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第31話 顔に飛び散ったヨーグルトをティッシュで拭く
しおりを挟む《有間愁斗―視点》
木曜日、22:40――。
有間【バイトお疲れ様。スーパーの駐車場に着いたよ】
紫陽花にLINEを送って彼女が出てくるのを待つ。
今日ここに来るのは二度目で18:30時頃、夕飯の弁当を買いに来ている。その時レジで「家にお酒があるから後で飲んでください」と言われた。
今朝、目が覚めると紫陽花を腕枕していた。俺が眠ってからも彼女は自分のベットに戻らなかったようだ。起こすといけないので静かに部屋を出たわけだが、彼女は良く眠っていて一安心した。
昼休み、ご飯を食べたかLINEで聞いてみると、自分で野菜炒めを作ったようで食卓の写真が送られてきた。残さずに食べたそうだ。バイト中も何度かLINEのやり取りをして、体調と機嫌が良さそうなのは確認できた。
少し待っていると紫陽花がスーパーから小走りで出てきた。手には白いスーパー袋を持っている。
「お待たせしました」
「体調はどう?疲れた?」
「全然平気です。たくさん寝たし今日はいつもより元気です」
「良かった」
彼女は18歳、若いと体力の回復が早いのかもしれない。
「これ、おつまになると思って買ってきました」
紫陽花はにっこり笑いながらスーパー袋の中身を見せる。焼き鳥と漬物が入っていた。
「美味そうだね!じゃぁ帰ろうか」
「そうですね」
俺が手を差し出すと、彼女はその手を握る。
◆
紫陽花の家に着いてリビングに通された。俺は食卓テーブルの椅子に座る。四人掛けの大きなテーブルだ。
「お母さんとお姉さんは?」
「お母さんは朝早いので寝てると思います。お姉ちゃんはたぶん部屋にいますよ」
そう言いながら紫陽花は冷蔵庫を漁っている。そして缶ビールを3本持ってきた。
「これ、お父さんがお中元で貰ったお酒なんですけど、うち誰も飲まないので」
「お父さんのお酒、飲んでいいの?」
「お母さんが飲んでもらえって、朝から冷やしてて……。お父さんも飲まないから大丈夫ですよ。チューハイとか日本酒とかまだまだたくさんありますからね」
そう言いながら食卓にツマミや酒を置いていく。
でも人の家のお酒飲むのって気が引けるんだよなぁ。ここに泊まる間はエロいことしないように禁酒しようと思っていたし……緑茶で我慢した方が……。
下谷班長『ヘタ、ヘタだなぁ~有間くん。欲望の開放のさせ方が、ヘタっぴさ。有間くんが本当に飲みたいのはどっちなんだい?』
ザワザワ ザワザワ
俺はテーブル置かれた缶ビールを掴む。
キンッキンに冷えやがる!真夏に一日働いた後の生ビール!
「ゴクリ。そ、そう言うことなら頂くよ」
俺はプッシュっと缶ビールを開けてグラスに注ぐ。
「いただきます、ゴクゴク、ぷっはー!」
シュワシュワが口の中いっぱいに広がって……、うっめー!
次に手を伸ばしたのはレンジでチンした焼き鳥。鶏もものタレから、ほかほかと湯気が立ってやがる!
そいつにかぶり付く。肉汁とタレが口の中に広がって……
「うまい。幸せだぁー」
「ふふふ、気に入ってくれたみたいで良かったです」
「夕飯それだけなの?」
隣の席には小さなヨーグルトとスプーンが置いてある。
「いつもこんな感じですよ。でも、今日は凄くお腹が空いて、8時の休憩のときにお弁当買って食べました。高校の頃はそうしてたんですけどね」
「紫陽花って凄く痩せてるから、もう少し肉付いてもいいと思うけどな。焼き鳥食べる?」
焼鳥の皿を隣にずらすと紫陽花は手を伸ばす。
「じゃあ一本いただきます。有間さんってちょっとぽっちゃりしてる子の方が好きですか?」
「あまり拘りはないかな……ガリガリだと心配になっちゃうけど」
紫陽花はウエストや二の腕は細いけど胸もあるし太ももはムチムチだし、客観的に見ていい体してると思う。
視線を斜め下に下げると、彼女はいつの間にか部屋着用ショートパンツに着替えていて、引き締まりつつもムチムチでツヤツヤの生太腿が艶めかしく蛍光の光を反射していた。
焼き鳥を食べ終えた紫陽花は少し沈黙してから。
「あの……有間さん、聞きたいことがあるんですけど……」
聞きたいこと?改まってなんだろう?
