Re:征服者〜1000年後の世界で豚公子に転生した元皇帝が再び大陸を支配する〜

鴉真似≪アマネ≫

文字の大きさ
56 / 108
動乱・生きる理由

Re:

しおりを挟む
「では、麗剣のシュナイダーではなく、正剣のアークが裏切り者だと?」
「はい。私の推測では、アーク騎士団長が教国側の裏切り者で、皇帝陛下殺害の下手人です。そして、その罪をシュナイダーに被せたのでしょう」
「どうして? そもそもなんで裏切り者がいると?」
「教国軍が現れたと聞いた瞬間から、裏切り者の存在を疑いました。でなければ、皇国が帝国と組んでない保証はとこにもない、罠の可能性も十分あるのに、貴重な神聖騎士団を500も派遣するはずありませんから。自信があったのでしょう。皇国と帝国が手を組んでいないという確固たる自信が」
「だとしても、それがアークというのは論理の飛躍じゃなくって? シュナイダーだって十分可能性があるじゃない?」
「一番ありえないからですよ」
「何?」
「アークは宰相に拾われた孤児。裏切り者である可能性は限りなく低いでしょう」
「話が見えないんだけど? それなら、正剣より麗剣の方が怪しいんじゃない?」
「ええ。シュナイダーの方が怪しいです。ですが、逆に言えばアークの方があまりにも怪しくないとも取れます。不自然なほどに」

 皆の頭の上にハテナが浮かび上がる。

「人というのは、大なり小なり何かしらの秘密を持つものです。その秘密を秘密とするが故に怪しさと転じる。ですが、アークにはそれがありません。まるで意図して『私は怪しくありませんよ』と言っているようです」
「それで裏切り者だと? だとしても、論理の飛躍だと思うのだけど」
「まあ、ここまで御託を並べてきましたが、要するに私はシュナイダーを信じているのですよ。あの男はふざけたように見えて、誰よりも芯のある男ですから」

 レオンハルトにしては珍しく高評価である。一度自分に打ち勝ったからか、自分に契機を与えくれたからか。とにかくレオンハルトはシュナイダーを信用していた。

 しかし、そこで更なる報告が舞い込んでくる。

「報告します! 近衛騎士団が、麗剣のシュナイダーを処刑したと発表しました!」
「「「な?!」」」

 あまりの急展開に、レオンハルト以外の誰もがついていけずにいた。
 今しがたレオンハルトがシュナイダーの無実を訴えていたところで、この知らせ。これは、潔白である三騎士を失ったこととなり、裏切りの三騎士の勝利を意味する。

 そして、その報告を受けて、もっとも動揺したのは、アリスである。

「う、嘘です。そんな」
「アリス」
「彼はとても強い人です。正剣といえど、負けるような人じゃ」
「アリス、落ち着いて」
「お、落ち着いていますよ。私は。だ、だって、か、彼が負けるはず、あ、ありませんので」

 その言葉とは裏腹に、涙が止めどなく溢れ出る。信じたくないと思う一方、信じざるを得ない事実として突きつけられた。

 それは、アリスの精神にとってはあまりにも重かったのだ。

「オルア、部屋に案内してやってくれ」
「……うん」
「アリス」

 レオンハルトがアリスに話しかける。しかし、アリスは反応を示さない。反応を示すだけの余裕がないのだろう。
 だが、それでもレオンハルトは言葉を続ける。

「アリス、気休め程度かもしれんが……お前の考えは正しい。奴はこれで終わるような男ではない。そのうちケロッとした顔で帰ってくるだろう。その時に拳骨を振るう準備をしておけ」
「……ありがとう、ございます」

 ほんとに気休め程度だったが、レオンハルトがいうとなぜか説得力があるように感じた。

 オリービアがアリスを連れて部屋を出ると、ローカム女伯爵がレオンハルトに話しかける。

「本当にそう思ってるのかしら? いくら麗剣といえど、相手が正剣となれば絶対はないのよ。余計な期待をさせて、彼女がさらに傷つくかも知れないわよ?」
「先ほどの言葉は本心ですよ。正剣ごときにやられるようなやつではありません。なんせ……後にも先にも、余に勝った唯一の男だからな」
「「「……」」」

 レオンハルトの一人称が変化するが、それに違和感を抱いたものは一人もいない。むしろ、こっちの方がしっくりくるとさえ思っていた。

 そこへオリービアが戻ってくる。

「ん? みんなどうしたの?」

 そんなオリービアに目を向けながら、レオンハルトはーー

「なんでもない。それよりこれからの話だ……っと、その前に、少し俺のを聞いてくれるか?」


 ◆


 皇帝が暗殺されたことで、皇国は分裂した。

 第一皇子派、第二皇子派、第一皇女派、中立派に大きく分けられた。

 第一皇子、第二皇子、第一皇女はそれぞれ帝都を離れ、自身の支持者の領地に帰還した。これから始まる帝位争いに備えるためである。

 国が大変なときに何をやっているのだ、と言いたい気持ちはよくわかるが、彼らにとって、敵対する帝位候補者は他国にも等しいものだった。

 ゆえに、兄弟間で争う。

 そのいざこざに際して、一つの宣言が成された。

 第二皇女の帝位争いの参加。

 それと同時に、ドバイラス伯爵、ローカム伯爵、アルハジオン子爵、テルメア子爵などの中立派貴族が一気に第二皇女派に傾いた。

 中立派貴族の多くは、辺境貴族。それも、帝国の国境線に近い貴族たちだ。

 彼らは知っていた。第二皇女の帝位争いへの参加は、何を意味するかを。第二皇女が帝位を得ることは、誰が皇帝となるかを。

 中央では悪名高くとも、辺境の地では絶大の信頼を寄せられているあの男が、ついに重い腰をあげたのだと。

 これより、真の意味で、レオンハルト・ライネルの物語が始まる。


 ◆


「へー。レオくんが皇帝ねー。面白いじゃん?」





ーーーーーーー
後書き

 いかがだったでしょうか、これにて3章終了となります。
 多くの謎を解決し、多くの謎を残した章ではないでしょうか?

 さて、締めくくる前に一つだけ宣伝があります。

 本日、『剣鬼物語~無知な獣、人を知り人となるまで~』という短編を投稿しました。

 内容としては、Re:征服者の外伝となります。主人公は3章のプロローグでも登場したあの男です。1000年前の謎を少しでも解決できたらいいなあと思い書きました。

 興味がある方は是非、読んで見てください。

 では、3章を締めくくります。

 学園を飛び出し、舞台が戦場へと変わり、そして多くの出来事が起こり、衝撃な事実が次々と明らかになりましたね。作者的にも書いていた楽しい章でした。

 明日と明後日は幕間を投稿します。幕間の内容は帝国についてです! 一体どうなってしまうんだ!
 いつも通り、幕間と言いつつ、結構重要な内容なので飛ばさずに見て欲しいです。

 では、また四章『帝位・勇気を紡ぐ者』でお会いしましょう。(四章は個人的に最高傑作だと思っています)

 以上、鴉真似アマネでした。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...