
「はい、拍手!パチパチパチ」
「ちょっと! まだ自己紹介の途中です!」
開始早々いきなりかましていくシュナイダーに振り回されているミネルヴァ。苦労人である。
しかし、生徒たちはそれどころじゃなかった。
「おいおい、麗剣のシュナイダーが担任かよ!」
「最っ高! マジか! 最っ高!」
「きゃー! シュナイダー先生かっこいい!」
護国の三騎士が担任ということで皆のテンションが天元突破しようとしていた。レオンハルト以外は、と但書は付くが。
しばらく立ち、生徒たちに落ち着きが見えると、シュナイダーが、
「はーい、じゃー自己紹介終わり! みんな仲良くするように。折角頑張って皇立学院に入ったんだ。楽しまないと損だよ」
「約1名、頑張ってない人もいるようですけどー」
「全くだ! 不正野郎と一緒に授業できるか! エルサと同意見なのはむかつくけどな」
「私もあんたと同意見なのはむかつくわよ!」
「何を!」
「何よ!」
再び喧嘩を初めてしまうのは、やはりと言うべきかエルサとバースだった。
しかし、2人ともレオンハルトを認めようとしないのは共通している。
それを見たミネルヴァは何か言おうとする。
「ちょっと、2人とも。あれはーー」
「まった、ミネルヴァ先生」
「シュナイダー先生?」
しかし、それはシュナイダーによってはばかれる。
シュナイダーは下顎に手を添え、考える仕草を見せる。そして、ニヤリと口元を歪ませ、犬歯を露わにする。
「全く、仲良くって言ったばっかなのにねぇ。困ったよぉ。どうしようかなぁ……そうだ! 今からクラスで親睦会をやろうか!」
「「「親睦会?」」」
「そう! てなわけで、みんな! 着替えて着替えて。訓練場にいくよ~……ふふ、楽しくなってきた」
ポンと手を叩き、取ってつけたかのような喋り方で、シュナイダーが言い放つ。
生徒、そしてミネルヴァ先生も置いてけぼりである。
そんな中、レオンハルトの嫌な予感は増していったのだった。
◆
右も左も分からず、生徒たちは着替えて訓練場に集合していた。シュナイダーは生徒たちの前に立ち、その横にはずらりと武器が並んであった。
「はーい。じゃーそれぞれ、自分の得意の武器を取ってってね」
「……あの、先生」
「なんだい?」
「これのどこが親睦会なんですか?」
「何を言ってるだい? 立派な親睦会じゃないか! 今時の青春と言ったら! 友情、努力、喧嘩! この3本柱は外せないでしょう! と言うわけで、みんなには今から喧嘩してもらいます!」
「「「はあ!?」」」
「あっ、大丈夫大丈夫。保健の先生連れてきたから、死ななければ怪我なんてすぐに治るよ」
「いきなり連れて来られて、どうしたのかと思ったら……あんたってやつは」
これまた1人、苦労人のようか面構えである。金髪碧眼の美女であるが、シュナイダーが急いで引っ張ってきたせいか、多少汗をかいており、息もきれていた。
「と言うわけで! チーム分けを発表します! ドキドキ、ワクワク」
「「「……」」」
「ごっほん! まずはA~チーム! アーサー・ヴェルエム、エルサ・ローカム、ディール・アルハジオン…….」
次々と生徒の名前が呼ばれていく。Aチームの人数が半分を超えたところで、生徒たちは異変を察知する。シュナイダーが一向に止まる気配がないというとこだ。
「……ワトソン・グリム。以上19名!」
「あの、先生ーー」
「引き続きB~チーム!」
「あっ」
シュナイダーに疑問を呈しようとする生徒たちだが、その前にシュナイダーは次のチーム発表にうつっていた。
「レオンハルト・ライネル! 以上1名! このチームで戦ってもらうよ」
「はぁ……」
「「「はあ!?」」」
19対1。まさかのチーム分けである。いや、レオンハルトはある程度予想していたようだが。
「ちょっと待ってくだい! いくらなんでもこのチームは分けはあんまりじゃないですか?」
「そうよ! いくら裏口入学だからってクラス全員でボコボコにすることないじゃない!」
「いいんじゃね? 俺はすっきりするし」
上からフレデリック、エルサ、バースである。
フレデリックはレオンハルトを庇い、エルサもなんだかんだいってレオンハルトを庇っている。バースだけは闘う気満々であるが。
「そう? そっちにはリンシアもいるし、いい勝負になると思うんだけど?」
「はい?」
「そんじゃー始めるよー!」
「ちょっと!」
「あっ、言い忘れてたけど、手、抜いちゃダメだからね。授業で手を抜くことは、このシュナイダー先生が許しません! あっこれ、一回言ってみたかったんだよね~」
生徒たちはさらにどよめく。
生徒側からしたら、手加減せずにレオンハルトをボコボコにしろと言われたのだと思っている。しかし、レオンハルトだけは違った。
「……それ、どういう意味かわかってるのか?」
「もちろんさ」
「……そうか」
「それじゃー今度こそ始めるようー.....用~意、スターット!」
その瞬間、レオンハルトは消えた。
陸跡魔闘術ーー歩跡・凩
(この技は一度見せているからな。使わなかったら手加減って言われかねない)
歩跡・凩を使い、素早く間を詰めていくレオンハルト。
一方、レオンハルトの速度に反応できる同級生はいなかった。
一番近かったクラスメイトに近づき、力こそ込めなかったが、走った勢いのまま腹に一撃打ち込む。
(まずは1人っと)
それだけで、そのクラスメイトは弾丸のように吹っ飛んでいき、訓練場の壁にぶつかってやっと止まる。
