泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

査問後

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全て無事に終えることができた。
私達も帰るとしよう。

城の廊下を歩いていると向かう先に居たのはギルバート王子。
二人の王子と同じで金髪に整った顔立ち。二人よりは背が高く体つきもかなり良く戦闘が得意なのは一目で分かる。

こちらを見て笑顔を向けてきた。どうやら私達を待っていた様だ。

「初めまして。私は泉の精霊のハルです。先程はマカミを擁護してくださりありがとうございました」
「第一王子のギルバートだ。初めまして泉の精霊様」
「何かご用ですか?」
「あなたのご息女にね」

そう言って芽依の前に進み出るギルバート。

「何ですか?」

芽依は明らかに警戒していた。
査問会の時にギルバートに向かって威嚇する様な事を言っていたが、それが原因で何か言いに来たのだろうか?

「あなたは美しい。私が出会ったどんな女性よりも」
「……は?え?」
「私はあなたに恋をしてしまった」

あらあら……ロイドが言っていた事が現実になっているわね。しかしまさかギルバートに見染められるとは。
芽依は何て答えるのかしら。

「な、何を言ってるの?第一今日初めて会ってそんな事……」

面と向かってそんな事を言われたのは初めてなのかしら。

「恋とはそう言うものなのです」
「分からない!そんなの分からないよ!」

更に芽依に近付くギルバート。芽依は狼狽えていて半歩後ろに下がった。

そろそろ助けてあげようかしらね。

「私は本気だ。あなたさえいれば何もいらない」
「何言ってるの……?頭どうかしたんじゃない?」

助けを求める様に私の方を見る芽依。
本当に困っているのね。

私が芽依とギルバートの間に入ろうとした瞬間、ギルバートは芽依に更に迫っていた。

「あっ……」

リンが声を上げた時にはギルバートは芽依を抱き寄せて唇を奪っていた。

「まあっ……」
「メイおねーちゃんチューしてるです」

芽依は驚いて固まっていたが、マイの言葉で我に返りギルバートの腕の中から逃れようと暴れる。

「私の気持ちは分かってもらえただろうか?」
「や、やだっ!離してよ!」

取り乱して暴れる芽依。格闘術を使えば簡単に振り解けるだろうけどそれどころではないみたいね。

何とか振り解いて芽依はギルバートの頬を打つ。
乾いた音が廊下に響いた。

口元を手で押さえて後退る芽依は涙目になっていた。

「殿下に何をするか!」
「無礼者め!」

ギルバートの頬を叩いた瞬間を見た近くの兵士達が声を上げて走ってくる。

「無礼者はそちらです。芽依に謝りなさい!」

私が前に立ち兵士を制してギルバートを叱りつける。

「すみません……愛おしくなってしまいつい……」

申し訳なさそうにしているギルバート。
何か考えがあってやった訳ではない様だ。
どうやらエリオットともフランシスとも違うタイプの男みたいね。

分析している場合じゃないわ。
芽依のところに行くと、私に抱きついてくる。

「お、お母さん……」
「大丈夫よ。さあ芽依、帰りましょう」

子供の様に泣きじゃくる芽依の頭を撫でてゆっくりと歩き出す。
行手を阻む様な形になっていたギルバートと兵士達は私が睨むと慌てて道を空ける。

何か声を掛けようとするギルバートだが芽依の様子を見て躊躇い声を掛けて来なかった。

城を出るとエリオットが馬車の前で待っていた。

「どうかしたのですか?」

芽依の様子を見て驚くエリオット。

「馬車の中で話すわ」
「分かりました。さあ、どうぞ」

扉を開けてくれたので乗り込む。

馬車が走り出した所で廊下での出来事を簡単に話す。

「……そうでしたか。兄が失礼致しました」
「あなたが謝らなくていいわ」

しかしまさか芽依がキスをされたくらいでこんなになるなんて思わなかったわ。

実年齢で十二歳なのだからそれくらいしているのかと思っていた。

「ところで……そちらは本当にメイさんなんですね?」
「ええ、そうよ」

ラムドの私室で話した時に驚かなかったのは芽依だと思っていなかったからか。
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