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新しい時代
衝突
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魔族達が泉を目指してやってくる。
いよいよ戦闘だ。
数は五千、魔法を使い身体能力も高い。
加減などしていられる状況ではないだろう。
私達は高地から降りて森の手前で迎え撃つ事にした。今はその先頭に立っている。
『見えました。正面から来ます。凄い数です』
カクカミが教えてくれる。
平原の遥か向こうから大軍が押し寄せてきていた。歩兵に騎兵、武器を持たない者もいる様だが、彼らは戦闘員ではないのだろうか?
「魔導兵です。魔法を放つ専門の兵科です。ご注意を」
ブランザハーンが教えてくれた。
「もはや我らの言葉では止められませぬ。精霊様、彼らに鉄槌を食らわせてやってください」
「ええ、そのつもりよ」
すまなさそうに言うブランザハーン。
謝る必要はないのよ。これからあなたの同胞を沢山殺す事になるのだから。
彼の息子は妻の亡骸と共に泉に置いてきた。今はエルフのイルがそばについてくれている。
「皆、魔法による全力攻撃を仕掛けます。相手に対して警告も容赦も不要」
『承知』『畏まりました』『分かりました』
カクカミは雷撃を、メトは巨大な火球を、ヤトは大地を裂き、カナエは竜巻を起こして攻撃をする。
なす術もなく吹き飛ばされていく魔族達。
全員の魔法は以前よりも随分と威力が上がっていた。
前衛に配置されていた部隊はほぼ壊滅。陣形が崩れて行軍が停止する。
「これで諦めてくれればいいのだけど……」
颯太は私の隣で呟く。
残念ながら魔族達は帰るつもりはないらしい。
後列に配置されていた魔導兵が集まるとこちらに向けて魔法を放ってくる。
十人近くが集まって一つの魔法を完成させていた。
魔力の塊は私達の手前に着弾、轟音と共に爆風がこちらに迫ってくる。
颯太が風を起こして防いでくれた。
「魔導兵は集団で魔法を使います。今のは拠点攻略用重魔法《アルエクリシス》です」
「連射は効くのかい?」
「いえ、魔導兵の消耗が激しい為、魔力の補給が必要です」
颯太の質問に答えるブランザハーン。
それなら今のうちに攻撃をしてしまおう。
「私達の魔法も威力が下がります」
「なぜ?」
「大気中の魔法物質が減衰しています」
カナエが言うには魔法を発動するには魔法物質が必要で、私達の大出力魔法は物質の消費が激しいらしい。
魔法物質自体は大気の中に潤沢にあるので、他の場所からすぐに集まってくるのでなくなる事は無いそうだ。
「魔法物質は颯太様が生成してくださっています」
「僕が……?」
「世界樹が魔法物質を作っているのね?」
「その通りです」
ならば尚の事、泉を彼らに渡すわけにはいかない。
「魔法物質の補充はどれくらいかかるの?」
「そんなには掛からない筈です。ここは魔法物質が濃いですから」
「ありがとう。皆、次の攻撃準備を」
指示を出しながら相手の様子を伺う。
騎兵部隊がこちらに突撃を掛けて来ている。数はおよそ五百。
「威力の低い魔法ならすぐにでも撃てます」
「ならばそれで迎撃を」
『分かりました』
騎兵達は幾つもの部隊に分かれて突撃してくる。
的を絞らせない気だ。
『我が前に出ます。騎兵はお任せを』
トコヤミが翼を羽ばたかせて飛び立っていく。突撃してくる騎兵に向けて炎を吐き掛けて次々と焼いていく。
別の方向から更に騎兵部隊が飛び出してきた。数は同じくらいか……
『ええい……次から次へと鬱陶しい!』
カクカミが嘶くと雷撃を球体を幾つも放って騎兵を撃っていく。
『俺が前に出ますよ!』
『よせ、メトのデカイ身体があると魔法が撃てん』
メトが前に出ようとするのをヤトが止める。確かに同士討ちになってしまうかもしれない。
援護が出来なくなるのならトコヤミの様に単騎で戦ってもらわなくてはならなくなる。
相手は戦いをよく分かっている。
対する私達は個の力で対抗するしかない。
敵はまだ半数は残っている。厳しい戦いになりそうだ。
いよいよ戦闘だ。
数は五千、魔法を使い身体能力も高い。
加減などしていられる状況ではないだろう。
私達は高地から降りて森の手前で迎え撃つ事にした。今はその先頭に立っている。
『見えました。正面から来ます。凄い数です』
カクカミが教えてくれる。
平原の遥か向こうから大軍が押し寄せてきていた。歩兵に騎兵、武器を持たない者もいる様だが、彼らは戦闘員ではないのだろうか?
