【完結】君を上手に振る方法

社菘

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1.春

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 先輩のおかげで無事に自分のクラスまで辿り着き、結局入学式に遅れることはなかった。

「うわっ、恵……手振られてるぞ」
「えっ?」
「木虎春陽先輩」

 同じクラスになった幼馴染の大我がコソコソと囁いてくる。

 彼が指差した先には、スクールカーストの王者に君臨している木虎先輩がこちらに小さく手を振っているのが見えた。

「え、あれ僕に対して、か……?」
「絶対そうだろ」

 いや、絶対人違いだろ。

 そう思ってきょろきょろ辺りを見回してみたが、先輩から『お前だよ』と言われているかのように指をさされる。控えめに僕も自身を指差してみると、先輩は満面の笑みでこくこく頷いた。

「……ドンマイ、恵くん」
「やめろ、そんなこと言うな」
「王に目をつけられたら最後、どうなるかは俺も知らない……」
「怖いこと言わないでくれ……」

 さすがに上級生に対して手を振り返すことはできないので、小さく会釈した。すると先輩は満足そうに微笑んで、やっと前を向く。視線が外れたことに安堵して、ふぅっと小さく息を吐いた。

「ねぇねぇ、春陽先輩と仲がいいの?」
「え?いや、全然……」
「そうなんだぁ。かっこいいから、春陽先輩のグループに入ってるのかと思った」
「僕が? 絶対あり得ないんだけど……」

 春陽のグループといえば、他にも目立つ生徒を含めた4人はこの学校の四天王と言われているらしい。

 一昔前の少女漫画に、そういう設定でハーレム展開になる漫画って結構あったよなぁ……。ただ、僕には全く縁のない人種のグループなのは間違いない。

 春陽のグループはいわゆる『陽キャ』グループ。幼馴染の大我も天性の陽キャタイプなのだが、僕はゲームやアニメが好きなオタクの陰キャなのだ。引きこもってゲームばっかりしていたいし、ベッドに寝転がって漫画を読み漁りたい。

 隣に座る女子から『かっこいい』と言われたけれど、中学の時までは牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけて髪の毛もボサボサだったのを知らないから、そういうことが言えるんだ。兄と大我によって『高校デビューだ!』と無理やり外見を整えられたのが災いしているのかもしれない。

 正直あんな陽キャグループには入りたくないし、そう思われたくもない。ただ外見を整えただけで中身は変わらないのだから、ゲーム同好会にでも入って学校でもゲームに明け暮れたい――

 そう思っていたのに。

「大我、てめぇ……」
「いいじゃん。どうせ暇だろ?」
「暇じゃねーよ。何だよ、助っ人部って!」
「その名の通り、色んな部活の助っ人。お前、無駄に運動神経いいんだから活用しろよ」
「レクレーションのバスケの試合見た時すげーって思ったよ! まじで運動神経いいんだな!」
「筋肉バカばっかり集まってる……」
「勉強出来なくても筋肉は裏切らない! なあ大我!」
「どうしてこうなった……」

 あれだけ陽キャグループになんて所属しないと誓っていたのも虚しく、大我の手によって意味の分からない部活に入部させられた。

 そしていつの間にか学年の中でも目立つグループの中の一人になっていたのだ。

 成績トップで入学したらしく新入生代表を務めた優等生の鹿島衛かしままもるに、人懐っこい笑顔が特徴で元気いっぱいなイケメンの日向蛍ひゅうがほたる、そして黙っていたら普通にかっこいい運動神経抜群の大我。

 入学式の時からイケメンだなんだと話題になっていたグループの中に、なぜ自分もいるんだ……?と恵は項垂れた。

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