不死鳥の箱庭~無能だと追放されたが運命の不死鳥と契約して全てをやり直す~

鴉真似≪アマネ≫

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第一章 不死鳥契約

2話 ハリヴァス式

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「ふぅ、ギリギリだったぁ……」

 部屋から出たリオンは、すぐさま壁によりかかり、力を抜く。

 いくら第一位階のリオンといっても、ロルフとジゼルの言霊に挟まれてただで済むはずがなかった。

(ロルフ先生は第八位階、あのジゼルという女は第六位階といったところか)

 これがアンブロシア家。
 一介の教育係でさえ、強国の騎士団長を凌ぐ実力者。
 侍女のジゼルも、一侍女に収まるような実力ではない。

 第六位階といえば、七大列強でも中堅騎士、小国では騎士団長になっていてもおかしくはないほどである。

「それがただの侍女って、さすがアンブロシア」

 自身の家門でありながら、その強大さにため息しか出ないリオン。
 そんなリオンの下に、専属侍女のアイリスが駆けつける。

「リオン坊ちゃま!? ご無事です!?」

 ロルフとジゼルの衝突を察知して駆けつけたのだろう。

「あぁ、ロルフ先生に言霊を教わっていたところだ」
(アイリスも第六位階、か。今の私など、片手に捻り殺せるな)

「言霊ですか? 雛教育でそこまで習うのです?」

 アイリスの言葉に僅かな怒気が孕んでいた。

 それもそのはず。

 言霊といえば、第五位階以上の者でなければ扱うことのできない技。まだ第一位階に過ぎないリオンに教えることはまずありえない。

「私が強請ねだったんだ。あまりロルフ先生を責めてやるな」
「……坊ちゃまがそうおっしゃるのならぁ」
「それより、頼んでいた件はどうなった?」
「あ、はいです。そちらはつつがなくです」
「よし。商団の方にも接触しておいてくれ。裏にアンブロシアがいることを匂わせれば、確実に飛びつくだろう」
「っは」

 リオンの指示に、アイリスはただ返事をするだけ。
 子供らしからぬ言動をするリオンに、まるで疑問を持たずにいた。

 アンブロシアだから不思議ではない、ということもあるが、アンブロシア以上にアイリスはリオン個人に忠義を誓っていた。

(第一運命線でも、アイリスはよく仕えてくれていたな。家を追い出された後も……)

 理由はリオンにも分からないが、アンブロシア家追放後もアイリスはリオンに仕えていた。

 御三家の一つ、ハリヴァス家に養子としてもらわれた際も共にいたほどである。

「アイリス。私に充てられた予算の残りは?」
「およそ3億ルーンです」
「そうか。だったら、予算の範囲内でいい。これらを買い揃えてほしい」
「かしこまりましたです」

 リオンは懐から一通のメモを取り出し、アイリスに差し出す。
 そこには、霊芝れいし芍薬しゃくやく白檀びゃくだんなどの材料が書き連ねられていた。

 3億ルーンもあれば、大抵のものは揃えられるだろう。

 幼鳳宮にいるアンブロシアの雛鳥には、年間およそ10億ルーンの予算が与えられる。

 一般家庭の生活費が50万ルーンであることを考えると破格の予算だが、アンブロシアでは少額と言わざるを得ない。

 鳳族序列一位の長女の年間予算が23兆ルーンであることを考えると、雛鳥に与えられる予算などはした金でしかない。

 勿論、鳳族には大勢の配下に加え、自身の宮殿の運営もあるため、それ相応の予算が割れあてられているが。

 閑話休題。

 2歳の子供に10億は破格の予算だが、リオンの目的を果たすにはまだまだ足りない。

(今はまだ神童と持て囃されているが、不死鳥契約に失敗すればこの程度の予算すら失う)

 リオンの照準は今ーー8歳の不死鳥契約に向けられている。

 第一運命線では、リオンは8歳の契約の儀に失敗し、その数日後には追放されていた。

 アンブロシア家の当主になるためには、追放などされている場合ではない。
 そのため、なんとしても不死鳥契約に成功しなければならない。

(にしても、無茶が過ぎるぞ。ジファめ)

 運命の不死鳥・ジファ。
 第一運命線の最後で交わした会話で、運命の不死鳥契約の条件はある程度把握した。

 それはずばりーー魔力。

 運命の力は強大である。
 それこそ、原初の四属性を上回るほど。
 そのため、契約には大量の魔力とアンブロシアの血が求められる。

(第三位階。ジファと契約するためには、最低第三位階レベルの魔力が必要だ)

 ーー位階

 人は大きく九つの位階に分けられる。身に宿す魔力量、行使可能な魔法、剣気の熟練具合。それらを総合して、位階は定められている。

 その中でも、最も重要なのは魔力量。

 人の体内に宿る魔力は時間とともに増加するが、ある時点で壁にぶつかる。
 その壁を突破できた時こそ、位階は上昇するのだ。

 一般人のほとんどは第一位階を突破できずに一生を終えるが、リオンは生まれつき第一位階の壁を突破している。

 第一運命線でもそれは同じだった。
 それゆえ、稀代の天才として期待されていたがーー

(8歳までの第三位階、か。はっきり言って無茶だ)

 第三位階ともなれば、ベテランの傭兵ほどの力を持つ。
 成人どころか、わずか8歳の子供がその境地に至るのは、至難を通り越して不可能というほどである。

 アンブロシア家歴史をたどっても、契約前に第三位階至った存在はいない。

(まあ、契約後でなければ成長の方向も分からないからな。無駄に魔力だけ増やすこともない、か)

 だが、リオンの場合は違う。すでに運命の不死鳥との契約は確定している。

(8歳までに第三位階を目指すなら、ハリヴァス式は絶対に欲しい)

 ーーハリヴァス式

 御三家の一つ・ハリヴァス家を最強の剣術名家たらしめる修練法である。

 曰く、ハリヴァスの直系はーー

『あらゆる攻撃を弾く金剛体』
 
『あらゆる毒を防ぐ超免疫』
 
『溶岩を浴びても火傷一つ負わない熱耐性』

『極寒の地を身一つ走破する寒冷耐性』

『致命傷を物ともしない回復力』

 これらの特性にハリヴァス家相伝の剣術を加えると、世界最強の肉弾戦集団が完成する。

「はぁ、子供が考える最強のラスボスみたいだな」
「はいです?」
「いや、何でもない。こっちの話」

 ハリヴァス家の養子時代に、リオンはこの肉体の秘密について聞かされていた。

 ーー『まあ、別に隠すほどのもんでもねぇしな』

 そう言って、酒をあおりながらでリオンに語ったのがハリヴァス家現当主。

 曰く、ハリヴァス家の直系は生まれた瞬間、回復力を極限まで高める仙丹を服用するそう。
 仙丹の服用後、その高い治癒能力を活かして、ありとあらゆる無茶を通すような修練法を行うそう。

 それこそ、常人では気が狂ってもおかしくないほどの修練を。

 一部であるが、その内容を聞かされたリオンはこう思った。

 ーーそりゃ強いわけだ、狂人が

 だがその狂人の道に、今からリオンは突き進むこととなる。

(私も仙丹の材料全てを知っているわけではないが、足りない分はで補える。今の私なら簡単に手に入るだろう)

 そのためにはやはり金が必要だ。それも、10億程度では足りないほどの大金が。

 およそ50億ルーン。

 リオンが目的とする仙丹の核となる材料ーー仙桃を競り落とすために必要な最低額。
 アンブロシア家の血族と言えど、序列最下位のリオンにはとても入手できないる額ではない。

 故に、十全な準備が必要である。

 アンブロシアで生き残るために、リオンは静かに、しかし着実にその準備を進めていた。

 
 
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