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13話目 摘出
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まだ追手は数メートル向こうにいる。銃弾が当たらないように、二人でなるべく奥の方へ避難した。
ゴゥン…と音がして、間もなく金属の扉が完全に閉じられた。
「ゴルァ!海斗!!出てこい!!」
佐島たちの怒声と、何発もの銃声がシェルターを取り囲む。
しかし流石の防御力といったところか、拳銃程度でこの小屋はビクともしない。
「ハァッ、ハァッ……」
急所ではないが、肩から流れ出る血で体温が下がっていくのが分かった。
「カイト…お前、傷見せろ」
「大丈夫、だから。それよりユーサクさんの肩を…ゴフッ」
気管から血が逆流するのだろう。カイトがむせるたび、ぴちゃぴちゃと赤い液体が床に落ちた。
「馬鹿野郎!お前の方が当たり所が悪いんだっつの!」
白衣とTシャツを破き、撃たれた右肩を露出させる。
シェルター内の人感式センサーライトが作動して、もとから白いカイトの肌をさらに青白く照らしていた。
傷を調べようとする藤村の手にも、流れ出た血液がべっとりと付着した。
幸い弾は貫通している。
包帯代わりに裂いた病衣を巻いているあいだ、もう一人の銃創を観察していたカイトは、藤村の肩に何かを見つけたようだった。
「ユーサクさんの肩…弾、なかに残ってる」
「あ?俺のことはいい。お前は自分のことだけ心配しろよ」
「ユーサクさん。傷、見せて」
ぐんと引き寄せられ、今度は藤村がカイトに覆いかぶさる体勢になった。
「…なにする気だよ」
「ユーサクさんのなかにボク以外が入ってるの、もう二度と見たくないから」
病衣の下に着ていた藤村のTシャツは、カイトの手でティッシュみたく容易く破かれてしまった。
鎖骨のあたりに、分厚い舌の感触が這い寄ってくる。
「うっ、……」
逃れようにも、片手と両足でがっちりホールドされて身動きができない。
肩の辺りを探るように舐めまわした後、舌はようやく傷のある場所へと到達した。
「ぐぁッ……」
「…ぁ、あった」
細く窄めたそれは、肩に開いた穴へグリグリと容赦なく潜り込んでくる。
「あがっ……ぐぅッ……」
見かねたカイトが、藤村の頭を自分の肩口へと誘う。
「痛かったら、ボクのこと嚙んで」
シェルターの外では、未だにあのチンピラどもが喚いている。
壁にぶつかる銃声が、耳の奥でキンキンと、何度も何度も不快に響き続けている。
「カイトの、匂い……」
急に、辺りが静かになった。
いや、本当に外が静かになったわけではない。ただ、気にならなくなっただけだ。
体の感覚がすべて、目の前の青年に集中しているのが分かる。
濃い血のにおいに混じって、カイトの体から甘い香りが漂ってくる。
首筋に鼻を密着させ、その芳香を体いっぱいに吸い込んだ。
「痛くても文句、言うなよ……」
誘う匂いを放つ白い肩へ、藤村は欲求のままに歯を突き立てた。
「うッ、…」
掠れた声とともに、顔の横にある喉仏がびくりと跳ねた。
舌で傷口を抉られる快感と、口のなかいっぱいに広がる濃い匂いが脳内を埋め尽くして、失血以上に頭が朦朧とする。
「あふぉ、もうすふぉし……」
「ぐっ、ぅぁ……」
さっき入れた鎮痛剤入り媚薬が、今更になって効いてきたのだろうか。
既に痛みはなくなって、鋭い性感だけが脳内を反響している。
「あ、あっふぁ(あった)」
「カイト……はやくっ、してくれ……」
でないと、どうにかなってしまいそうだった。
ガチン、とカイトの歯が銃弾を捕える音がした。ずる…と肉の隙間から鉛玉が引き抜かれ、床へゴトリと落ちる。
「ハァッ、ハァッ……」
この呼吸音が、誰のものなのかは分からない。
不意に、頭を抱いていた手がぱたりと床に落ちた。
カイトが気を失ったのだと気づき、藤村は『たすけなければ』と思った。
だがいくら力を入れようと、血を失いすぎた体はいうことを聞かない。
『確保ー!!』
掠れていく意識でも、外がさっきよりも騒がしくなったのを覚えてる。
いつのまにか照明は消え、世界が真っ暗になっていた。
