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第35話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 1
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「へっ、じゃないわよ! いったい夕べはどこに行っていたの? パパとママに聞いてもなんか答えてくれないしぃ!!」
おいおい、いきなりなんだよ。
普段何もこっちの事なんか気にもかけていないくせに、たった一晩いなかっただけで、なんだ? なんでそんなにも怒ってんだ恵美は?
分かんねぇ――――。もしかして心配してた?
うっそだぁ――! そんなのありえない。
恵美は僕のこと多分。いや、これは薄々感じていたんだけど、嫌っているよな。
でなければ同じ家にいても今まで会話すらほとんどないっていうのが、おかしい。避けられているていうのは感じていたからこっちも、それに合わせて無理に会話しようなんてしなかったし。
ま、ここは無難なところ。孝義のところにでも泊まっていたって言った方が、丸く収まるんじゃねぇ?
そりゃ、頼斗さんと響音さんの墓参りに行ってたなんて、言えるわけねぇし。
「た、孝義んところに泊ってたんだよ」
ぎろっと、恵美のきつい視線が僕を突き刺す。そして一言。
「嘘だね」
「な、なんで……」
「うふふふ、私をあんまり甘く見ないことだね。孝義君の所には行っていない」
「なんでそう言えるんだよ」
「だって、昨日孝義君と会っているんだもん。横浜駅で。彼、何にも言っていなかったんだもん」
うっ! な、なんでそう言う時に横浜なんかうろついてるんだよ。――――孝義!!
「さぁ――、どうなの? 結城」
ん? 今僕の事結城って呼んだ? いつもていうか、ほとんどないんだけど、呼ばれる時って「あんた」とか「それ!」なんて言う時もあったかな。でも名前で呼ばれたのって、確か……ああ、告った時か。
なぜかあの時恵美は僕の名前を言ってた気がする。
「――――――あのぉ――、」
「なにっ?!」
「そ、そりゃぁ外泊したのは認めるけど、恵美だって、昨日朝早くに家出て言ったじゃないか。なんか人目を避けるようにさ。どこ行こうとしてたんだよ」
て、言っても恵美の行った先はわかって言っている僕は、かなり卑怯な奴だよな。
さっと、恵美の顔色が変わった。
「べ、別に……いいじゃない。結城には関係ないことでしょ」
あっ! また名前で呼んでくれた。なんだかちょっと嬉しい!
下を俯き、何やらごちょごちょと小さな声でぶつぶつと言っているけど、あんまりよく聞こえない。
「で、何かある?」
ああ、今度は開き直ったか?
「別に何もないんだけど、ちょっと気になったから」
「気にしなくていいこと気にしてるのねあんたは!」
あ、今度は「あんた」に戻った。
忙しいなぁ――、もういい加減家に入れてくれてもいいと思うんだけど。
でも動こうとしないよなぁ――、恵美の奴。
それならこっちも開き直るしかないか。
「なぁいい加減家に入れてもらえないかなぁ。ちょっと休みたいんだよ。それに僕がどこでどうしようが恵美には関係ないんだろ。僕の事なんかずっと無視していたんだから」
「うっ! 無視って。ま、まぁ―、否定はしないけど。それはさ、あなたのことを思ってのことなんだったんけど。ああ、なんか気を使って損した気分だわ」
「な、なんだよその気を使って無視していたっていうのは?」
あ、ヤバ。なんかいけないところを突いてしまったのか、また顔を下に向けてぶつぶつ言っている。
「ぶつぶつぶつぶつ――――――――――――――ぶつぶつ」
な、何だよ。頼むよほんとにいったいどうしたっていうんだよ。
その時だった、恵美の後ろから能天気な鼻歌を歌いながら葵さんがやってきた。
「おっ! そこにいるのは外泊高校男子じゃないかぁ! 今帰りなのかい?」
うっ! 葵さぁん! あなたまでそんなこと言うんですかぁ。勘弁してくださいよぉ!
「えっ何? どうしたのこの険悪な雰囲気は? もしかして二人喧嘩していた?」
いやいや、喧嘩て言う訳でもないんだけど……それに近いといえば近いかもしれない。
「はぁん、なるほどそういうことかぁ――」葵さんはニタァーと笑って、僕の方に体を寄せて
「あのさぁ、恵美ちゃん多分昨日の夜から寝ていないんだと思うんだよねぇ。朝から珈琲何倍も飲んでさ、ずっとソワソワしてたんだよ。――――それさぁ―多分君がいなかったからだよ」
そして、さらに僕の顔に口を近づけて彼女は言う。
「まぁ―、大体のことは正樹さんから聞いてるから私はわかるんだけどね」
だったら、助けてくださいよぉ――――!!
