【完結】夜明けの使者【コミカライズ企画進行中!】

社菘

文字の大きさ
19 / 70
第4章

しおりを挟む



陽の全部を知りたい。暴きたい。枢だけだと言わせて、溺れさせたい。

そんな凶暴な感情が渦巻いているけれど、実際にはどうしたらいいのかやり方が分からない、ただの初恋拗らせ男だ。でも今は確実に枢にチャンスが巡ってきて、このチャンスを何としても自分のものにしなければならない。

「ご褒美ほしい?」
「うん……ちゃんと言えたでしょ?」
「ふは。言えただけでそんなに威張るSubもなかなかいないと思うけど…」
「星せんせがいじわる言う……」
「んー、でも俺にいじわるされるの、期待してるんでしょ?」
「そんないじわるなこと言うんだ? ……サブドロップするかも」
「えっ」
「Domがひどいから、枢のこと、拒否するかも」
「待って待って、分かったごめんなさい。〈Good Boyいいこ〉、ご褒美あげるから……!」

顔を傾けて、陽の柔らかい唇を奪う。触れるだけのキスを数回すると彼は自ら口を開けるようになるので、その隙間からぬるりと舌を差し込んだ。陽が望むままに舌を絡めてお互いの唾液を送り合いながら、枢は彼の耳をふにふに弄ぶ。こうすると陽はくすぐったさに身をよじりながらも、耳は彼にとって性感帯なのか、とろとろにとろけてしまうのだ。

「んぅ、ん……」
「ヒナ、〈Comeおいで〉」

ご褒美のキスでとろけてしまった陽を膝に乗せ「〈Kissキスして〉」と促すと、枢の首に腕を回す陽が恥ずかしそうな顔をしながらも近づいてくる。調子に乗って腰から下にかけて触っていると、陽に顔を掴まれて口付けられた。

「ふ、は……」

先程までは受け身の陽だったが、キスのコマンドを出すとあっという間に主導権を奪われる。薄々気付いていたのだけれど、陽はキスが上手い。初めてご褒美のキスをした時は初心そうな感じがしたが、もしかしたらあれは演技だったのかもしれないと疑うほど。そりゃあ、それなりに経験があるのは当然だろうなと思う自分と、一体今まで何人にこうしてきたらこんなに上手くなるのだろうという、モヤモヤした感情がひしめき合っている。

というか、恋人同士のように甘くて激しいキスを繰り返しているのに、これで付き合わずにセフレと同じ関係だなんて、意味が分からない。まぁ、ご褒美はキスと言うくらい陽はぶっ飛んでいるので、この関係に名前がつかないのも彼らしいと言えば彼らしいのだけれど。

「……キス、上手ですね」
「ほんと?上手だった?」
「うん。〈Good Boyよくできました〉」

頭を優しく撫でてやると、陽は嬉しそうにふわりと笑う。そんな顔にたまらなくなって唇の端に口付けると、彼は顔を赤くして俯いた。主導権を握るDomのような一面を見せたかと思えば、不意打ちに弱く照れてしまうだなんて、相手を狂わせる計算でもしかしたら人格が入れ替わっているのかもしれない。

「……枢は、キスとか撫でるだけで満足なの?」
「え?」
「さっきも言ったけど、本当に性欲に直結してないんだね…」
「……いや、だから。俺だって人並みに性欲はありますって」
「じゃあ、してあげようか?」
「へ……」
「意外とおれにでも興奮できるんだね」

そう言いながら陽は枢の上で腰を動かす。彼が腰を動かすと、ずくりとした重い疼きに驚いて、思わず身を引いてしまった。正直、今までパートナーがいたことはおろか、体を重ねたこともないのだ。

陽はDomから過激な要求をされるSubが多いと言っていたが、それはSubも同じらしいと聞いたことがある。DomもSubも嗜好は人それぞれで、枢のように甘やかしたいと思うだけのDomもいれば、Domに激しくいじめられたいというSubも存在する。激しいお仕置きをしたり、いじめたり、いじめられたいという欲求には応えられないなと、枢は常々思ってきた。

自分の中でもそういうのが苦手なのか、したくないなら仕方ないよなと思っていたのに。陽に対して感じるこの凶暴な気持ちは何なのだろう。彼になら、そういうことをしたい、と思うような――

「……生理現象なので、気にしないで下さい」
「でも、辛くないですか?おれが――」
「やめてくださいッ!」

思ったよりも大きな声が出て、自分でも驚いた。まさか怒鳴られると思っていなかった陽も目を丸くしていて驚いていて、そんな顔を見た枢はハッと我に返る。

「す、すみません……」

あぁ、バカだな、自分は!
きっと今が最大のチャンスだっただろうに、自分の性欲よりも陽を大切にしたいとういう感情が勝ってしまった。そんなことをさせるためにパートナーになりたいわけではないと、枢の中には別の感情があるのだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

愛されSubは尽くしたい

リミル
BL
【Dom/Subユニバース】 玩具メーカーの取締役開発部長Dom(37)×元子役の大学生Sub(20) かつて天才子役として名を馳せていた天使 汐は、収録中にSub drop(サブドロップ)に陥り、生死の境をさまよう。 不安定になっていた汐を救ったのは、スーツ姿の男だった。 素性や名前も知らない。でも、優しく撫でて「いい子」だと言ってくれた記憶は残っている。 父親の紹介で、自身の欲求を満たしてくれるDomを頼るものの、誰も彼も汐をひたすらに甘やかしてくる。こんなにも尽くしたい気持ちがあるのに。 ある夜、通っているサロンで不正にCommand(コマンド)を使われ、心身ともにダメージを負った汐を助けたのは、年上の男だ。 それは偶然にも15年前、瀕死の汐を救った相手──深見 誠吾だった。 運命的な出会いに、「恋人にもパートナーにもなって欲しい」と求めるも、深見にきっぱりと断られてしまい──!? 一筋縄ではいかない17才差の、再会から始まるラブ! Illust » 41x様

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません

ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。 全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?

処理中です...