【本編完結】死んだあとに運命だと言われても、

社菘

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第1章

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今、この場に生きていることが夢じゃないのであれば、未来を変えたい。

できればイヴァンを生かし、レイシスと幸せになってもらいたい。イヴァンとレイシスが結婚したほうがきっと二人は幸せになれると昔から思っていた。

「……そうか、そうしてもらったらいいんだ…」

ノエルとの婚約を白紙に戻し、レイシスとイヴァンが婚約をする。二人は同い年なので上手くいけば卒業と同時に結婚し、幸せな結婚生活を送れるだろう。

元々レイシスは宰相一家の長男なので、生まれた時から王を最も近いところで支える役目だと決まっているのだ。

そしてオメガの王子であるイヴァンが王位継承第一位なので、毒殺されなければ二人は夫夫としても、国を支える重役としても二人三脚でやっていける姿が思い浮かび、国民からも愛される二人になるのが分かる。

二人が並んで立っているほうがお似合いだと、過去に何度思ったことか。

『運命の番』なんかで婚約させられたレイシスが可哀想で、気の毒で、でもノエルのほうから婚約解消の申し出をできなかったのだ。

あの頃はヴァレンタイン家の体裁も考えていたし、何よりノエルにいい結婚をしてもらおうと頑張ってくれた父の気持ちを踏み躙ることができなかった。

でもこうなった今、一度捨てた命が過去に蘇ったのは何かしら理由があるはず。

そして、それはきっとレイシスとイヴァンを結婚させ、ロードメリアの繁栄のためにこれからの未来を変えろという神様からの啓示なのかもしれない。

「何をそうしたらいいんですか?」
「ん、いや……なんでもないよ。ありがとう、ルナ。ルナがいてくれて本当によかった」

彼女には悲しい顔をさせてしまうかもしれないけれど。

でも、それでも、ノエルは同じ道は歩まないと決めた。

「入浴後は温かいハーブティーを淹れますね。学園のほうにもノエル様がお休みすることは伝達済みですので、今日はゆっくり家でお休みください」
「うん、ありがとう」

冷や汗で濡れた体を綺麗にし、ヘッドスパまでしてもらったからか気分は少しスッキリしている。ルナが淹れてくれたハーブティーを飲み、大好きなジャムクッキーを食べながらこれからのことを考えた。

「まず、今の殿下に婚約者はいないから……婚約が決まるのは卒業間際。俺とレイシス様の結婚は卒業から2ヶ月後…そう考えるとあんまり時間がない」

とりあえず、この一年の間に婚約を解消しないと話にならない。ノエルとレイシスが別れた後すぐにイヴァンと婚約してもらい、結婚してもらわなければ。

できることならレイシスのほうから婚約を解消してもらったほうが、彼の経歴や家柄に傷がつかないだろう。12歳の時に婚約してから今までほとんど婚約者らしい振る舞いをしてきたこともないから、何か更に決定的になるようなことをしたらいい。

「それをどうするかが問題だよな……」

ノエルが嫌われるような行動を取れば一発だろうけれど、イヴァンの毒殺疑惑の時でさえノエルとの縁を切らなかった不思議な男だ。その時は同情もあったのだろうけれど、今のノエルに対しては同情も何もないはずなので嫌われるのは容易い。

「でも問題なのは、運命の番ってことなんだよなぁ」

ノエルが12歳、レイシスが11歳の頃。

王宮主催のお茶会に父と一緒に参加したノエルは、そこで初めてレイシスと出会った。この時のお茶会は実はノエルとイヴァンのために開かれたもので、蓋を開けてみれば二人の婚約者候補を探すお茶会だったのだ。

ただ、そこで思わぬ事件が起きた。

ノエルとレイシスは目が合った瞬間、お互いを番だと認識してしまったのだ。ノエルは生まれた瞬間からオメガだと分かっていたが、レイシスに関してはまだバース検査をする前でアルファだとは分かっていない時期。

このお茶会に参加した貴族の子供は早期検査をして、きっとアルファだろうと診断された者たちばかりだったのだが、その瞬間レイシスはきちんとアルファとしての第二次性が確定した瞬間だった。

それにノエルはまだヒートが来ていない時期だったのだが、運命の番と出会ったことによりたくさんの人がいるお茶会の場でヒートが起こってしまった。それを自分のせいだと気に病んだのもあったのか、ブラウン家のほうからノエルに婚約を申し込んできたのが始まりだ。

「世間的にも俺たち"運命の番"はロマンス小説や絵本にされてるくらいだし……」

運命の番と出会うのは、オメガが生まれる確率よりも低いと言われている。初代のオメガの王は運命の番のアルファと出会い、ロードメリアの歴史を語る上で必ず二人の名前が出てくるほどの偉人だ。

ノエルとレイシスは王族ではないけれど、将来的に宰相になるレイシスと、イヴァンの侍従になるノエルに対して世間からの期待が大きい。だから運命の番である二人は、簡単には別れられないのである。

「世間からのイメージをどうにか変えられたら、レイシス様も心変わりするかもしれない」

運命の番同士が結ばれると普通の番より相性がいいし、どの番よりも幸せになると言われているけれど。自分たちはそんな幸せな結婚ではなかったので、言い伝えは所詮言い伝えだ。

本能的な繋がりよりも、自分が愛する人と結ばれたほうが幸せになれる。

ノエルは今まで誰かを好きになったことはないけれど、レイシスとイヴァンにとってはお互いがそうなのだろう。だから二人を、自分の手でくっつけてあげなければ。

「レイシス様が運命の番に遠慮しないで婚約破棄するには……もっとイヴァン殿下を好きになってもらう必要がある、とか?」

正直、それならとっくに、17歳のレイシスでも想いは同じだろう。

イヴァンへの想いは十分にあると思うので、問題は別のところにあるはずだ。たとえば、かつてのノエルのように家柄に傷をつけたくないとか、世論の評価や期待、そういうものに縛られているのかもしれない。


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