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冒険者
落日
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ヴァンパイアソーンは完全に枯れた。
もう根も動いていない。
「お、のれ……」
ロザリアは無数の根に貫かれ生命力を大量に奪われて瀕死だった。
私が生命力を吸収した事で、根から血液を大量に吸い上げられていた彼女にも凄まじい負荷がかかっていたのだろう。
美しかった顔は既に面影もなく、老婆の様になっていた。
「ミルドソールの復活を……再びヴァンパイアの楽園を……そして、ルドガイアに抗うだけの力を……」
「あなたはやり方を間違えたのよ」
「私達が強くなるためには、どうしても人の血が必要だったのです……」
その考え方が既に間違っているのよ。
ルドガイアと戦う前に他に敵を作ってどうするのよ。
「もう眠りなさい」
私の水を使えば助ける事は出来るが、これだけの事をしたのだから街の者に処刑されるだけだ。
私は彼女の顔に手を当てて《栄養吸収》を使う。
ロザリアは全ての生命力を吸い上げられて塵と消えた。
彼女の衣服と共に指輪を回収して皆の所へ戻る。
「終わったね、お母さん」
「ええ。みんなの怪我を治すわね」
泉の水を出して全員に振りかける。
「おい、さっきの奴はヴァンパイアだろ?」
バルドルがこちらにやって来た。
「そうです。これが犯人の衣類と吸血に使われていた指輪です」
バルドルに手渡す。
「そうか……!よくやったな!」
そう言って私の頭を撫で始めるバルドル。
お使いをしてきた子供を褒める様な感じだ。
「私だけを褒めないで。みんなでここまで来たのだから」
「おお、そうだったな!」
「頭は撫でなくていいので報酬を上乗せしてくださいね?」
「勿論だ。お前達はこの街を救ったんだからな」
そう言いながらも撫でるのをやめないバルドル。
まあ別に、減るものでもないしいいのだけど……そろそろやめてもらえないかしら?
「ところでそちらのお嬢さん方は何者だ?」
「彼女達は、私達が止まっている宿屋の店主とその友人です」
私は彼女達がヴァンパイアであるとは言わなかった。
二人も私の言う事に一瞬戸惑いを見せたが、余計な事は言わずに頷いていた。
「そうだったのか。無事に助け出せて良かったな!」
「バルドルさん」
「なんだ?」
「そろそろやめてもらえますか?」
「ああ、すまんすまん」
ようやく頭から手を離してくれた。
「お母さん、いっぱい撫でてもらって良かったね」
「……そうね」
芽依は屈託のない笑顔を向けて言ってくる。
少し疲れたわ。
私とジェイドでバルドルにこれまでの経緯を説明していく。
ジェイドもラティーシアとイシュリアがヴァンパイアである事は言わないでおいてくれた。
一通り説明を終えて地上に出ると、処刑場には沢山の冒険者がいた。
その中には一緒に商隊護衛をやった者達もいた。
ヴァンパイアソーンが暴走した時、地上に根が出てきていたらしく、彼らはその掃討を担当してくれていたらしい。
大きな怪我をした人はいなかったが、全員に泉の水を掛けて回復して礼を言うと宿に帰る事にした。
帰り道でジェイドに聞く。
「何故ラティーシアさんとイシュリアさんがヴァンパイアだと言わなかったのですか?」
「街に悪さしようとしているヴァンパイアは倒したし、ラティーシアはこの街で静かに宿屋を経営しているだけなんだろ?なら彼女達を吊し上げる必要はないさ」
「ありがとうございます」
ラティーシアがジェイドに礼を言う。
「い、いや!気にしないでくれ。君みたいな子がヴァンパイアってだけで殺されるのは嫌だからな。その代わり今度君の店に行くからご馳走してくれよ」
「分かりました。いつでもお越しください」
ジェイドは顔を赤らめている。
ラティーシアみたいな子が好みなのね。
「私はそろそろ消えようと思います」
「いいえ、暫くはラティーシアさんと一緒にいてください。別行動は良くないわ」
立ち去ろうとするイシュリアを引き止める。彼女はラティーシアの側に居るべきだと私は思う。
