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第33話 エッチの練習

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《有間愁斗―視点》


 俺の布団がない、だとぅ!?

「紫陽花さ~ん?俺の布団はぁ~?」

 手揉みしながら尋ねると、彼女はいつものCOOLな表情で俺を見て、「ん?」みたいな感じで細い首をコテっと横に倒した。

「あっ!これから敷くのかな?」

「敷かないですよ。狭くなるし、有間さんが床で寝てると気になって寝れないですから」

 昨日、寝た振りをしたら速攻俺の布団に侵入してきたから、そもそもベットで寝ようとしていないが……彼女がそう言うならそうなんだろう!

「俺、廊下で寝る?」
「むっ!廊下は、お姉ちゃんが通る時に邪魔だからダメです」
「となると……、リビング?」
「リビングで寝るとお母さんが部屋で寝なさいって怒るからダメです!」

 つまり一緒に寝たいっことか!

「良かったら……紫陽花のベットで一緒に寝たいなぁ~」

 そう言うとCOOLな彼女の顔がパァっと明るくなった。

「ええぇー↑ べ、別に、いいですけどぉ?」

 ええぇーが嬉しそうなんだよな。たく、可愛いなぁ。

「もう寝ますか?」
「そうだね、電気消してちょっとお喋りしたら寝ようか」

 彼女は電気を消してベットに横になる。
 あれ?今日はブラ外さないの?まぁいいか……。
 俺も続けて隣に横になった。

 何も見えない暗い部屋で、二人向かい合って横になる。ベットはシングルサイズで大人二人が寝るとかなり狭い。

「腕枕しようか?」

「……うん」

 左腕を差し出すを彼女は頭乗せた。

「有間さんの腕、安心する。……私、暗い所好きなんですよ」

 ようやく部屋の暗さに目が慣れた。それでも視界に入るのは彼女の顔の輪郭と、透き通った瞳のハイライトだけ。

「どうしてか、わかりますか?」

「いや、分からない。何で好きなの?」

「……肌の色がわからないから」

 そこ?……まぁでも、いつも気にしてるしな。かなりコンプレックスなのだろう。
 なんの励ましになるのか、何の意味もないかもしれない。だけど、俺は率直な気持ちを伝えることにした。

「俺は紫陽花の肌好きだよ。凄く好き、大好き。健康的で可愛らしくて、隠すなんて勿体ない。ずっと見ていられる。癒やされる。とにかく可愛くて大好き」

 恥ずかしい言葉を真剣に語ってしまったが、これが俺の正直な気持ち。

「恥ずかしい……。でも……有間さん、私のことそんなに好きじゃないですよね?本気じゃないというか……」

 本気じゃない――、その言葉は何故か胸に刺さった。俺は紫陽花を好きだ。でも何処か冷静で、彼女を100パーセント信用していないのか、一線引いている気がする。
 例えばある日、彼女から他に好きな人ができたから別れて欲しいと言われたら、俺みたいな陰キャ非モテは君のような超絶可愛い美少女に不釣り合いとか、勝手に納得できる気がする。
 最後の一線を引いていたお陰で、惨めで情けない自分を受け入れられる。

 俺が黙っていると。

「怒りましたか?だって連絡くれないし……、普通彼女から連絡なかったら心配になって連絡すると思うんですよね?」

「それは俺が悪かったよ。ほんとにごめん。もっと紫陽花のこと好きになるよ」

「どれくらい好きになってくれるんですか?」

 今回、紫陽花が食欲不振と不眠を患いバイト中に倒れた原因は、麻莉ちゃんが俺の家に泊まったことと、それで不安になっている彼女に俺が3日間連絡せず更に不安にさせからだ。本人から聞いた訳ではないが、それ以外考えられない。
 なら俺はもっと君を信じて、もっと好きになりたい。

「今も好きだけど、紫陽花のために死ねるくらい好きになりたい」

 そう思い込めば簡単なのかもしれない。そもそも大好きだったから。

「そ、そこまでしなくてもいいですけど……本当ですか?目標高過ぎて達成できないヤツですよ?」
「大丈夫だよ」

 なんだか眠くなってきた。昨日は殆ど寝れなかったし酒を飲んだから一気に眠気が来たぞ。

「そろそろ寝ようか?」
「私、まだ全然眠くないです。昨日10時間くらい寝たし……」
「そんなに寝れたのか。良かったじゃん。俺も寝落ちするまで起きてるよ。そうだ紫陽花は俺のこと好きなの?一度も好きって言ってもらったことないけど」

