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勇者
戦況分析
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ギルと会った経緯と彼らに起こった事を仲間の冒険者達に説明する。
「厄介だな。森に魔物が少ないのは既にそいつに狩られてしまったからか……」
「そいつがこっちに来たらどうするよ?俺達だけで防げるのか?」
「やるしかねえだろ。それにこっちにはハル達がいる」
「そうだな。遭う前から尻込みしていても仕方ない。俺達は出来る事をするだけだ」
混乱するかと思ったが、冒険者達はそれぞれで話し合い結論を出した様だ。
こちらの士気は高い。ジェイドが的確な指示をしているのも大きいだろう。
「俺が何か言う必要は無さそうだな。俺達がやる事は村に魔物が入らない様に撃破する事だ。それがどんな奴でも変わらない。全力で任務を全うしろ」
「おう!」
ジェイドが取り纏めてくれてそれぞれが散っていく。
「セロ達が偵察に出ている間に配置を決めておいた。明日には騎士団が森に入って魔物の掃討が始まるが、そのデカイ狼に出会したら騎士団は大丈夫だろうか?」
「騎士団の実力が分からないから何とも言えないけど、容易に全滅する様な事はないと思うわ」
彼らも集団戦のプロだ。そうなる前に後退して立て直すだろう。
「そうだな。俺達が心配する事じゃないか。みんなご苦労だった、明日まで見張りのシフトは外してあるから体を休めてくれ」
ジェイドに労われて私達は休息を取る事に。
『俺、ここにいていいのか?』
「うん。大丈夫だよ」
ギルが不安そうに芽依に聞いていた。
「仲間の事が心配だろうけど、今はここで体を休めなさい。休息も大事よ」
「はい……」
私が言うとギルは大人しく従う。
泉の水を飲ませてダメージと肉体的疲労は回復させた。
だが仲間を失った悲しみを癒やしてあげる事はできない。彼は暫くその苦しみに悩まされる事になるだろう。
焦りや怒りもある筈だ。そんな時は自分の限界も分からず走り続けてしまうものだ。
今は一度立ち止まって落ち着くべきなのだ。
「皆さん、ご飯あるそうですよ!」
エレが元気に走ってきた。
「いただきましょう。さあ、ギルも」
『俺もいいんですか?』
「当たり前でしょう。でも私達の食事が口に合うかしら?」
『大丈夫だと思います。そう大して違うものを食べているわけではありませんから』
リザードマンは人間の様に手の込んだ料理を作る事は無く、火に通した食べ物をあまり口にしないそうだ。
渡されたスープを恐る恐る飲んでいるが『うまい!』と言って喜んでいた。
休憩の時間に北のはずれにいる騎士隊の所に私と芽依とエレの三人で行く。
私一人でいいと言ったのだが二人は「一緒に行く」と言って聞かなかった。
「君は……!何か用か……?」
若い騎士が私を見付けて聞いてくる。その目からは恐怖が感じられた。
「隊長代理に聞きたい事あって来ました。会えますか?」
「わ、分かった」
若い騎士はすぐにジェレルの所に案内してくれた。
「泉の精霊殿じゃあないか。こんな所に何用ですかな?」
「王国騎士団について聞きたい事があるの」
彼らなら騎士団の実力をよく理解しているだろう。私は森にいる巨大な狼の事を話して騎士団がどう戦うかを聞いてみた。
「この掃討戦は武名を上げる為のチャンスだからな。何奴も手柄を立てる為に必死だ。それこそ連携よりも仲間の命よりもな」
「それでどうなると思う?」
ジェレルは顎に手を当ててニヤリと口角を吊り上げる。
「良くて半壊。下手すりゃあ何隊かは丸ごと食われちまうだろうなぁ」
今回出陣している騎士団は三つ。二百人近くが森に展開しているそうだが、互いをライバル視していて足の引っ張り合いをしている。
ここにいる隊もその足の引っ張り合いに巻き込まれて、手柄も上げられないこんな所に配置されているのだ。
