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第5章
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しおりを挟む「星先生~、今度星先生の家で飲み会しませんか?」
「………えっ、うちで、ですか?」
陽と無事にパートナー契約をして数日。
今のところ特に変わったところはない。ただ、学校にいて仕事をしていても、前より少し意識してしまうというくらいだろうか。
パートナーになってからはわざと出勤時間をずらしたりすることもなく、どちらかと言えば歩み寄る姿勢を見せていた。学校で目が合った時はすぐに逸らしていた枢だが、今では目が合った際に陽が瞬きをするまでは見つめるという何とも危ない橋を渡っている。
幸いなことに枢と陽は担当学年が違うので、必然的に職員室での机の配置も離れている。なので、今のところ仕事に影響は出ていない。もちろん職場で求めるなんてバカなことはお互いしないけれど、こういうことに慣れていない枢はいつボロが出るか分からないなと恐れているのだ。
だから、同僚である白石先生の言葉に思わず固まった。
「星先生、外での飲み会はあまり好きじゃないのかなと思って……宅飲みなら周りの目を気にしなくていいし、どうですか?」
「いや、えっと……」
「確か朝霧先生と同じマンションなんですよね?朝霧先生もあんまり飲み会って参加しないから、星先生のお家でなら来てくれるのかな~って」
「あぁ、なるほど……」
白石先生は音楽の先生で、可愛くて美人な先生だと特に男子生徒から人気が高い。薄々気付いていたけれど、恋人がいないのか、はたまた白石先生自身がSubなのか彼女からはいつもDomを求めているような雰囲気を感じる。
そして、そんな彼女の狙いは陽なのだろう。先日の飲み会でも陽の話題に食いついていたし、その場でうっかり同じマンションだとバレたので、枢に協力してほしいのかもしれない。
でも、残念でした。
あの人はもう、俺のSubなんで。
なんて言いたくなったのをギリギリで耐える。別に職場恋愛が禁止というわけではないけれど、枢もそうだったように周りも陽を『Dom』だと思っている環境下で陽がSubだとバレたら、周りがどういう態度を取るか分からない。
今でも一部ではSubの立場は一番下だと思っている人もいると聞くので、陽をそんな好奇の目に晒したくないのが本音だ。そういう感情もありつつ、ただただ自分のものでいてほしいという自分勝手な感情もじわじわと顔を現している。自分だって陽の恋人ではなくただの『パートナー』だけれど、女性になんて渡したくない、という独占欲を自覚したが枢はそんな考えを瞬時に振り払った。
「えーっと、とりあえず朝霧先生にも聞いてみますね……」
そう言ってこの話を一旦保留にするのが精一杯。
優しい陽のことだからこの話をしたら『いいよ』と快諾するかもしれない。でも、もしそうなったら宅飲みなんていう閉鎖的な場所でいつもの飲み会よりも距離が近くなり、確実に白石先生から陽はロックオンされてしまう――
【星先生、昼休みに準備室に来てください】
枢が自分のデスクでうんうん唸っていると、タイミングよく陽からそんなメッセージが送られてくる。チラリと彼のデスクを盗み見るとちょうど目が合って、彼は長いまつ毛が縁どる瞳をぱちぱち瞬かせた。お互いに決めた合図というわけではないが、陽が瞬きをすると枢は視線を逸らす。
もしかしたら枢たちの話が聞こえていたのかもしれない。
この話を昼休みに切り出すのは嫌だなと思いつつ、枢は重いため息をついた。
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