【本編完結】死んだあとに運命だと言われても、

社菘

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第10章

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あっという間に月日は経ち、ノエルが学園を卒業する日がやってきた。

あの事件以来あまり学園にも行っていなかったのだが、なんとか卒業はできるらしい。

結局、ウィンターをはじめとするホワイト公爵家の取調べはほとんどと言っていいほど進んでいない。

彼らが言うことといえば『オメガ様を神様に返しただけ』という供述のみ。ホワイト公爵家の使用人たちは『何も知らなかった』または『指示をされてやっただけ』と言う人が多く、話にならないとジルベールが言っていた。

そして一部姿を消した『ファントム』の教団員も見つからず国外逃亡も視野に入れて捜索しているらしいが、なかなか容易な話ではないのだ。

『ファントム』については未だ何も解明されないままだが、いいこともあった。

それは、レティネ教会の管理者が王宮になったこと。その中でも責任者はオメガであるイヴァンに一任され、彼が信頼する家臣や使用人、ブラウン家やヴァレンタイン家からも数名の使用人が派遣され、子供たちの世話にあたってくれている。

イヴァンが管理をするようになってからレティネ教会には今までどこにいたのかと思うほどのオメガの子供が連れてこられ、イヴァンと一緒にノエルも教会の手伝いをしているのだ。

帰る家がある子供たちや保護者にはオメガの生き方を説いたり、相談できる相手が常にいるのだと知ってもらう活動をしている。帰る場所がない子供たちは昔のように保護をして、教会では炊き出しをしたり、学校はまだ無理があるが簡単な勉強を教えたりと様々なことを始めた。

まだまだ改善すべきことはたくさんあるけれど、大きな一歩としてロードメリア中で話題になっている。

そんな手伝いをしていたらいつの間にか卒業を迎え、その後ノエルの成人を祝うパーティーがヴァレンタイン家の屋敷で開かれた。

「ノエル、成人おめでとう」
「おめでとう、ノエル。成長するのはあっという間ね……」
「本当に。この間まで赤ちゃんだったのになぁ」
「そうだよなぁ…こんなに小さい子供だったのに」
「あの、恥ずかしいからやめて……」

両親と兄のベネディクト、そしてジルベールから子供扱いされて顔を赤くするノエルは、今日という晴れ舞台に新しい服を身につけていた。

レイシスが成人祝いとして礼服を贈ってくれたのだ。

ノエルの雰囲気に合わせて仕立ててくれたというそれは白を基調にしたもので、上着は肩掛けのものでふわりとしたデザインのもの。中のベストと靴だけは黒で合わせ、リボンやベルトなどの装飾品は紫色で統一されていた。

そしてレイシスはノエルと色違いで、黒を基調としたものだった。彼は中のベストと靴だけは白に合わせ、肩掛けの上着はノエルよりも長く作られている。小物や装飾品はシルバーでまとめられていて、カフスボタンが二つだけノエルの瞳のような紫色の宝石が輝いていた。

この場にはノエルの両親をはじめブラウン家の両親も来ていて、イヴァンやジルベールも参加してくれている。イヴァンが参加している時点で小規模なパーティーではないけれど、少人数で同じ時間を過ごす大切な場としてセッティングしてくれたルナとセシリアには感謝してもしきれない思いだ。

「似合ってます、ノエル」
「レイシス様のおかげです」
「はは、僕の目に狂いはありませんから」
「……でも、どうしてサイズが分かったんですか?仕立て屋の人に言われて驚いたんですけど」
「僕があなたのことで知らないことってないんですよね」

腰を抱かれて耳元で囁かれ、ノエルは慌ててレイシスから離れた。

幸い周りの人も会話に夢中なのか気づいていなくて安心したが、レイシスは慌てているノエルを見てほくそ笑んでいる。そんな意地悪な笑みを向けるレイシスを小突いて「全部は知らないくせに……!」と、ノエルは負けじと呟いた。

「じゃあ更に"プラス"になるように、これからあなたのことを知っていきます」
「もう……」
「今回のパーティーではあなたの好物を更に知りました」
「え?」
「料理のことです。ルナやセシリアがあなたの好物しか出さないと言っていたので。こういう料理が好きなんだなって参考になりました。結婚後は……シェフにたくさん、あなたの好物だけ作ってもらいますね」
「そんな、好物だけなんてやめてください。俺もレイシス様の好きなものを食べたいし、知りたいですから」

ノエルがそう言うとレイシスは照れたような、でもどこか嬉しそうな顔をして頬を掻いている。こういうレイシスを見ると最近は『あ、嬉しいんだな』と分かるようになった。

言葉にしなくても伝わる仕草や癖などを発見すると、なんだか嬉しくなってしまう。知っているのは自分だけじゃないかもしれないけれど、それでもこれからは一番近くでレイシスの癖が分かるようになるかと想像しただけで、ノエルはなんだかワクワクした。

「何を笑ってるんですか?」
「ふふっ、別に。レイシス様のことです」
「余計に気になるんですけど……」
「教えてあげません」

そんな二人のやり取りを周りは微笑ましそうに見ていたが、ルナとセシリアだけはお互いに手を取り合って「あぁ…なんて素敵な光景なんでしょうか……!」「あんなお二人を見られる日がくるなんて……っ!」と、号泣していた。

彼女たちは一番近くでノエルやレイシスのことを見てきただろうし、迷惑よりも心配をかけてばかりだったと自覚している。

そんな彼女たちが手を取り合って泣いている姿を見て、ノエルとレイシスは顔を見合わせて苦笑した。

「ノエル、二人で話をしてもいいかな?」
「あ、イヴァン殿下。もちろんです」
「すまないな、レイ。少しノエルを借りるよ」
「はい、殿下」

今日はイヴァンも黒と金色でデザインされている衣装に身を包み、裏地は綺麗な薄い紫色をしていてとてもエレガントだった。

そんなイヴァンに声をかけられ、ノエルはイヴァンと一緒に夜風が涼しいテラスへと躍り出た。


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