葵さぁん!!
おいおい、いきなりなんだよ。
普段何もこっちの事なんか気にもかけていないくせに、たった一晩いなかっただけで、なんだ? なんでそんなにも怒ってんだ恵美は?
分かんねぇ――――。もしかして心配してた?
うっそだぁ――! そんなのありえない。
恵美は僕のこと多分。いや、これは薄々感じていたんだけど、嫌っているよな。
でなければ同じ家にいても今まで会話すらほとんどないっていうのが、おかしい。避けられているていうのは感じていたからこっちも、それに合わせて無理に会話しようなんてしなかったし。
ま、ここは無難なところ。孝義のところにでも泊まっていたって言った方が、丸く収まるんじゃねぇ?
そりゃ、頼斗さんと響音さんの墓参りに行ってたなんて、言えるわけねぇし。
「た、孝義んところに泊ってたんだよ」
ぎろっと、恵美のきつい視線が僕を突き刺す。そして一言。
「嘘だね」
「な、なんで……」
「うふふふ、私をあんまり甘く見ないことだね。孝義君の所には行っていない」
「なんでそう言えるんだよ」
「だって、昨日孝義君と会っているんだもん。横浜駅で。彼、何にも言っていなかったんだもん」
うっ! な、なんでそう言う時に横浜なんかうろついてるんだよ。――――孝義!!
「さぁ――、どうなの? 結城」
ん? 今僕の事結城って呼んだ? いつもていうか、ほとんどないんだけど、呼ばれる時って「あんた」とか「それ!」なんて言う時もあったかな。でも名前で呼ばれたのって、確か……ああ、告った時か。
なぜかあの時恵美は僕の名前を言ってた気がする。
「――――――あのぉ――、」
「なにっ?!」
「そ、そりゃぁ外泊したのは認めるけど、恵美だって、昨日朝早くに家出て言ったじゃないか。なんか人目を避けるようにさ。どこ行こうとしてたんだよ」
て、言っても恵美の行った先はわかって言っている僕は、かなり卑怯な奴だよな。
さっと、恵美の顔色が変わった。
「べ、別に……いいじゃない。結城には関係ないことでしょ」
あっ! また名前で呼んでくれた。なんだかちょっと嬉しい!
下を俯き、何やらごちょごちょと小さな声でぶつぶつと言っているけど、あんまりよく聞こえない。
「で、何かある?」
ああ、今度は開き直ったか?
「別に何もないんだけど、ちょっと気になったから」
「気にしなくていいこと気にしてるのねあんたは!」
あ、今度は「あんた」に戻った。
忙しいなぁ――、もういい加減家に入れてくれてもいいと思うんだけど。
でも動こうとしないよなぁ――、恵美の奴。
それならこっちも開き直るしかないか。
「なぁいい加減家に入れてもらえないかなぁ。ちょっと休みたいんだよ。それに僕がどこでどうしようが恵美には関係ないんだろ。僕の事なんかずっと無視していたんだから」
「うっ! 無視って。ま、まぁ―、否定はしないけど。それはさ、あなたのことを思ってのことなんだったんけど。ああ、なんか気を使って損した気分だわ」
「な、なんだよその気を使って無視していたっていうのは?」
あ、ヤバ。なんかいけないところを突いてしまったのか、また顔を下に向けてぶつぶつ言っている。
「ぶつぶつぶつぶつ――――――――――――――ぶつぶつ」
な、何だよ。頼むよほんとにいったいどうしたっていうんだよ。
その時だった、恵美の後ろから能天気な鼻歌を歌いながら葵さんがやってきた。
「おっ! そこにいるのは外泊高校男子じゃないかぁ! 今帰りなのかい?」
うっ! 葵さぁん! あなたまでそんなこと言うんですかぁ。勘弁してくださいよぉ!
「えっ何? どうしたのこの険悪な雰囲気は? もしかして二人喧嘩していた?」
いやいや、喧嘩て言う訳でもないんだけど……それに近いといえば近いかもしれない。
「はぁん、なるほどそういうことかぁ――」葵さんはニタァーと笑って、僕の方に体を寄せて
「あのさぁ、恵美ちゃん多分昨日の夜から寝ていないんだと思うんだよねぇ。朝から珈琲何倍も飲んでさ、ずっとソワソワしてたんだよ。――――それさぁ―多分君がいなかったからだよ」
そして、さらに僕の顔に口を近づけて彼女は言う。
「まぁ―、大体のことは正樹さんから聞いてるから私はわかるんだけどね」
だったら、助けてくださいよぉ――――!!
葵さぁん!!
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