【本編完結】死んだあとに運命だと言われても、

社菘

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第7章

6 *

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体が熱い。どうしようもない熱が体の中を巡っている。

ぶわり、自分の中から何かが解放された気がした。

「……っノエル!フェロモンを抑えてください……!」
「そ、なこと、言われてもぉ……っ」

ただレイシスの瞳を見ただけで発情してしまったノエルの体は、自分のものでも制御できない。フェロモンの抑え方なんて習ったことはないし、これまでヒートの熱は自分で自慰をして鎮めていたか、結婚してから数年はレイシスが相手をしてくれていた。

そんなやり方しか知らないのに、今すぐフェロモンを抑えろと言われても無理がある。

「ノエル………」

ノエルのフェロモンにあてられたウィンターが、荒い息をしながら再びノエルに触れようとする。

普段は透明感のある海のように綺麗な青色の瞳が今はモヤがかかったように濁っているように見え、初めてウィンターを怖いと思った。

ぎゅっと目を瞑って縮こまったノエルにウィンターの手は触れることなく、再びレイシスが腕を掴んで制止していた。

「この人に触れていいのは僕だけです、ウィンター・ホワイト!相手が誰であれ、ノエルには指一本触れさせません!」

レイシスが険しい顔をしたままノエルの体を抱き上げ、庭園から早足で去った。そして彼が向かったのはある一つの空き部屋。月明かりのみで薄暗い中、ノエルの体はブルーグレーのカウチソファの上に押し倒された。

「ここ、どこです、か……?」
「普段、王宮で勉強をするときに借りている僕の部屋です」
「カウチソファがあるとか、やらしい……」
「……変な想像をしているあなたのほうが、やらしいです、よ」
「んん……っ!」

駄目だと分かっているけれど、お互いを求める気持ちが止まらない。

レイシスの熱い指先がノエルの頬を撫で、柔らかい唇が息を奪うように重なった。

「……ノエル、あなたの肌に触れる許可を、ください」
「れ、しすさま……」

今にも噛みついてきそうな狼のように瞳をギラつかせながら、ギリギリの理性を保ってノエルに許可を得るレイシス。

その姿にノエルの体からじゅわっと蜜が溢れ出る感じがした。

「いい、ですよ……」

許可を出した途端、何度も何度も口付けながらレイシスの指はノエルの服の下に触れて、そのくすぐったさにびくりと体を震わせた。

「んっ、だめ、やっぱりだめです、レイシス様……!」
「なにがだめ、ですか……?」
「こんぜんこうしょうがバレたら、だって……」
「……挿入まではしません、から」
「そういう問題じゃな……んあぁっ!」

チョーカーをつけている喉元をかぷりと噛まれ、服をまくり上げられた。18歳のノエルの体を17歳のレイシスに見られたのは初めてで、月明かりが入ってきて心なしか明るく見える部屋で何も隠せるものがない。

自分の内面にも外見にも自信がないノエルは顔を赤くして、へにゃりと眉を下げてレイシスを見つめた。

「そんなところ見られるの、はずかし、です……っ」
「……大丈夫。あなたの体は、隅々まで綺麗です。想像していたよりもずっと」
「は、ぁ……!や、だめ……!」

ねっとりとしたレイシスの舌が胸の突起を舐める。生温かい感触にぞわりと興奮が走って、もっと胸をレイシスに突きつけるように反ってしまった。

「可愛いですね、ノエル……恥ずかしいと言うわりに、胸を触りやすくしてくれるなんて」
「ちが、ちがいます!そういうわけじゃな…ひぁっ!」
「胸が弱いんですか?可愛い……舐めてほしそうに、立ってますね」
「やだやだ、れいしすさま、なめちゃやだぁ……っ!」

そう言ってもやめてくれないレイシスの態度に、ノエルはエーデのことを思い出した。

あの本の中で『いや』とか『やめろ』という言葉は『もっとして』と変換されるのだと、アルファのキャラクターが言っていたのだ。

まさか作者であるレイシスもそう思っているのか――!?

そう思いながら涙目で彼を見ると、彼はノエルの右胸の突起を舌で転がし、左胸の突起を指先で摘みながら獣のような瞳を向けた。

「……どうしました?」
「ぁっ、や、レイシス様……」
「ん……?こうされるの、やめてほしいですか?」

多分いまの彼なら、ノエルが嫌だと言えば本当にやめてくれるだろう。

でもノエルの体はすでにレイシスからの刺激を求めて、自ら腰が揺れているのが分かる。こんな中途半端に熱を与えられて『あとはご自由に』なんて状態でイヴァンの部屋に戻ることもできないし、またウィンターのように他のアルファと鉢合わせる可能性だってある。

自分にとって都合のいい考えしかできないほど、いまのノエルの頭の中はもうとろとろに溶けきっていた。

「もっとしてくださ、レイシス様ぁ……っ」

気がつけば、そんなことを言っていた。

今まで出したことないような自分の甘ったるい声にも驚いたが、一番驚いた顔をしていたのはレイシスだ。

目を見開いて驚いていた彼はすぐに優しく笑い、汗が滲むノエルの額に口付けた。

「素直でいい子ですね、ノエル。ただ、気持ちよくなることだけを考えてください……」
「んんっ、あ……!」

カリ、と甘噛みされるだけで体が跳ねる。

そんなノエルの反応に気を良くしたのか、レイシスの手は胸よりも下に伸びていった。

「っそこは、いくらなんでも……!」
「どうしてですか?熱を鎮めるには、一番手っ取り早いでしょう?」

ヒートの熱とレイシスから与えられる快感に反応したノエルの性器を下着越しに触られるだけで、敏感なそこは精を吐き出しそうになる。

あまり声を出してしまうと外にバレてしまう可能性があるので必死に両手で口元を塞いでいると、レイシスからくすっと小さく笑われた。

「防音魔法がかかってますから、安心してください」
「………なんですか、それ。普段こういうことをするために、誰かを連れ込んでるんですか?」
「存在しない相手に嫉妬ですか?可愛いですね。ただのマナーです、よっ」
「んあぁっ!」

いつの間にか履いていたズボンを剥ぎ取られ薄い下着一枚になっていたノエルの敏感な部分に、レイシスの腰が思いっきり打ち付けられる。

予想していなかった刺激にノエルは驚いた拍子に、だらしない大きな声を出してしまった。

細い両腕を掴まれて下着の上から擬似セックスをされると、本当に体を重ねていたときよりも数倍、興奮した。

「……っ挿れませんから、お願いですから、挟んでいただけますか?」
「え!?は、はさむって、なに……!」
「内もも、挟んだままぎゅって締めてください」
「や、やぁ……っ!こんなの、や、やらしすぎますってぇ……!」
「……やらしいのはあなたです。こんなにとろとろの蜜をたらして……」

両足を抱えられ、そのまま膝下はレイシスの脇に抱え込まれた。下着さえはぎ取られた太ももにずっしりとした重みのレイシスの性器を挟まれると、その熱に思わずごくりと唾を飲み込む。

きっとこんなに血管が浮き出ている太いものを見たら、世間のご令嬢は泣いて逃げ出すだろう。

本で見たことはあったけれど、オメガとアルファでは男性器の形状が本当に違うものだなとまじまじと見てしまった。

前にもレイシスとこういうことをしたことがあるが、その時は後ろからされるばかりできちんと彼のものを見たことがなかったのだ。

だから初めてまともに見たそれに、心臓はドキドキして蜜がさらに溢れ出してくる感覚がした。

「……僕のを見ても、驚かないんですね?」
「へ……?」
「もしかして初めてじゃない、とか言わないですよね、ノエル」
「なっ!し、失礼なこと言わないでください……っ」

18歳のノエルは、初めての体だ。

レイシスから嫌味を言われたように『律儀』に純潔を守っていたから、この体自体は誰も受け入れたことがない真っ白な体である。

でも中身のノエルは初めてではないが、久しぶりすぎる性的接触だった。

「……痛くないとは思いますが、何かあれば言ってください」

そう言って、レイシスの細い顎に透明な汗が伝う。そのまま透明な雫は落下して、ノエルの肌に溶けた。

「(なんだか、レイシス様とひとつになったみた、い……)」

そんなことをぼんやり思っていると、ばちゅんっと音を立てて腰が打ち付けられた。

「ひぁ……っ!だめ、そんな、つよ……っ」
「っはぁ、ノエル……」
「れいし、さま…どうしよ、こんな、こんな……」

婚前交渉が厳禁なのは、子供のうちにこんなに気持ちいい行為を知ってしまったら、元には戻れないからだろう。

このまま一日中セックスだけをしていてもいいほど、ヒート期間中というのは頭がおかしくなる。きっとこれはオメガとアルファじゃなくても感じる快感だろうから、夢中にならないようにそりゃあ厳禁だと言われるはずだ。

挿入していない素股の状態でこんなに気持ちがいいのだから、この状態で挿入されたら――そんな想像をしただけで腹の奥がきゅんっと切なく締め付け、ノエルはびゅくっと先端から精を吐き出した。

「……ふ、はぁ……」

レイシスも同じように熱い精を吐き出して、ノエルの頭に口付けながら荒い息を整えた。

「もしもウィンターが誰かに言ったら、どうしよう……」
「そうなったら、僕がなんとかします……あなたを教会送りにして神様に独り占めなんか、絶対にさせてやりません」

一度お互いに精を吐き出して段々と冷めてきた熱。

ただ、それに気づかないように、キスをした。


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