69 / 70
最終章
4
しおりを挟む朝、目が覚めたとき。
陽が隣で眠っていることが今もまだ信じられない。
「……光ってる…」
カーテンの隙間から差し込む朝日が陽の肌を照らしていて、きらきらと輝いている。枢の服をぎゅっと握りしめている陽のことが可愛くて、愛おしくて仕方がない。長いまつ毛が縁どる瞼を指先で撫でると、太陽を宿す温かい瞳が薄く開いた。
「どうしたの、枢……」
「……あなたのことを、愛してるなと思ってました」
「あはは、そうなんだ……あいしてるんだ、おれのこと…」
「うん……すごくすごく、愛してるんです。愛してるっていう言葉しか見つからないのが、悔しいくらい……」
「かわいいね、かなめ…おれにとっては、かなめの存在が"愛"だよ…」
「え?」
「おれの唯一のDomで、Subだから……こんな人、世界中探してもきっといないから……」
陽の細い指が枢の頬を撫でると、自分の瞳から涙がこぼれるのが分かる。陽は優しく笑いながら枢の瞳から伝う涙を拭って、唇に小さくキスをしてくれた。そんな陽の体温を全身で感じたくて、細い体をぎゅっと強く抱きしめると陽も背中に腕を回してくれる。たったそれだけのことが、こんなにも愛おしくて嬉しい。
「あなたにCollarを贈りたいです……」
Collarというのは、DomとSubの関係成立の証としてDomがSubに送る首輪のことだ。Subがこれをつけると精神的に安定するらしく、Playができない日が続いても多少は大丈夫らしい。Collarの始まりが首輪だったことから一般的には首輪を贈ると言われているが、自分たちがCollarであると認識しているものであれば、何でもいいのだとか。
「おれたち、二人ともCollarを贈らなくちゃね」
「うん……」
「どんなCollarがいい?」
「……ゆびわ、が…」
「ん?」
「指輪がいい、です」
職業柄、指輪なんてした日には恋人ができただの結婚しただの騒ぎになることは分かっている。でも、お互いに着けておけるものと言えば指輪くらいしかないなと思ったのだ。でも付き合いたてでもう指輪を贈りたいなんて重すぎることこの上ない。陽に引かれたかもしれないなと思っていると、枢の予想に反して陽は顔を真っ赤にして照れていた。
「い、いい、の……?」
「いいってなにが…?」
「う、疑われるかも、よ……」
「……疑われても困らないって言ったら、陽は困る?」
こつん、額をくっつけて陽に問うと、長いまつ毛が縁どる瞳がぱちぱちと瞬く。恥ずかしそうに目を伏せたあと、陽はふるふると首を横に振った。
「困らない……おれ、枢のパートナーだってみんなに言ってもいいくらい、枢のことが好き」
公表したらきっと釣り合わないとか、枢に陽はもったいないとか色々と言われそうだなと思うが、彼が選んでくれたのは星枢なのだ。そんな陽が『みんなに言ってもいい』と言ってくれるくらい自分は愛されているのだと、こればっかりは胸を張らざるを得ない。陽を愛しているのも、陽から愛されているのも、世界中探しても枢だけなのだから。
「じゃあ、一緒に選びに行こう。お揃いの指輪、買いに行こう?」
「うん……すごく楽しみ」
一度は捨てた恋だったけれど。
人の想いというものは、強ければ強いほど叶うものなのかもしれない。
それを教えてくれたのは、世界で一番最愛の人だった。
109
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
愛されSubは尽くしたい
リミル
BL
【Dom/Subユニバース】
玩具メーカーの取締役開発部長Dom(37)×元子役の大学生Sub(20)
かつて天才子役として名を馳せていた天使 汐は、収録中にSub drop(サブドロップ)に陥り、生死の境をさまよう。
不安定になっていた汐を救ったのは、スーツ姿の男だった。
素性や名前も知らない。でも、優しく撫でて「いい子」だと言ってくれた記憶は残っている。
父親の紹介で、自身の欲求を満たしてくれるDomを頼るものの、誰も彼も汐をひたすらに甘やかしてくる。こんなにも尽くしたい気持ちがあるのに。
ある夜、通っているサロンで不正にCommand(コマンド)を使われ、心身ともにダメージを負った汐を助けたのは、年上の男だ。
それは偶然にも15年前、瀕死の汐を救った相手──深見 誠吾だった。
運命的な出会いに、「恋人にもパートナーにもなって欲しい」と求めるも、深見にきっぱりと断られてしまい──!?
一筋縄ではいかない17才差の、再会から始まるラブ!
Illust » 41x様
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる