泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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竜の国

意外な弱点

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目が覚めたらベッドに寝かされていた。

「うん……ここは……?」
『ハル様!良かった……大丈夫ですか?』

枕元にちょこんと着地して聞いてくるカナエ。彼女の声が耳の中で反響している様な感覚に襲われる。

「ええ……少し頭が痛いわ」
「母上!目が覚めたか!どこか痛い所はあるか?」

そう言って近付いてきたのはミカヅチ。

「ごめんなさい、頭が痛いの。もう少し声量を抑えてもらえるかしら」
「すみません母上……」

意識を失う前の事を思い出す。
ネーロにワインを貰って飲んだのよね。
そのあとの記憶がない……

「ハル、目が覚めたか?その……すまなかったな」

部屋の外からネーロの声がした。ここはネーロの家の寝室だった。

「ネーロさんが謝る事ではありません。私が勝手に倒れただけなので」

あのあと二、三話をした後、私はその場に倒れてしまったらしい。
私の異常を感じ取ったミカヅチとミツハがここに飛んできて介抱しようとしてくれていたネーロを敵と勘違いして攻撃する寸前だったらしい。カナエが止めてくれて大惨事にならずに済んだそうだ。

カナエだけではベッドに運ぶ事もできないのでネーロに言って運んでもらったそうだが、その瞬間にミカヅチ達がやって来てしまい余計に誤解をしてしまった。
カナエが止めてくれなければ、今頃ネーロはこの世に塵も残っていなかったかも知れない。

「皆もありがとう。迷惑を掛けてしまいました」
「いえ、母上が無事で何よりだ」
「ミカヅチの言う通りです。無事で良かった……」

礼を言いながら指輪からカップを取り出して泉の水を生成、飲み干すと頭痛が無くなっていく。こんな事にも水は効くらしい。

まさかこの身体がここまでアルコールに弱いとは思わなかった。
前世の私もかなり弱かったが、たった一杯で倒れる程ではなかった。

安全な所で知る事ができて良かったと思うべきだわ。ネーロには申し訳ない事をしてしまったが。

「やっぱりまだ酒は早かったか」

この国だけなのか、飲酒自体に年齢による規制は無いらしいが、子供のうちから飲ませる事はどの家庭でも行っていないそうだ。

私は子供ではないのだけど。

「本当にすまなかった。大人の俺がちゃんと止めないといけなかったな」
「いいえ、私の不注意です。ネーロさんは気にしないでください」

ネーロは申し訳なさそうに部屋の外から謝ってくる。彼は相当に責任を感じていた。本当に良い人ね。

「明日は休みにするか?」
「いいえ、ネーロさんが宜しければ教えて下さい」
「分かった。いつもの時間に準備して待っているよ」

ネーロに今日の分の報酬を支払って、余った料理を受け取って家を出る。
もう日が落ちかかっている。私は随分と寝ていた様だ。

泉に帰ると畔には皆が心配して待っていてくれた。カクカミ達も全員だ。
芽依が真っ先に駆け寄って来る。

「お母さん!大丈夫?」
「ええ。みんな知っていたの?」
「うん、精霊のみんなに聞いたよ。みんなお母さんがどんな状態なのか何となく分かるんだって」

ソアニールで危険な状態になった時も私の危険を察知して呼んではいないのに現れたが、精霊達は他の眷属達とは少し違うらしい。

「母さん、みんな心配していたんだよ。あれこれ考えるよりも、自分の事を大事にしないと」
「そうね。ごめんなさい」

颯太に言われて皆に謝る。

『トコヤミとマカミが救出に行くと煩くて、諌めるのに苦労しました』

ヤトは両者を見ながら言っている。

『精霊達の言う事が本当なら一大事だと思ったのだ。ハル様、ご無事で何よりです』
『俺の足ならトコヤミ様より早く着けるかも知れないし』
『そんな事をしたら近くの町や村が衝撃波で壊れてしまうだろう』

トコヤミとマカミは言い争いをしているが、彼らを不安にさせたのは私で、もし私に何かあった場合の彼らの行動を考えると、もう少し慎重に行動するべきだと自戒した。
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