「魔導兵です。魔法を放つ専門の兵科です。ご注意を」
ブランザハーンが教えてくれた。
「もはや我らの言葉では止められませぬ。精霊様、彼らに鉄槌を食らわせてやってください」
「ええ、そのつもりよ」
すまなさそうに言うブランザハーン。
謝る必要はないのよ。これからあなたの同胞を沢山殺す事になるのだから。
彼の息子は妻の亡骸と共に泉に置いてきた。今はエルフのイルがそばについてくれている。
「皆、魔法による全力攻撃を仕掛けます。相手に対して警告も容赦も不要」
『承知』『畏まりました』『分かりました』
カクカミは雷撃を、メトは巨大な火球を、ヤトは大地を裂き、カナエは竜巻を起こして攻撃をする。
なす術もなく吹き飛ばされていく魔族達。
全員の魔法は以前よりも随分と威力が上がっていた。
前衛に配置されていた部隊はほぼ壊滅。陣形が崩れて行軍が停止する。
「これで諦めてくれればいいのだけど……」
颯太は私の隣で呟く。
残念ながら魔族達は帰るつもりはないらしい。
後列に配置されていた魔導兵が集まるとこちらに向けて魔法を放ってくる。
十人近くが集まって一つの魔法を完成させていた。
魔力の塊は私達の手前に着弾、轟音と共に爆風がこちらに迫ってくる。
颯太が風を起こして防いでくれた。
「魔導兵は集団で魔法を使います。今のは拠点攻略用重魔法《アルエクリシス》です」
「連射は効くのかい?」
「いえ、魔導兵の消耗が激しい為、魔力の補給が必要です」
颯太の質問に答えるブランザハーン。
それなら今のうちに攻撃をしてしまおう。
「私達の魔法も威力が下がります」
「なぜ?」
「大気中の魔法物質が減衰しています」
カナエが言うには魔法を発動するには魔法物質が必要で、私達の大出力魔法は物質の消費が激しいらしい。
魔法物質自体は大気の中に潤沢にあるので、他の場所からすぐに集まってくるのでなくなる事は無いそうだ。
「魔法物質は颯太様が生成してくださっています」
「僕が……?」
「世界樹が魔法物質を作っているのね?」
「その通りです」
ならば尚の事、泉を彼らに渡すわけにはいかない。
「魔法物質の補充はどれくらいかかるの?」
「そんなには掛からない筈です。ここは魔法物質が濃いですから」
「ありがとう。皆、次の攻撃準備を」
指示を出しながら相手の様子を伺う。
騎兵部隊がこちらに突撃を掛けて来ている。数はおよそ五百。
「威力の低い魔法ならすぐにでも撃てます」
「ならばそれで迎撃を」
『分かりました』
騎兵達は幾つもの部隊に分かれて突撃してくる。
的を絞らせない気だ。
『我が前に出ます。騎兵はお任せを』
トコヤミが翼を羽ばたかせて飛び立っていく。突撃してくる騎兵に向けて炎を吐き掛けて次々と焼いていく。
別の方向から更に騎兵部隊が飛び出してきた。数は同じくらいか……
『ええい……次から次へと鬱陶しい!』
カクカミが嘶くと雷撃を球体を幾つも放って騎兵を撃っていく。
『俺が前に出ますよ!』
『よせ、メトのデカイ身体があると魔法が撃てん』
メトが前に出ようとするのをヤトが止める。確かに同士討ちになってしまうかもしれない。
援護が出来なくなるのならトコヤミの様に単騎で戦ってもらわなくてはならなくなる。
相手は戦いをよく分かっている。
対する私達は個の力で対抗するしかない。
敵はまだ半数は残っている。厳しい戦いになりそうだ。
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