泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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人間

不老

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私がやったのは眷属認定だ。
これをする事で身体能力は更に向上する。加えて《過剰分泌》を付与した颯太の実を与え、泉に身体を漬ける。

「ハル……俺はどうなったんだ?」
「もう大丈夫よ。」

アインの身体は元通りに治っていた。

厳密には元通りではないのだけど……

「俺は君達に迷惑を掛けてしまって、それなのに助けてくれたのかい?」
「ええ……あなたが生きて償いたいと言ったから」

事実は伝えなくてはならない。

「アイン、あのね……」

私はアインを眷属にした事、出来る限りの治療を施した事によって、人の理から外れてしまった事を説明した。

「……あなたは多分そう簡単には死ねない身体になってしまったわ。軽はずみにこんな事をしてはいけないと分かっているつもりだけど、私もあなたには死んで欲しく無かったの」

アインは私の言う事を静かに聞いていた。

「……なんだ、そんな事か。」

アインは笑顔になる。

「悪魔と契約してしまったくらい言われるのかと思っていたよ」

ある意味では悪魔の契約かもしれないけど。

「これでハルやソータ達と同じ時間を生きられるんだな。嬉しいよ」
「あなた、本当に分かってるの?この先愛する人が出来てもその人と同じ時間を生きられないのよ?それどころか同じ町に長い間住む事もできない。いつまでも老いることのないあなたを見たらみんな気味悪がるに違いないもの」

「何の心配もないさ。俺はこの島のみんなを愛してる。住む所はここでいいじゃないか。ほら、何の問題もない」

陽気に答えるアイン。

「……いずれ後悔する時が来るかも知れない。その時は私を恨んでいいから」
「俺を置いて先に死ぬような事があったら恨むよ」

アインは狂ってしまった人生を受け入れてくれた。
私も彼の家族として出来る限りのことをしようと思う。

その他のニンゲンについて。

エイリークとその護衛はカクカミとメトに散々蹴り転がされてボロボロになっていた。一応生かしておいてくれたけど、彼らを解放すれば戦力を引き連れてこの島に戻ってくるだろう。この島を守る為には始末するしかない。

息も絶え絶えになり、既に声も上げられない二人。このままにしておくのも可哀想か、一思いに楽にしてやろう。

《栄養吸収》で二人を枯らしてしまう。全力で吸い取ったら服だけを残して塵になった。

アインとカナエと颯太を置いて、海岸へと向かった。

海岸には武器を手に持ったニンゲン達が集まっていた。
森に入って来なかったのはヤトが姿を現して警告したからだ。
しかし攻めて来ないだけで、あの小舟を使って次々と上陸してきている。

ヤト達に知能が無いとでも思っているのだろうか?森に入らない、敵対の意思は無いように装って兵力を揃えてきている。

『何と愚かな』
「仕方ないわね。私が話をしてくるわ」

森から出て海岸へと一人で向かう。

「おまえはこの島の者か?ここは我らの領地とする。先に向かったエイリークはどうした?」

私の姿を見て脅威では無いと判断したのだろう。値踏みをするように視線を上下させながら言ってくる。

この者もエイリークと同じか。

「この島をあなた達の好きにはさせないわ」
「ならばどうする?まさかこれだけの人数と戦うつもりか?」

上陸しているニンゲンは五十人程度。それ位なら大したことはない。個体としてはゴブリンよりも強く頭も良いだろう。
しかしあの石でもない限り私達を倒す事は出来ない。

「そうね。全員生きては帰れないわよ」

私の言葉が終わるとほぼ同時に、男の足元が陥没する。現れたのはヤト、男を一飲みにすると勢いよく飛び出して私を護る様に身体を這わせる。

「ば、化け物だー!!」
「怯むなー!かかれー!!」

ヤトの身体の向こう側では悲鳴に近い叫び声が聞こえている。

『ハル様、ご無事ですか?』
「ええ、ありがとうヤト」

頭を近付けて聞いてくるヤト。外側ではカクカミとメトがニンゲンの殲滅を始めた。
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