「ある意味で俺達はツイてるのかもなあ。これから起こる惨劇を遠くで見ていられる訳だから」
ジェレルはそう言って笑っていた。
「厄介だな。森に魔物が少ないのは既にそいつに狩られてしまったからか……」
「そいつがこっちに来たらどうするよ?俺達だけで防げるのか?」
「やるしかねえだろ。それにこっちにはハル達がいる」
「そうだな。遭う前から尻込みしていても仕方ない。俺達は出来る事をするだけだ」
混乱するかと思ったが、冒険者達はそれぞれで話し合い結論を出した様だ。
こちらの士気は高い。ジェイドが的確な指示をしているのも大きいだろう。
「俺が何か言う必要は無さそうだな。俺達がやる事は村に魔物が入らない様に撃破する事だ。それがどんな奴でも変わらない。全力で任務を全うしろ」
「おう!」
ジェイドが取り纏めてくれてそれぞれが散っていく。
「セロ達が偵察に出ている間に配置を決めておいた。明日には騎士団が森に入って魔物の掃討が始まるが、そのデカイ狼に出会したら騎士団は大丈夫だろうか?」
「騎士団の実力が分からないから何とも言えないけど、容易に全滅する様な事はないと思うわ」
彼らも集団戦のプロだ。そうなる前に後退して立て直すだろう。
「そうだな。俺達が心配する事じゃないか。みんなご苦労だった、明日まで見張りのシフトは外してあるから体を休めてくれ」
ジェイドに労われて私達は休息を取る事に。
『俺、ここにいていいのか?』
「うん。大丈夫だよ」
ギルが不安そうに芽依に聞いていた。
「仲間の事が心配だろうけど、今はここで体を休めなさい。休息も大事よ」
「はい……」
私が言うとギルは大人しく従う。
泉の水を飲ませてダメージと肉体的疲労は回復させた。
だが仲間を失った悲しみを癒やしてあげる事はできない。彼は暫くその苦しみに悩まされる事になるだろう。
焦りや怒りもある筈だ。そんな時は自分の限界も分からず走り続けてしまうものだ。
今は一度立ち止まって落ち着くべきなのだ。
「皆さん、ご飯あるそうですよ!」
エレが元気に走ってきた。
「いただきましょう。さあ、ギルも」
『俺もいいんですか?』
「当たり前でしょう。でも私達の食事が口に合うかしら?」
『大丈夫だと思います。そう大して違うものを食べているわけではありませんから』
リザードマンは人間の様に手の込んだ料理を作る事は無く、火に通した食べ物をあまり口にしないそうだ。
渡されたスープを恐る恐る飲んでいるが『うまい!』と言って喜んでいた。
休憩の時間に北のはずれにいる騎士隊の所に私と芽依とエレの三人で行く。
私一人でいいと言ったのだが二人は「一緒に行く」と言って聞かなかった。
「君は……!何か用か……?」
若い騎士が私を見付けて聞いてくる。その目からは恐怖が感じられた。
「隊長代理に聞きたい事あって来ました。会えますか?」
「わ、分かった」
若い騎士はすぐにジェレルの所に案内してくれた。
「泉の精霊殿じゃあないか。こんな所に何用ですかな?」
「王国騎士団について聞きたい事があるの」
彼らなら騎士団の実力をよく理解しているだろう。私は森にいる巨大な狼の事を話して騎士団がどう戦うかを聞いてみた。
「この掃討戦は武名を上げる為のチャンスだからな。何奴も手柄を立てる為に必死だ。それこそ連携よりも仲間の命よりもな」
「それでどうなると思う?」
ジェレルは顎に手を当ててニヤリと口角を吊り上げる。
「良くて半壊。下手すりゃあ何隊かは丸ごと食われちまうだろうなぁ」
今回出陣している騎士団は三つ。二百人近くが森に展開しているそうだが、互いをライバル視していて足の引っ張り合いをしている。
ここにいる隊もその足の引っ張り合いに巻き込まれて、手柄も上げられないこんな所に配置されているのだ。
「ある意味で俺達はツイてるのかもなあ。これから起こる惨劇を遠くで見ていられる訳だから」
ジェレルはそう言って笑っていた。
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