もう根も動いていない。
「お、のれ……」
ロザリアは無数の根に貫かれ生命力を大量に奪われて瀕死だった。
私が生命力を吸収した事で、根から血液を大量に吸い上げられていた彼女にも凄まじい負荷がかかっていたのだろう。
美しかった顔は既に面影もなく、老婆の様になっていた。
「ミルドソールの復活を……再びヴァンパイアの楽園を……そして、ルドガイアに抗うだけの力を……」
「あなたはやり方を間違えたのよ」
「私達が強くなるためには、どうしても人の血が必要だったのです……」
その考え方が既に間違っているのよ。
ルドガイアと戦う前に他に敵を作ってどうするのよ。
「もう眠りなさい」
私の水を使えば助ける事は出来るが、これだけの事をしたのだから街の者に処刑されるだけだ。
私は彼女の顔に手を当てて《栄養吸収》を使う。
ロザリアは全ての生命力を吸い上げられて塵と消えた。
彼女の衣服と共に指輪を回収して皆の所へ戻る。
「終わったね、お母さん」
「ええ。みんなの怪我を治すわね」
泉の水を出して全員に振りかける。
「おい、さっきの奴はヴァンパイアだろ?」
バルドルがこちらにやって来た。
「そうです。これが犯人の衣類と吸血に使われていた指輪です」
バルドルに手渡す。
「そうか……!よくやったな!」
そう言って私の頭を撫で始めるバルドル。
お使いをしてきた子供を褒める様な感じだ。
「私だけを褒めないで。みんなでここまで来たのだから」
「おお、そうだったな!」
「頭は撫でなくていいので報酬を上乗せしてくださいね?」
「勿論だ。お前達はこの街を救ったんだからな」
そう言いながらも撫でるのをやめないバルドル。
まあ別に、減るものでもないしいいのだけど……そろそろやめてもらえないかしら?
「ところでそちらのお嬢さん方は何者だ?」
「彼女達は、私達が止まっている宿屋の店主とその友人です」
私は彼女達がヴァンパイアであるとは言わなかった。
二人も私の言う事に一瞬戸惑いを見せたが、余計な事は言わずに頷いていた。
「そうだったのか。無事に助け出せて良かったな!」
「バルドルさん」
「なんだ?」
「そろそろやめてもらえますか?」
「ああ、すまんすまん」
ようやく頭から手を離してくれた。
「お母さん、いっぱい撫でてもらって良かったね」
「……そうね」
芽依は屈託のない笑顔を向けて言ってくる。
少し疲れたわ。
私とジェイドでバルドルにこれまでの経緯を説明していく。
ジェイドもラティーシアとイシュリアがヴァンパイアである事は言わないでおいてくれた。
一通り説明を終えて地上に出ると、処刑場には沢山の冒険者がいた。
その中には一緒に商隊護衛をやった者達もいた。
ヴァンパイアソーンが暴走した時、地上に根が出てきていたらしく、彼らはその掃討を担当してくれていたらしい。
大きな怪我をした人はいなかったが、全員に泉の水を掛けて回復して礼を言うと宿に帰る事にした。
帰り道でジェイドに聞く。
「何故ラティーシアさんとイシュリアさんがヴァンパイアだと言わなかったのですか?」
「街に悪さしようとしているヴァンパイアは倒したし、ラティーシアはこの街で静かに宿屋を経営しているだけなんだろ?なら彼女達を吊し上げる必要はないさ」
「ありがとうございます」
ラティーシアがジェイドに礼を言う。
「い、いや!気にしないでくれ。君みたいな子がヴァンパイアってだけで殺されるのは嫌だからな。その代わり今度君の店に行くからご馳走してくれよ」
「分かりました。いつでもお越しください」
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ラティーシアみたいな子が好みなのね。
「私はそろそろ消えようと思います」
「いいえ、暫くはラティーシアさんと一緒にいてください。別行動は良くないわ」
立ち去ろうとするイシュリアを引き止める。彼女はラティーシアの側に居るべきだと私は思う。
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