「……秘密」

 また秘密か……、もう聞くのはやめよう。俺がこの子を心底好きで尽くしたいんだ。見返りなんて必要ない。

「察することにするよ、はは……」


「有間さん」
「ん?」
「エッチしたいですか?……してもいいですよ」
「エッチはしたいけど、やめておくよ」
「……どうして?」
「うーん、なんとなく?」

 紫陽花は昨日倒れて病み上がりだし、ここ彼女の実家だし、アプリの件はまだ解決してない……、理由はたくさんある。

「私が好きって言わないからですか?」
「いや違うよ。紫陽花の気持ちは言われなくてもわかるから……」

 好きでもない男と一緒に寝る子じゃないもんな。つまり俺のこと好きってことだろ。

「処女だからですか?処女って面倒臭いって言うし」
「全然違うって!むしろ紫陽花の処女は絶対に俺がもらいたい。絶対に!大事なことなので二回言いました。それに俺だって童貞だし……、うーん、眠いから?」

 彼女の体調や実家のせいにするのは違うよな。

「有間さん、昨日直ぐに寝たからいっぱい寝たんじゃないですか?……あ、ほんとは寝た振りしてたんですか?」
「えっ?いや?えっ??な訳ないじゃん!」
「ですよね……寝言も言ってたしな」

 危なっ!バレるところだった!
 つかエッチしたいのかな?女の子も男と同じで性欲あると言うしね。

「じゃぁエッチの練習してみる?」
「練習ぅ?」
「セックスはスポーツ感覚って豪語する陽キャがいるくらいだからさ。スポーツなら練習があって本番、試合があると思うんだよね」
「私、テニス部だったから、それよくわかります!練習は必要ですねっ!」
「ああ、真面目に練習やらないヤツは試合じゃ使いものにならない……」
「ゴクリ……、やりましょう!私頑張ります!……で、何をするんですか?」

 適当に言ってみたけど、まさかここまで乗ってくるとは思わなかったからノープランだよ。
 男の場合は腹筋?いや、こんな所で腹筋始めてもなぁ。
 お互い裸になって抱き合ってみるとか?それだと練習からの、なし崩しで試合になってしまいそうだ。

「服着たまま正常位とか騎乗位とか、あとは……後背位《バック》をやってみるとか?」
「いいですよ。何からやりますか?」
「じゃぁ……、バックで」

 紫陽花は寝返ってうつ伏せになると膝を立ててケツを持ち上げた。

「これでいいんですか?結構恥ずかしい」

 眠いけど楽しそうだしやってみるか。
 俺も起き上がり紫陽花の背後に回る。
 彼女のシャツが腰から背中へズレ落ちてウエストが露出している。華奢で細い括れたウエストから突き出された尻は、そのギャップから実際よりもデカく見える。丸くて形の良いケツだ。……つかエッロいな。

 俺はそのケツの両サイドを両手で掴んで自分の腰を打ち付ける。

 パンッ!――「ンッあッ」

 紫陽花から淫らな吐息が漏れた。

「ご、ごめん、強かった?」
「大丈夫です。もっと強くても平気です」
「じゃぁ連続してやってみるね」

 よっしゃ、行くぜ!
 オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!

 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
 ギシッ ギシッ ギシッ ギシッ ギシッ ギシッ
「んッ……んッあ……あッ……ん……んッ…んッ」

 俺の腰の動きに合わせてベットが軋み紫陽花は吐息を漏らす。
 俺は正確にリズムよく、尚且つ力強く腰をストロークさせる。

 そして暫く腰を振った俺は動きを止めた。

「はぁー…はぁー……ぷっ、ははは…あははははは」

 エロさよりも、この奇々怪々な状況に笑ってしまった。
 なんてシュールなんだ。つか俺達、深夜に何やってるんだろう。面白過ぎるんだが。

「もう、有間さん……ぷっふふふ、真面目に練習してくださいよ。ふふふふ」
「ご、ごめん、くくくく」

 紫陽花も笑っている。

「バックは簡単だから、次は正常位をやってみようか?」
「いいですよっ♪やりましょうっ♪」

 彼女もノリノリである。



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