それでも、他のクラスメイトは反応できない。
1人吹き飛ばされた?と吹き飛ばされた生徒の方に首を向けると、次の瞬間別の方向にもう1人が吹き飛んでいく。
「「「は?」」」
吹き飛ばされたり、地面に叩きつけられたり、気絶させられたりと、次々とやられていくクラスメイト。
やっと、レオンハルトの動きが止まり、嵐が過ぎ去ったかのような惨状だけが残る。
この時点で立っていられたのは、5人。
ディール、フレデリック、バース、エルサ、そしてリンシアである。
何もこの5人が特別に強いわけではない。
ただ、運よくレオンハルトに攻撃されなかっただけのこと。そして、レオンハルトが止まったのは、彼らを指導するため。流石に、このままでは一方的過ぎるからだ。
「攻めないと勝てないぞ。そもそも、5人中4人は構えてもいないではないか」
「「「……」」」
4人とは、ディール、フレデリック、バース、エルサのこと。リンシアだけはしっかり武器を取ってレオンハルトを見据えていた。
その目に、レオンハルトは思わず鼓動が高鳴る。
レオンハルトとリンシアが睨み合いをしている間に、4人が我に返る。
「おい、どういう状況だ! これ!?」
「私だってわかんないわよ!」
「みんなやられたのか!?」
「……状況から見て、間違いないでしょ。彼、強いね」
「嘘でしょ!? 強いなんてもんじゃないわよ!? あの一瞬で14人も! どういうこと? 彼、裏口入学って言われてたわよね!」
「そんなの嘘に決まってんだろ! あの威圧をみろ、オレ、さっきから足がプルプル震えてるぜ」
「なっさけないわね……と言いたいところだけど、私も」
「おれもだ。ったく、強いとは思ったがここまでとは」
「無駄話してる場合じゃないよ。彼のいう通り構えないと。またあれをやられたらひとたまりもないよ」
フレデリックの指摘に3人とも構えをとるが、それがレオンハルトに通用するかどうかは別である。
「構えがお粗末だぞ。ここをつかれたらどう対応するつもりだ?」
「な!?」
フレデリックは長剣を構えているが、その構えには隙が多かった。いや、隙が多いというほどではないが、レオンハルトから見たら穴だらけもいいところだ。
あっという間に崩されたフレデリックは足元がふらつく。
「足が疎かだぞ」
そう言って穂先を足の着地地点に向かって突き出す。ただでさえ不安定な体勢だったのだから、当然のように転ぶ。
だか、彼が転ぶ前にレオンハルトが一歩踏み込んで、一回転し、回し蹴りで彼を蹴り飛ばす。
(……ん? なんだ、この感触は?)
「フレデリック!」
「何をぼうっと見ている。せっかく4人いたのに3人になったではないか」
「「「!?」」」
改めて3人に向き直ると、3人は今までとは比にならないプレッシャーを感じる。蛇に睨まれたカエルとはまさにこのこと。
「格上相手に守りに回ってどうする! 攻めろ!」
「「「!!」」」
レオンハルトの一喝により、真っ先に動き出したのがディールである。手に持つハルバードを大きく構えながら突進してくる。
「勢いはよし! だが、動きが荒い!」
「ぐっは!」
そのハルバードを振り下ろす前に、レオンハルトが先に間合いを詰め、石突きを腹部に打ち込む。ディールはそのまま倒れ込み、気を失う。
「バラバラでくるな! 人数の差を利用しろ! といってももう2人しかいないが」
そう言われた2人、同時に動き出す。左右に回り込み、挟むようにレオンハルトに突進する。
2人とも軽戦士タイプで、エルサの手にはレイピア、バースの手にはメリケンサックが嵌められている。
「息ぴったりだな、2人とも」
「「うっさい!」」
やはり息ぴったりである。エルサが突き出すレイピアを槍で弾くが、すぐ後ろにはバースが迫っていた。そのままレオンハルトの後頭部に向かって拳を放つ。
「もらった!」
しかし、レオンハルトは間一髪のところで首を捻り、難なく回避する。
そして、レオンハルトはなんと、手に持っていた槍を手放した。そのまま突き出されたバースの腕を掴み、背負い投げの要領でぶん投げた。
「は!? お、おい」
「ちょ、ちょっと!」
そのぶん投げた先にはエルサがいた。そのままぶつかり、2人仲良く気絶する。
そんな2人に目を向けながら、レオンハルトは手放した槍を拾う。
「待たせたな」
「……いい」
「武器を手放した時にでも攻撃すればいいのに」
「……よくいう……まるで、隙がなかった」
レオンハルトは最後の強敵である、リンシアと向かい合っていた。
「久しぶりだな。3年ぶりか? 俺のこと覚えてるか?」
「……当然。強い人、忘れない」
「あはは、それは嬉しいね」
「……御託は、いい。そんな顔、してない」
「あはは、嬉しいってのは本当さ」
今のレオンハルトの顔はかつてないほど獰猛だった。それこそ、獲物を前に待ったをかけられたライオンのような。
対するリンシアも、普段のクールな顔では想像できないほど凶暴だった。
身の丈ほどの大剣を構え、目は見開き、口角は限界まで上がっている。これはこれで、一種の美しさを作り出しているのだが。
「「いざ!」」
その掛け声とともに、2人は同時に駆け出す。
ーーーーー
あとがき
明日は作者の都合で投稿時間が1時間遅れます。申し訳ございません。
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