泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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冒険者

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「よ、よし!俺達も行動開始だ!」

ヴァンが声を上げると冒険者達は我に返る。

「カクカミ、メト、お願いね」
『お任せください』
『大暴れしてきます!』

カクカミとメトが丘を越えてマルダに向かって走り出す。
突然現れた巨大生物に驚き混乱する兵士達。
そんな事はお構いなしに丘を駆け下りて突撃するカクカミとメト。

何とか隊列を組み直してカクカミとメトに攻撃を始める。
弓を持つ兵士が矢を射掛けるが普通の矢が効くわけもなく兵士達は体当たり受けて次々と跳ね飛ばされていく。

注意がカクカミ達に向いている間に私達は西門へ向かう。

西門周辺に展開していた部隊もカクカミ達の攻撃に大多数が動員され手薄になっていた。

私達は岩などの影を伝って二百メートル近くまで接近する。

「よし、かかれ!」

ヴァンの合図で全員が岩陰から飛び出して西門目掛けて走る。
私達に気付いたファディア軍の指揮官が弓兵に命じて矢を射掛けてくる。数は二、三十といったところか。

カナエが風の魔法で飛来する矢を吹き飛ばす。

機動力のある『草原の風ステップウインド』が先行して敵軍前衛に斬り込んでいく。

指揮官は弓兵を下げて大盾と槍を持った重装兵を前に出す。その数は二十人程度。

ロディ達は重装兵に斬り込んでいるが、堅い守りに阻まれて陣形を崩す事はできなかった。そのまま左方へと移動し重装兵を迂回しようとしている。
それに併せて重装兵も動き出す。

この動きで正面に僅かに隙間が出来た。

そこに目掛けて『竜の爪ドラゴンファング』のメンバーが突入する。

防御陣の内側に入られ重装兵は後ろを向く。そこに『雷鳴』の剣士達が攻撃を加えて次々と倒していく。

陣形が崩れた事で乱戦になり始めていた。

私達は一番足の遅い『鋼鉄の壁』と共に乱戦の中に飛び込む。

「いいか、互いの死角を庇い合え。仲間の背中を守るんだ」
「はい!」

『鋼鉄の壁』のリーダーがセロに言っている。

乱戦では魔法攻撃は味方に当たる可能性があり危険だ。確実に個人を倒せる方法で仕留めていく。私は敵兵の足元から石の槍を出して串刺しにしていく。

「セロさん背中は任せたよ!」
「分かった!」

芽依とセロは息の合った連携で次々と敵兵を倒していく。

リンは負傷した味方を回復魔法で癒し、ミラは味方を狙っていた弓兵を射抜いて倒している。この乱戦の中でも躊躇わずに矢を放っていた。

ここまでの訓練が全員を成長させているのがよく分かった。

颯太は敵から奪い取った長剣を二本持って迫り来る敵兵を撫で斬りにし、カナエは敵兵を体内から凍結させて確実に一人ずつ倒していた。

こちらに形勢が傾くと西門が開いて中から冒険者達が飛び出してくる。

ファディア軍は挟撃される形となり、全ての兵士を撃破あるいは降伏させる事が出来た。

「ヴァン!まさかお前達が救援に来てくれるとは思わなかったぞ!」

金属の鎧を着て長剣を手にした三十位の黒髪の男がヴァンの所へとやってくる。

「ディーンか!無事で何よりだ。既に見たと思うが、馬鹿デカイ獣は俺達の味方だ。全員に伝えてくれ」

ヴァンは拳を打ち合わせながらディーンにカクカミ達の事を話した。

「あれが味方?つまり従魔という事か?」
「そうだ。海で暴れているのも全てこの子の従魔だ」

そう言って私を見る。

「そうか……それなら何とかなるかも知れんな」
「何があった?」
「東門が突破されて防衛線を街の中央部まで下げた。俺達は住民を西門から逃す為に戦力をこちらに集めていたんだ」

少し遅かったか。

「海の戦力は直ぐに制圧できるだろう。上陸している敵兵の排除だが、街の外は従魔に任せて大丈夫だ」
「それなら俺達も脱出する住民の護衛と街に入り込んだ敵兵の排除の二手に分かれよう」

そう言ってディーンは何人かを呼んで護衛の指示を出している。

《遠隔視野》で確認すると、カクカミとメトは既に東側まで到達しており、河口付近に停泊している船を魔法で攻撃しているところだった。

「カクカミ!」

私が大声で呼ぶと聞こえたらしく、元来た道を戻るようにこちらに走ってきた。

『お呼びですか?』
「今から街を出る住民がいるから護衛をお願い」
『仰せのままに』

マルダの冒険者のパーティが三組と、カクカミが脱出する人々の護衛に着くことになった。
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