泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

大地の女神

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「ここの部屋には何があるのかしら?」
「……あらゆる種族と話すことの出来る様になるサークレットがある説明用のゴーレムがいるが、あれと戦闘する必要はない」
「それは戦うと貴方達にとって不都合な事が起こるの?」
「違う。これ以上無闇に同胞を破壊されたくないだけだ」

どうやら本当の様ね。

「分かりました。破壊はしません」
「本当だろうな?」
「気が変わらなければね」

揶揄い半分に言ってみたら黙ってしまった。

部屋に入ると扉は閉められ、中央にはサークレット……頭に着ける金属製の輪を持った全身鎧が立っていた。

「ようこそ聖剣の主人よ。こちらはあらゆる種族と会話する事が出来る冠です。どうぞお納めください」

サークレットというのは冠の一種なのね。私には緊箍児きんこじに見えてしまったけど、デザインも格好良くてセロが身に着けても違和感はない。

「何だか俺だけ装備を貰ってしまって申し訳ないよ。これって違う人が着けたらいけないのかな?」
「聖剣の主人意外は身に着ける事は許されません」

どうやら専用装備らしい。

「私もお母さんもそのサークレットが無くても話は出来るからいらないよね」
「そうね」
「ハル達は凄いんだな」

ジェイドが驚いていた。

「ところで、この辺りにマイファメイアがいたりするのかしら?」
「し、知らん……!」

頭の様子からして、この付近から行けるみたいだ。
取り敢えずこのフロアの壁を調べてみる。

「やめよ!」

慌てて声を上げる頭。
いよいよこの部屋が怪しい。

「ハルさん、何をしているの?」
「多分この部屋に隠し通路があると思うのだけど」
「手伝うよ」

リンとミラも一緒になって探してくれる。芽依とセロとジェイドも加わってくれた。

「やめろ……やめてくれ……」

泣きそうな声で呻く頭。

「ん?ここが怪しいな」

ジェイドが壁を叩きながら言う。
私も側で叩く音を聞いてみたがこの先は空洞の様だ。

「開けられるかしら?」
「スイッチがあるかもしれないが、探してみるか」

ジェイドが暫く探してくれたがそれらしい物は見当たらなかった。

魔力を探ってみると隠し扉付近に魔力の集まっている場所がある。

ここに魔力を流してみたらどうだろうか?

手をかざして魔力を集中させてみる。

プシューと空気の抜ける音がして壁が少し奥側にずれて横に動いていく。
どうやら当たりだった様だ。

「開いた!」

芽依が中を覗き込んでいる。

奥へと続く細い通路が伸びていて、足元と天井から淡い光が灯っていた。

「行ってみるか?」
「駄目だ駄目だ駄目だ!この先は入ってはいかん!!」

ジェイドが通路を見ながら聞いてくる。
頭は慌てて叫んでいた。
この慌て様、この先にマイファメイアがいるのだろう。

「行きましょう。会って一言文句を言わなくちゃ気が済まないわ」

一列隊形で奥へと進む。

真っ直ぐ伸びた通路を少し進むと広い空間に出た。

「何だここは……?」

ジェイドが見上げながら呟く。

ここは地下の筈なのに空が広がっていた。
地面は柔らかな土で草原が広がっていた。

「幻じゃないのか……?」

セロは足元の草に触れながら言っている。

「緑の匂いに風の匂い……これ本物だよ!」

芽依は周りを見渡しながら言う。

「いえ、一部は本物ですが幻覚魔法の一種だと思います」

エレは遠くを見ながら指差す。
そちらを見ると遠くに見える木々が一定間隔で同じ様に揺らめいていた。

『まさかここを見つけてしまうとは』

何処からともなく女性の声が聞こえてくる。
いつの間にか正面にマイファメイアの石像が立っていた。

「あなたがマイファメイアですか?」
『如何にも。私は大地の女神マイファメイア。よくぞここまで来ましたね。何を求めてここに来たのですか?』
「一言苦情を言いに来ました。今すぐ姿を現しなさい」
『……は?』
「は?じゃありません。セロ以外の仲間を殺す様な罠を仕掛けて、何のつもりですか?出てきて説明しなさい」
『え、いや……その「早く出てきなさい!」

光線魔法で石像を破壊する。

『あわわわ……!?よさぬか無礼者!』
「先に礼を欠いたのはそちらですよ!早く出てきなさい!」

空に向かって叫ぶ。

『わ、分かりました……直ぐに参ります』

どうやら素直に姿を見せてくれる様だ。
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