──おやすみ、カイト。
冷たい体温を頬に感じながら、藤村の意識は暗闇へと落ちていった。
ゴゥン…と音がして、間もなく金属の扉が完全に閉じられた。
「ゴルァ!海斗!!出てこい!!」
佐島たちの怒声と、何発もの銃声がシェルターを取り囲む。
しかし流石の防御力といったところか、拳銃程度でこの小屋はビクともしない。
「ハァッ、ハァッ……」
急所ではないが、肩から流れ出る血で体温が下がっていくのが分かった。
「カイト…お前、傷見せろ」
「大丈夫、だから。それよりユーサクさんの肩を…ゴフッ」
気管から血が逆流するのだろう。カイトがむせるたび、ぴちゃぴちゃと赤い液体が床に落ちた。
「馬鹿野郎!お前の方が当たり所が悪いんだっつの!」
白衣とTシャツを破き、撃たれた右肩を露出させる。
シェルター内の人感式センサーライトが作動して、もとから白いカイトの肌をさらに青白く照らしていた。
傷を調べようとする藤村の手にも、流れ出た血液がべっとりと付着した。
幸い弾は貫通している。
包帯代わりに裂いた病衣を巻いているあいだ、もう一人の銃創を観察していたカイトは、藤村の肩に何かを見つけたようだった。
「ユーサクさんの肩…弾、なかに残ってる」
「あ?俺のことはいい。お前は自分のことだけ心配しろよ」
「ユーサクさん。傷、見せて」
ぐんと引き寄せられ、今度は藤村がカイトに覆いかぶさる体勢になった。
「…なにする気だよ」
「ユーサクさんのなかにボク以外が入ってるの、もう二度と見たくないから」
病衣の下に着ていた藤村のTシャツは、カイトの手でティッシュみたく容易く破かれてしまった。
鎖骨のあたりに、分厚い舌の感触が這い寄ってくる。
「うっ、……」
逃れようにも、片手と両足でがっちりホールドされて身動きができない。
肩の辺りを探るように舐めまわした後、舌はようやく傷のある場所へと到達した。
「ぐぁッ……」
「…ぁ、あった」
細く窄めたそれは、肩に開いた穴へグリグリと容赦なく潜り込んでくる。
「あがっ……ぐぅッ……」
見かねたカイトが、藤村の頭を自分の肩口へと誘う。
「痛かったら、ボクのこと嚙んで」
シェルターの外では、未だにあのチンピラどもが喚いている。
壁にぶつかる銃声が、耳の奥でキンキンと、何度も何度も不快に響き続けている。
「カイトの、匂い……」
急に、辺りが静かになった。
いや、本当に外が静かになったわけではない。ただ、気にならなくなっただけだ。
体の感覚がすべて、目の前の青年に集中しているのが分かる。
濃い血のにおいに混じって、カイトの体から甘い香りが漂ってくる。
首筋に鼻を密着させ、その芳香を体いっぱいに吸い込んだ。
「痛くても文句、言うなよ……」
誘う匂いを放つ白い肩へ、藤村は欲求のままに歯を突き立てた。
「うッ、…」
掠れた声とともに、顔の横にある喉仏がびくりと跳ねた。
舌で傷口を抉られる快感と、口のなかいっぱいに広がる濃い匂いが脳内を埋め尽くして、失血以上に頭が朦朧とする。
「あふぉ、もうすふぉし……」
「ぐっ、ぅぁ……」
さっき入れた鎮痛剤入り媚薬が、今更になって効いてきたのだろうか。
既に痛みはなくなって、鋭い性感だけが脳内を反響している。
「あ、あっふぁ(あった)」
「カイト……はやくっ、してくれ……」
でないと、どうにかなってしまいそうだった。
ガチン、とカイトの歯が銃弾を捕える音がした。ずる…と肉の隙間から鉛玉が引き抜かれ、床へゴトリと落ちる。
「ハァッ、ハァッ……」
この呼吸音が、誰のものなのかは分からない。
不意に、頭を抱いていた手がぱたりと床に落ちた。
カイトが気を失ったのだと気づき、藤村は『たすけなければ』と思った。
だがいくら力を入れようと、血を失いすぎた体はいうことを聞かない。
『確保ー!!』
掠れていく意識でも、外がさっきよりも騒がしくなったのを覚えてる。
いつのまにか照明は消え、世界が真っ暗になっていた。
──おやすみ、カイト。
冷たい体温を頬に感じながら、藤村の意識は暗闇へと落ちていった。
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