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第29話 BBG
しおりを挟む《有間愁斗―視点》
紫陽花が寝支度をしている間、お母さんが俺の布団を敷いてくれた。
俺はお母さんに呼ばれて部屋に入る。
紫陽花の部屋は6畳洋間で勉強机、本棚、洋服タンス、テレビ台があるから、ちゃぶ台をずらしてベットの横に布団を引くと足の踏み場がない程である。
「スッピン……変じゃないですか?」
そう言われて彼女の顔をよく見ると、いつものキリッとした感じに幼さが混じるような雰囲気で、これはこれで凄くいい。
「可愛い。化粧してなくても凄く可愛いよ」
「ほんとですか?」
「ほんと!あっ、でもバイトの時、化粧してない日もあるよね?」
初めて彼女を見たのは今年の1月。その頃はまだ高校生でこんな感じだったと思う。
「大学のない日とか、昔はノーファンデで下地だけでした」
「肌も綺麗だし顔も可愛いから、もう何しても可愛いよ。あははは」
「……私、顔黒いから恥ずかしいんですよね」
「そんなに黒くないと思うけど……」
健康的な肌色に細いサラサラの黒髪とキリッとした眉毛、それに長い睫毛。そして大きな赤茶色の瞳。あどけなく、幼くもあり、COOLで凛々しくもある。小顔でスタイルもいいし……、いや、まじで可愛いな。
「でも、恥ずかしいんですよ……。あ、そうだ。飲み物を取ってくるので少し待っていてもらえますか?」
「うん」
《砂月紫陽花―視点》
リビングに行くとお母さんがいた。
「部屋狭いけど、有間さん大丈夫そう?」
「たぶん大丈夫だと思う。……お母さん」
「ん?」
「……ありがとう」
「なに?どうしたの急に?」
「だって……」
全部お母さんのおかげだから……。
「紫陽花にも彼氏かぁー。優しくて素敵な人じゃない。有間さんのこと好きなんでしょ?」
「……好きだよ」
「そっか、いい人だし上手くいくといいね」
「うん。……あっ、それとね。ご飯美味しかったよ」
「それはどうも。これからはちゃんと食べなさいね。あまり心配掛けると嫌われちゃうよ」
「わかった」
それから私は500mlのペットボトルを持って部屋へ戻った。
《有間愁斗―視点》
「有間さん、これ良かったら飲んでください」
俺は500mlペットボトルの緑茶を貰った。
「ありがとう」
「鬼のアニメの続き、見ますか?」
「見たいけど、もうすぐ11時か……、明日バイト行くなら早めに寝た方がいいんじゃない?」
「まだ寝れないですよ」
「じゃぁ電気消して、横になって少しお喋りする?」
「いいですよ」
紫陽花が部屋の照明を消すと、蛍光灯の豆電球だけがオレンジ色に光り、この部屋を薄暗く照らす。
「寝るまで、俺も隣に横になってもいい?」
「……いいですよ。……あの、少し目を瞑ってもらえますか?」
「え?うん?」
俺が目を閉じて俯くとカサカサと衣擦れの音が聞こえた。着替えてるのか?彼女はTシャツにショートパンツ姿で、これで寝るものだと思っていたが……。
「もういいですよ」
目を開けると紫陽花はベットに横になるところだった。
続けて俺も隣りに寝そべる。
ベットはシングルサイズで向き合って横になると距離がかなり近い。つか、ほぼゼロ距離だ。
そして……ベットからはメスの匂いがする。
「今、何してたか、わかりましたか?」
「いや全然」
「……ブラ、外してました。寝る時は付けないので」
つまりノーブラッ!
暗闇の中、視線を下げると好きの糸が見えた。
糸は俺の右手人差し指から彼女の胸の先端へピンと張っている。
俺の右手は糸に引っ張られるように前へと動く。これは相手の急所を的確に攻撃する技だ。
そして指先が……野イチゴに触れた。
これが女の子の……野イチゴ。初めて触った。服の上からだけど……。
そのまま優しくて触っているが嫌がる様子はない。
こ、このまま、つ、続けていいのか?
そう思った時、
「んっ…あ」
紫陽花の体がビクッと小さくて跳ねた。彼女はしがみつくように俺の胸に顔を埋める。
その前傾する動きで俺の右手はDカップに埋もれた。
彼女の髪に鼻を埋めるとメスの香りが鼻孔を抜ける。脳がおかしくなりそうだ。
右手には時速60kmの風を感じる。柔らかい。こんなに柔らかいものなのか……そして野イチゴ!
エロい。まじでエロいよ!なんだこれ!ずっとこうしてたい。
「もう……ダメ…です」
「ご、ごめん」
そう言われて我に返った俺は慌てて手を放した。その手は、またいたずらしないよう彼女の背中に回す。
それから俺は紫陽花の頭に軽くキスをした。
すると彼女は少し離れて顔を上げ「ん」唇を差し出す。だから、そこにキスをした。
胸、揉んだのに怒ってないのか……良かった。
てか、俺は何をやってるんだ。今日この子はバイト中に倒れたというのに……。馬鹿野郎!
「ほんとにごめん。こ、これ以上は止めておこう。歯止めが効かなくなる。紫陽花の体調万全じゃないし……」
「……」
慌ててそう言ったが返事はない。
お喋りする筈が、それから俺達は暫く無言で抱き合った。
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