「えっと……、眠っている時って硬くなるんですか?」
飲みかけたビールを吐き出しそうになった。
それ、昨晩のツンツンの話だよな?
あ、でも主語のない「眠っている時に硬くなる」で答えたら昨日俺が寝た振りしてたのがバレてしまうのでは?
紫陽花は顔を真っ赤にしながらスプーンでヨーグルトをかき混ぜている。
「ま、まぁ寝ている時は体を動かさないからな。腰とか肩とか硬くなるんじゃないかな?あははは……」
「そこじゃなくて……」
「何の話かわからなくて」
いや、わかってるけども!
隣に座る、紫陽花はスプーンに山盛りに乗せたヨーグルトを口元まで運んでいたが、食べる前に動きを止めた。
俺はそんな紫陽花を見ながらビールを飲み直し、笑ってごまかす。
「お……おちんちんの話です」
「ぶっッ!」
「きゃっ!」
俺は咄嗟にビールを紫陽花に吹き掛けてしまった。
「ご、ごめん」
「いえ、これからお風呂入るから大丈夫ですよ」
黄色いビールと一緒に飛び散った白いヨーグルトが紫陽花の綺麗な顔にべっとりと付いている。片目や鼻の頭、頬に口の周り。それらが雫となって紫陽花の瑞々しいムチムチ生太腿にポタ、ポタと垂れる。ヨーグルトの雫はカタツムリの様にゆっくり這い太腿の間を滑り落ちていく。
「えへへへ、たくさん出ましたね」
え?何が?……ああ、ビールがね。
たくさんぶっ掛けられたのに何故か紫陽花は嬉しそうだ。
「ごめん、こんなに出ると思わなかった(ビールが)」
「溜まってたんですね(口の中にビールが)」
「ティッシュで拭かないと(ビールとヨーグルトを)」
俺はテーブルにあったティッシュで紫陽花の顔に付いたヨーグルトを拭き取る。すると彼女は口の周りに付いたヨーグルトをぺろっと舐めた。
「ちょっと苦いけど食べれますね」
と微笑んだ。
視覚的に滅茶苦茶エロいから彼女にドキドキムラムラしてしまうが、この白濁した苦い液体はヨーグルトとビールが混ざってできたものだ。そういう場面ではない。
「有間さん、私手がベタベタしているので、下も軽く拭いてくれますか?」
下を見ると、生太腿とショートパンツの股間周りにヨーグルトが飛び散っている。
室内はエアコンが効いているが、夏の暑さでそこだけむわっとした熱気を感じるような気がする。
「ま、任せろ」
俺は緊張で汗ばんだ手を紫陽花の股間へゆっくり伸ばした。
ティッシュが生太腿に触れる。そのまま拭いていくと彼女は少し股を開いた。
次はショートパンツを……。で股間の付け根辺りにティッシュが触れると。
「んっ」
彼女から吐息が漏れた。
エロっ!いやエロっ!つかエロっ!
鼻血出そう。
「擽ったいので自分で拭きます」
「そう?そうだね?その方がいいよね?うん。その方がいい!」
このまま続けていたら俺はどうにかなってしまう!ここリビングだし!
荒方拭き終わった彼女は席を立った。
「お風呂入ってきますね」
「うん。行ってらっしゃい」
彼女が立ち去り、俺は借りた雑巾で椅子や床を拭きながら自問する。
酒飲んでるし、この後一緒に寝て俺は我慢できるのか?
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