Re:征服者〜1000年後の世界で豚公子に転生した元皇帝が再び大陸を支配する〜

鴉真似≪アマネ≫

文字の大きさ
75 / 108
帝位・勇気を紡ぐ者

第13話 修行開始

しおりを挟む


 大罪魔法についての情報共有を終えたレオンハルトたち。しかし、最大の問題は解決していない。

 それは、レオンハルトがなぜ倒れたか、である。しかし、どうやらレオンハルトはすでに当たりをつけているらしい。

「相手には最低でも二人、大罪魔法の使い手がいる。おそらくもう一人は、強欲の能力者だ」

 そうレオンハルトは言い放つ。それに対し、言葉を返したのはオリービアだった。

「その能力のせいで、レオ君が倒れたってこと?」
「ああ、強欲の能力は強制的な魔力の徴収だ。使い手にもよるが、かなり危険な能力だ。特に俺にとってはな」
「レオ君って魔力体だから、魔力を吸収されたらまずいってこと?」
「ああ、ただでは済まないだろう。全く、どんだ天敵だ」
「そんなぁ」

 少し吸収されただけで昏倒してしまうほどだ。至近距離で大量に吸収されたら、ひとたまりも無いだろう。つまり、今回の戦でレオンハルトが先陣を切るのが難しいと言うことになる。あまりにリスクが大きい。

 それどころか、これほど距離が離れているのにも関わらず5日間昏睡するほどのダメージを受けたのだ。むしろ現在進行形でレオンハルトの身に危険が迫っていると言ってもいい。

 何かしらの対策を講じなければ、レオンハルトがライネル領に居続けることすら困難になる。

 そのことに頭を悩ませていたシュナイダーだが、レオンハルトからある提案が上がる。

「俺は少し領を空ける。弱点をいつまでも弱点にはして置けないからな」
「なんとかできるの? レオくん」
「ああ、要は体を定着させればいいだろ? 久々に修行をしよう」
「なるほどねぇ……まあ、レオくん抜きで戦うには骨が折れそうな相手だし、強くなってくれるなら文句はないよ。でも、もし向こうが仕掛けてきたとして、その修行は間に合うの?」
「分からん。やってみないとこにはな」
「まあ、それもそうか」

 ケイシリア皇女がどのタイミングで仕掛けてくるかわからない以上、レオンハルトが領を空けるのはよろしくない。そうシュナイダーは考えていた。

 しかし、すぐに思い直す。強欲の能力者がいる限り、レオンハルトが領にいても仕方ないからだ。

「レオ君頑張ってきて! 領内は私たちがなんとかするから!」

 オリービアがレオンハルトに応援の言葉を送る。こう言う時にしっかり後押ししてくれる。そんな彼女たちだからこそ、信頼して任せられる。

「ああ、頼んだぞ」

「「「「うん!(はい!)(うむ!)」」」」

 こうして、レオンハルトは修行の旅に出た。





 レオンハルトが荷物をまとめて出立した翌日。ディール、エルサ、バース、カーティアの学生四人衆がある人物を訪ねていた。

 その人物は、騎士団本部の訓練場で剣を奮っていた。振われる剣は正確なものであり、その実力は確かである。しかし、その動きはどこかぎこちないと感じてしまう。

 それもそのはず。その人物には左手がないのだから。

 剣を振るっていたのは、護国の三騎士の一人、剛剣のセベリスである。アークとの戦闘で左腕を失ってしまった彼だが、それでもかつての力を取り戻すために、毎日修行に励んでいた。

 学生四人衆の気配に気づいたセベリスは、剣を振るうのをやめる。

「なんのようだ? ガキンチョども」

 剣を鞘におさめ、振り返るセベリス。そして、その視界に入ったのは深々と頭を下げた4人の姿だった。

「「「「おれ達(私たち)に戦い方を、教えてください!!」」」」

 異口同音に発せられたのは、そんな言葉だった。それに対してセベリスは、真剣な眼差しで、

「……なぜだ?」

 子供の言うことだからと、軽く見ることはなかった。むしろ子供だからこそ、戦う力を求めるのに覚悟は必要なはずだ。自分に頼ってくるということはそれ相応の理由があると、セベリスはそう考えていた。

「……オレら、フレデリックが裏切ったって聞いても、なんもできなかった」
「……フレデリックが会いにきたのは、結局レオンハルトだけだった。おれらがよえから」
「男どもは脳筋ね。別にそれは強さとは関係ないでしょ? 私はそんなんじゃない。もう一回フレデリックにあって、ぶちのめしてやりたいだけ」

 ディール、バース、エルサの順に理由を述べる。どこか子供らしい理由だが、確固たる信念があるように思えた。

 セベリスは最後の一人、カーティアに質問する。

「お前はどうなんだ?」
「別に理由はありませんよ。まあ、レオンハルトの言葉を借りるなら……勘、でしょうか」
「勘? 勘で、強さを求めるのか? 茨の道だぞ?」
「いけませんか?」

