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第5章
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しおりを挟む社会人として失格かもしれないが、授業中も昼休みに陽と会うことを考えてしまってそわそわしていた。授業はしっかりしないといけないと思いつつ、今日の授業範囲をシンプルに間違えて生徒に指摘されたことが陽の耳に入らなければいいのだが。
「あ……」
昼休みに入って職員室に戻ってくると、陽がスッと職員室を出ていく姿を捉える。その姿を見て枢もコンビニの袋を持ち、誰にもバレないように静かに職員室を出た。
いつも昼休みは職員室で適当にご飯を食べて、次の授業の準備をしてからうたた寝することが多かった。Playをしていなかったからかずっと寝不足が続いていたのだが、陽とパートナーになってからはそれが嘘だったかのように安眠できる日が続いている。
だから最近はあまり職員室で寝ることもなく、こそこそと抜け出して陽が使っている国語準備室へ来たのだ。一応隣は英語の準備室もあるので、ここに枢がいたとしても不思議ではない。でも何があるのか分からないので周りに誰もいないことを入念に確認して、室内へと入った。
「星先生、白石先生に迫られてましたね」
「いや、あれは迫られてたわけじゃないです……」
室内に入ると陽から早速、今朝の白石先生とのことをからかわれた。ただ、口調の割に彼の顔は全然笑っていない。というか、怒っているような雰囲気を感じ取った。
「なんの話をしてたんですか?」
「あー…いや、えっと……」
「……おれには言えないようなことです?」
「いえ、そういうわけでは…」
飲み会の話を言い淀んでいると、陽がムッとした顔のまま「白石先生ってSubですよね」と言いながら頬杖をついている。枢は陽をDomだと思っていたくらいなので、本能的にこの人がDom、この人がSubというのは分からない。でも白石先生は陽に固執している感じがしたので、なんとなくSubなのかな、と思っているくらいだった。
陽は本能的にそういうのが分かるのか、もしかしたら過去に白石先生から迫られて知っているのかもしれないけれど。
「誘われたりとかしました?」
「え?」
「Playしたいとか、そういう風に誘われたんですか?」
「いやっ、いやいや、違いますよ!」
「だって、話してくれないから……」
ここはまだ職場で、昼休みとはいえ仕事中である。いつも完璧な教師というイメージの陽が、まるで家でPlayをしているかのような空気感に変わる。先ほど怒ってるかも?と思った雰囲気が本格的に『拗ねている』空気に変わり、枢は思わずごくりと唾を飲み込んだ。
か、か、可愛すぎる……!
陽は純粋に枢が迫られたと思っているのか、自分がパートナーなのに話してくれないと拗ねている。パートナーになるって、恋人と同じくらいすごいのかもしれない。こんなところで陽の新たな一面を知ることができるなんて思っていなかったので、枢の中では『白石先生ありがとうございます……!』なんて場違いなことを思っていた。
「誘われたというのは合ってるんですけど、Playにっていう意味ではなくて…」
「じゃあなんですか?」
「……俺の家で宅飲みしませんかって…」
「それってつまり、そういうことでは?」
「いやっ、そうじゃないです!断じて違います!」
「なにが違うんですか」
「……俺と同じマンションだから、宅飲みなら飲み会嫌いな朝霧先生も来てくれますかねって…白石先生は朝霧先生のことを狙ってるみたいですよ。それを知ってたから白石先生がSubだって、朝霧先生は分かってたんじゃないですか?」
今度は枢が唇をムッと尖らせる番だった。陽は話の内容にハッとして口をつぐんで何か考え込んでいる。もし、いま彼の頭の中を白石先生が占めているとしたら――そう考えるとまた自分の中の"黒い部分"が腹の底からふつふつと沸きあがってくるのを感じた。
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