泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

高価な装備

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何となく作った鎧は芽依のサイズにピッタリだった。
いつも一緒にいるし、何となく分かってしまった可能性も無くはないのでセロの鎧を作ってみたい。

しかしセロに止められてしまった。

「泉の水から生成できるから費用は一切かかりませんよ」
「そういう問題じゃないです……俺達がオリハルコン装備なんて早過ぎると思います」
「そうかしら?セロさんはもう随分と実力も付いてきたし、そろそろ良い装備に変えて良いと思うのだけど」

セロは頭を抱えてしまった。

「どうしたのー?」

少し眠たそうにやって来たのはリン。その後ろにはミラもいた。

私が事情を説明するとリンは笑い出した。

「セロがオリハルコン装備なんてして街中を歩いてたら本人ごと盗まれそう」
「俺はそこまで間抜けじゃないぞ」

リンに抗議するセロ。

「でも私達だったら襲われそうですよね。人気のない所で追い剥ぎに遭いそうです」

ミラもそう言って苦笑していた。

「では見た目がオリハルコンだと分からなければ良いですか?」
「《ディテクト》を誤魔化せれば良いのですが……」

ミラが言う《ディテクト》とは物や人を調べる魔法だ。使える者はそう多くないが、魔法で調べられてしまうと表面上を偽装しても気付かれてしまうだろう。

「どうしたらいいのかしら」
「私達に実力がつくまでは保留にしませんか?」
「えー、私この鎧使いたいよー」

不満なのは芽依だ。

「メイさんはその鎧に見合った強さが十分にあるからいいんじゃないか?」
「私だけ良い装備なのは何か嫌だよ」
「じゃあ芽依の装備も私が預かっておくわ」
「えー……」

ガッカリする芽依。

「外套を着ればある程度目立たなく出来るんじゃない?メイちゃんはその鎧着てていいよ」

リンはそう言うけど芽依はまだ不満そうだ。

「良い装備を断るなんて贅沢な悩みですね。ハルさん達に出会う前の私達は『いつかオリハルコン装備でドラゴン退治するんだ』って言っていたのに」

ミラは笑いながらそう言っていた。セロとリンも昔を思い出したのだろう、二人とも笑っている。

「そうだな。俺達は贅沢な事を言っているな。ハルさん、やっぱり俺達の装備を作ってもらえますか?」
「ええ。すぐに作るわ」

彼らの中で何かが吹っ切れたのだろう。
装備を作る事を了承してくれた。

早速セロの鎧を作ってみる。
彼の体格については見た感じでしか分からないがそれでも作成できるだろうか?

水を作り出してから作成開始。

……出来たわ。

「着てみてください」
「はい」

サイズはピッタリだった。

「凄い……なんて軽さだ!」

飛んだら跳ねたりしながら動きやすさを確認するセロ。

イメージといってもかなり雑で良いみたいだ。ミラにもオリハルコン製の胸当てを、リンはオリハルコンを繊維状にしてローブに編み込んだものを渡す。

「凄い凄い!」

子供の様にはしゃぐリンとミラ。

ミラの物もそうだが、リンのローブは私が思いつきで使ったものだ。間違いなくオリジナル、それもサイズを彼女達に合わせている。この世界にあるものを勝手に真似ている訳ではないだろうから一目で貴重なものだとは分からないだろう。

ミラの言った様に《ディテクト》の魔法を使われたら直ぐに分かってしまうのだが。

「この装備に見合った力を付けよう!」
「そうだね。ここに滞在している間に少しでも強くならなくちゃ」
「そうですね。私も頑張ります」

三人はここで修練を積んでいくのだと張り切っていた。

休暇に来たのだけど……私が焚き付けたみたいになってしまったわね。

「それはそうとお母さん」
「何かしら?」
「お母さんこそ気を付けてよ?こんな凄いものが作れるなんて知られたら拐われちゃうよ?勿論私が護るけど」
「そうね。なるべく人前では使わないようにするわね」

無用なトラブルを引き寄せる可能性があるのは私の方だった。
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