14 / 41
2.夏
3
しおりを挟む生徒は誰も来ない薄暗い空き教室。
まだ桜が咲いていた時期に恋人(仮)になり、恋人同士のスキンシップとして『毎日キスをすること』という約束をしていた先輩と僕は、二人とも律儀にその約束をもう数ヶ月間守っていた。
恋人のフリだったはずなのに、いつの間にかスキンシップが過剰になってきていることには気がついている。でも止められないのはどうしてなのか、キスがただ気持ちいいからではないことくらい自分でも気がついていた。
「ん、宇佐美くん……もう一回、キス、しよ?」
「でも、先輩……先生の見回り、来るかも……」
「先生とおれ、どっちが大事なの……?」
「も、もちろん先輩ですけど、でもバレたらどうするんですか!」
「テスト期間中ずっと会えなくて我慢してたんだから、今日くらい好きにしようよ」
高校生になって、初めての夏休みがやってくる。ただ、その前に期末テストというなんとも無駄なテスト期間があり、6月の終わりからテストが終わるまで先輩との逢瀬はお預け状態だった。
そしてやっとテストが終わった最終日、久しぶりに先輩と待ち合わせをした放課後。
恋人のフリをしているだけの関係にもかかわらず心ゆくまでキスをして、テスト期間中に不足していたお互いのことをチャージしたのだ。
ただ、期末テストは終わったが、問題はその答案である。
「春陽先輩、今日も告白されてる」
「彼女できたって噂だったのに、いまだに毎日じゃん。昨日は他校生から出待ちされてたぜ」
「モテるよな~。な、恵」
「……んぇ?」
「話聞いてなかったんかい!」
蛍に容赦なくバシバシ背中を叩かれるが、僕は話を聞いている余裕がないくらい緊張していた。なぜかというと、昼休み明けに英語の授業があるのだ。あと期末テストの答案が返ってきていないのはその英語だけで、最後の答案返却で僕の夏休みが天国か地獄かが決まるのである。
運動神経はいいのに頭の出来が悪いと自負している僕は、期末テストなんて適当でいいだろ……なんて、今までの自分なら思っていた。でも、春陽先輩の存在でその考えが一瞬にしてひっくり返ったのだ。
「なんの話?」
「春陽先輩! また告白されてるって」
「へえ……」
「お前マジで興味ないよな」
「別に、興味ないわけじゃないけど……」
周りには秘密にしているのだが入学式で先輩と出会ってからというものの、お互いに告白を断るのが面倒なので恋人がいると言ったらいい、なんていう不思議な理由で付き合うことになってしまったのに先輩はいまだに告白ラッシュが続いているらしい。
そしてボロが出ないようにと、毎日屋上でキスをするなんていう際どい約束もしっかり守っている。もちろん会えない日もあったけれど入学してからほとんど毎日先輩と会って、キスをして。
でも相手はスクールカーストの王座にいるような先輩だし、そもそも僕は男なので、どうせ1週間もしたら簡単に捨てられると思っていた。今まで僕は誰とも付き合ったこともなければ、もちろんキスだってしたことがなかったから、飽きられるだろうと。
でも先輩との付き合いはまだ続いていて、僕も先輩と逢瀬を重ねた結果、ただ触れるだけのキスではなくちゃんとした『キス』ができるようになった。
5月は暖かい風が吹く屋上で、6月は雨が降る時期だったので空き教室で、7月は期末テストの勉強があったのでほとんど会えなかったけれど、着実に『恋人』としての階段を上っているのだ。
……(仮)の恋人だけれど。
「ていうか、恵と春陽先輩っていつの間にあんなに仲良くなったんだよ」
「そうそう。図書室で期末テストの勉強してた時、頭撫でられてたしな」
「お気に入りって言われてなかったっけ?」
「あー、まぁ……いろいろ?」
「なんだよそれ、怪しいな!」
秘密の逢瀬を繰り返しているうちに、僕はいつの間にか本気で先輩を好きになっていた。
2歳も年上で、もうあと1年もしないうちに卒業してしまう人。先輩も僕も告白を断るのが面倒だからという理由で恋人関係になっただけで、いつこの関係が解消されてもおかしくない。
それこそ先輩が卒業してしまったら、この関係には自然とピリオドが打たれるだろう。
でも今は、ものすごい奇跡が起こって、まだ僕が先輩の恋人である。そんな年上の恋人は期末テストが嫌だと言う僕に『期末テストで赤点を取らなければ、夏休みは一緒に過ごそう』と言ってくれたのだ。だからこそ今は彼が誰かに告白されているという事実より、次の英語の答案が気になって仕方ないのである。
…………って、また告白されてんのかよ、とは思うけれど。
110
あなたにおすすめの小説
高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~
夕凪ゆな
BL
「来週の木曜日、少しだけ僕に時間をくれないか」
学園の太陽と慕われるセオドリックは、副会長レイモンドに告げた。
というのも、来たる木曜日はレイモンドの誕生日。セオドリックは、密かに、彼を祝うサプライズを画策していたのだ。
しかし、レイモンドはあっさりと断る。
「……木曜は、予定がある」
レイモンドをどうしても祝いたいセオドリックと、独りで過ごしたいレイモンド。
果たして、セオドリックのサプライズは成功するのか――?
【オムニバス形式の作品です】
※小説家になろう、エブリスタでも連載中
※全28話完結済み
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
君の1番にならせて‼︎
小麦
BL
【ツンデレ一途微執着年下攻め×無意識翻弄鈍感年上受けの幼馴染BL】
高2の夏希には学校に憧れであり推しの男子がいる。その男子の恋路を応援したものの、推しが幼馴染と付き合い始めたのを見て夏希はショックを受ける。
そんな夏希は、推しの彼女の弟であるもう1人の幼馴染・晴に話を聞いてもらうことにする。1つ歳下でツンデレ気味な晴が不機嫌ながらに夏希に告げた言葉は──?
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる