泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

神に説教

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夕食をとり終えて皆が眠りにつく。
芽依はワダツミと仲良くなり、一緒のベッドで眠っていた。

精霊は寝なくても良いと思うけど、これもコミュニケーションよね。

私は畔で物思いに耽る。

このタイミングでワダツミが現れたのは何故だろう?
今まで私と颯太以外の精霊を見た事がなかった。これは良い方向に向かっているのだろうか?

この世界はかつて精霊すらエネルギーに変えて滅びの道へと突き進んだのだとシグルーンは教えてくれた。
この時代の者達が同じ考えに至らないとは限らない。私達精霊はそれを忘れぬ様にしておこう。

『ハル様!』

やって来たのはマカミだ。
私を包み込む様に丸くなって夜の冷え込みから私を守ってくれる。

「マカミ、森に変わったところはない?」
『そうですね。森の各地に不思議な光がありますね』

ワダツミと同じ精霊だろう。
この世界で精霊の再生が始まったという事かしらね。

喜ばしい事だわ。

「ハル様。主神様が呼んでいます」

小屋からマイが出てきて告げてきた。

「ありがとうマイ。でも、どうすれば会えるのかしら?」
「眠れば会えるですよ」

マイはそう言って私の前にスッポリと収まる。

「私も一緒にいくです」
「そう。ありがとう」

そうだ、この子の事も聞いておきたい。

マイの頭を軽く撫でてから目を閉じる。気付けば例の白い空間に移動していた。

目の前にはアルシファーナ。隣にはマイがいた。

「やあやあハルさん。水の精霊に会えたみたいだね」

ニコニコ笑顔を向けながら言ってくるアルシファーナ。

「ええ。精霊が現れる様になったのは何故かしら?」
「一応ハルさんへのご褒美のつもりだったんだけど、気に入らなかった?」
「いいえ、精霊が復活した事は嬉しいわ。ただ突然だったから何かの異変かと思って」
「そっか。前にあった時に教えてあげられればよかったね」

アルシファーナはそう言って申し訳なさそうにしている。

「それで一つお願いがあるんだよ。生まれ始めた精霊達は何もわからないからハルさんが導いてあげてほしいんだ」
「それは構わないけど、私一人で出来ることなんてそんなに多くはないわよ」
「大丈夫。精霊が生まれるのは大森林の泉に近いエリアだけだから」

それならすぐに見つけてあげられそうね。

「この前聞きそびれた事を聞かせてもらいたいのだけど」
「何かな?」
「この子、マイファメイアについてなのだけど」
「マイちゃんがどうしたの?」
「あなたと同じ神様でしょう?この子は自分の力を全て剣に注いで主が来るのをずっと待っていました。あまりにも酷いと思いませんか?」
「ま、まあまあ……落ち着いてハルさん」

笑顔を引き攣らせながらたじろぐアルシファーナ。

「マイは剣の主人を育てる為に同行している者を殺害する様な仕掛けを用意していました。これを命じたのはあなたでしょう?何故?」
「えーと……その方が力を発揮できるかなって」
「あなたに人の心は無いの?」
「ボク神様なんで」
「神はもっと慈悲深くあるべきです!」
「はい……ごめんなさい」

素直に謝るアルシファーナ。

「ハル様、主神様を責めないでください」
「マイ……」

マイは私の横で申し訳なさそうに袖を引いて言ってくる。

「ボ、ボク達神は人間の感覚を持っていないんだ」
「マイは私達と同じように見えるけど?」
「マイちゃんはハルさん達に感化されて人間性を得てしまったんだよ。つまりハルさん達に会った事で神様からかけ離れてしまったんだ」
「そう……」

それはマイに悪い事をしてしまったのではないだろうか?

「ハル様は私に自由をくれたのです。何も悪くはないですよ」

マイは私に笑顔を向けてくる。

この子がそう言うのならこれ以上は考えないでおこう。

「とはいえ今の言い方だとハルさんの所為にしちゃっただけだね。でも神に人の感情がないのは事実だよ」
「あなたにはあるみたいだけど?」
「それは……気のせいだよ」

目を逸らしながら答えるアルシファーナ。
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