 どこか太々しいその態度は、レオンハルトの真似をしているのかもしれない。セベリスもそれを感じ取ったのか、苦笑いを浮かべる。

「俺も忙しい。その合間なら、手ほどきをしてやっても構わない」
「「「「ありがとうございます!!」」」」

 四人の姿を見て、満足そうなセベリス。

「じゃあ、早速最初の授業だ!さっさと着替えてこい!」
「「「「は、はい!」」」」

 こうして、セベリスのスパルタ特訓がはしまった。


 ◆

 そして同時期。

「修行?」
「はい、お願いできませんか?」

 オリービア、シリア、リンシア、シオンの四人はシュナイダーに修行の願いを申し出ていた。

「みんなかなりの実力だと思うけど? 僕に教えれること、あるかなぁ」
「いえ、まだまだシュナイダー先生には遠く及びませんよ」
「お立てるのが上手だねぇ。僕調子乗っちゃうよ」
(まあ、レオくんの修行に合わせて、四人も育てておくのは悪くないかもね)

 そう考えたシュナイダーはーー

「いいよ。ただし、仕事はちゃんとするように」
「勿論」

 こうして、オリービアたちの修行も始まっていた。




 レオンハルトが修行のために領を飛び出して、1日が経過した。

 その間、全て自分の足で走っていた。能力の確認というのもあるが、シンプルのこちらの方が早いのだ。長い移動をする際は流石に馬に乗らざるを得ないが、こうした一日程度の移動なら走った方が早い。

 そして、1日の旅の結果、レオンハルトは目的地に到着した。その場所は、鉱山である。

 かつて、鍛治士ガイアスがレオンハルトに再開発の申請をした鉱山だが、結局レオンハルトは再開発の許可を出さずにいた。

 原因はここに眠るとある生物。

 その生物がこの鉱山を離れている間しか、開発はできない。なぜなら、その生物が住み着いてる間は常に寝ているからだ。

 その安眠を妨げようものなら、寝覚の悪さで鉱山ごと破壊されてもおかしくはない。それほどの生き物が、ここに生息している。

 しかし、だからこそレオンハルトはこの場を選んだ。魔力の濃度が、尋常じゃないからである。

 とんでもない濃度の魔力で蔓延っている鉱山に足を踏み入れるレオンハルト。鉱山内を迷うことなく進み、やがて開けた空間に出る。

 そうするとーー

『おお、レオンハルトではないか? しばらく見ない間に随分といい体になったではないか?』

「なんだ、起きていたのか? 蒼龍そうりゅう

 なんとレオンハルトに話しかけたのは一匹の龍であった。見上げるほどの巨体を持ち、神々しいオーラを放っている。

 体はトグロを巻いており、その鱗はくすんだ藍色をしていた。しかし、それは汚れによるもので、本来ならば海のような青いな鱗をしている。頭上には水晶のようなツノが一本はえっていた。

 この世界では普通の竜種や龍種は最上級の魔物扱いされている。発見すれば、軍での討伐を余儀なくされるほどである。しかし、そんな恐ろしい魔物でも、人間の言葉を発することはない。

 人間の言葉を話す魔物。まさに前代未聞だが、実はこの世界にはこのようは生物は、わずかではあるが存在している。人間に討伐されることなく、また種の争いでも淘汰されることなく生き延びてきた太古からの生物。

 古くからいるため、彼らは知恵を身につけ人の言葉も身につけた。また、人が彼らを恐れていることも知っている。故に彼らは、無用なトラブルを避けるために、人里離れた場所で暮らしている。

 そう、このような廃鉱山・・・のような場所で。

 元々は廃鉱山となっていたこの鉱山だが、蒼龍の魔力を浴び続けたことで変質し、今では藍金を産出する一大産地となっている。ライネル領の騎士たちの武器に施されている藍金もここからきていた。

 この鉱山をレオンハルトは数年前に発見し、熾龍と交渉した。そして、眠りを妨げないのであれが発掘を許可する、という結果になった。

「修行しにきた」
『うむ、その体、相当不安定だからな』
「少し場所を借りるぞ。あと魔力もな」
『よいぞ。なんなら我が修行を見てやろうか?』
「いいのか?」
『ああ、いい暇つぶしになる』
「……まあ、見てくれるなら文句はないが」
『うむ、任せろ! 今回早起きしてよかった。いいものが見れそうだ。っクックック』

 レオンハルトはこうして普通に話しているが、常人ならとうに気絶してる。熾龍が放つ一つ一つの言葉には、大量の魔力が込められている。ただの人間なら、脳が受け止めきれずに弾け飛んでいるだろう。

 それはともかく、こうしてレオンハルトの修行も始まろうとしていた。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...