泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

魔物と人間

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私達は急いだ。
金属のぶつかる音、これは武器を打ち合わせる音だろう。
つまり人か、人の様に武器を使うことの出来る者がこの先で戦っているのだ。

状況を見て加勢しようと打ち合わせた。

木を避け藪を飛び越えると少し開けた所に出る。
そこにいたのは二人の村人を守る様にしながら戦う六人の冒険者達。戦っている相手は蛇…いや、蜥蜴の頭をした人型だが様子がおかしい。恐らくゾンビ化しているのだろう。それにしても数が多い。
動いている個体だけでも二、三十はいる。

『おい人間!早く逃げろ!』

その中に肉厚の曲刀を振り回してゾンビになった同胞を斬り倒している者が一人。

「リザードマンですね。竜族とは違う者で、どちらかというと蜥蜴です」

エレが種族について教えてくれた。
そのリザードマンが人間達を庇って戦っている。
しかし冒険者達は一人で大立ち回りをするリザードマンに対しても警戒していて身動きが取れないでいた。

「何がどうなってるんだ?」

困惑するセロ。

「言葉が通じないから彼の意図が分からないみたいね。とにかく加勢しましょう」
「そうだね」「分かった!」「いきます!」

セロ、芽依、エレが飛び出して行く。

「ねえ!リザードマンの人!あの人達を守ってくれているんでしょ?一緒に戦うよ!」

芽依がゾンビ化したリザードマンを斬り捨てながら声を掛ける。

『おお!言葉が分かるのか!助太刀感謝するぞ!』

リザードマンは大きな声で芽依に返事をすると、背中を預ける様にして戦い始めた。

「俺達はセイラン所属の冒険者です。援護します」
「ありがとう!助かる!」

人間側にはセロが話をしてくれていた。

エレは中央に陣取って大剣を振り回して次々とゾンビリザードマンを解体していく。

マイは地面から石の槍を突き出して敵を串刺しにして動きを止め、リンはミラが引き絞る矢に祝福をかける。それをミラが放ちゾンビリザードマンに命中させると倒れて動かなくなる。

私は地面から水を吹き出して、それを刃の様に横薙ぎに振るい胴体を引き裂いて倒していった。

私達が介入して十分もしない内に全てを倒す事が出来た。

最後にマイが祈りを捧げて浄化してくれる。

「危ない所をありがとう。お陰で村人を守る事が出来たよ」

パーティリーダーと思しき少年が礼を言ってくる。

「探索の途中で偶然見つけたんだ。間に合って良かった」

セロはそう言いながら自己紹介をして握手を交わしていた。

「どこに行くの?」

芽依は立ち去ろうとするリザードマンを引き留めていた。

『いや、俺は人間とは仲良く出来ないだろ。仲間がゾンビになって襲ってしまった訳だし』
「襲いたくて襲った訳じゃないんでしょ?人間を守ってくれたんだから堂々としてていいんだよ。私が通訳するから安心して」

リザードマンの手を引いてこちらにやって来た。

「このリザードマンさんは皆さんを逃がそうとしてくれてたんだよ」
「そ、そうなのか……君は彼の言葉が分かるのかい?」

警戒している冒険者達。リーダーが芽依聞くと芽依はニコリと笑って頷いた。

「それなら彼にお礼を言ってもらえるかな。助けてくれてありがとうと」
「分かった」

芽依は早速リザードマンに説明している。

『いや、こちらこそ同胞が迷惑を掛けてしまった。申し訳なく思っている』

芽依が通訳すると冒険者達は緊張を解いて「ゾンビとはいえ仲間を斬るのは辛かったろう」とリザードマンを労っている。

彼らはセロ達と年齢も変わらないせいか、考え方が柔軟の様だ。全員武器を納めてリザードマンと握手を交わしていた。

「そういえばあなた名前は?私は泉の精霊のハルよ」
『ハル……!?あの泉の精霊のハル様ですか!!』

何やら彼は私の事を知っている様だ。

『申し遅れました。俺はリザードマンの戦士ギルと言います。お会いできて光栄です』

そう言って両膝を着いて頭を下げていた。
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