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竜の国
海竜の眷属化
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結局私はメリーゼハーヴを眷属にする事にした。
勿論、海竜族の者達にも話をして、全員の同意を得てからだが。
彼らはメリーゼハーヴが私の眷属になる事を反対するどころか賛成していた。
ならば海竜達がいる目の前で眷属化を行うべきだろう。場所はメリーゼハーヴと取り決めを作ったあの海岸。海側にはかなりな数の海竜が頭を出して私と人の姿のメリーゼハーヴに注目していた。
同席しているのはカクカミとヤトと精霊達にも来てもらった。
精霊達を呼んだのは、以前カクカミとヤトの姿を見ている者らが怯えない様にする為だ。人の姿のこの子達がいる事で少しは安心するだろうと思い呼び出した。
眷属化の手続きは簡単だ。私が認めるだけなのだから。
「メリーゼハーヴ、今日からあなたを私の眷属とします。そしてこれよりはあなた達海竜は私の家族です。私は全ての種族と仲良く暮らせる事を望みます。粗暴な振る舞いは許しません」
「うむ、分かったのじゃ。皆の者、これより我らは泉の精霊ハル様の眷属である。精霊様の名を汚す振る舞いをした者は同族であろうと容赦はせぬ。しかと心得よ」
メリーゼハーヴがそう言うと、皆頭を高く持ち上げて甲高い鳴き声を発している。
『おおお!力が漲る……!』
『長が眷属になった事で我らにも力が……』
『まさかこれほどとは!』
どうやら眷属化の効果は想像以上にだった様だ。
「うむうむ妾にも分かるぞ。今ならトコヤミ殿とも互角に戦えよう」
という事は芽依では勝てない程に強化されたのね。
『トコヤミと同列なら私達の方が戦闘力は上ですか』
『少なくとも海中では勝ち目はないな。陸に上げて仕舞えば一撃だが』
ヤトとカクカミも対抗心を燃やしている。
「妾は家族になったのだから戦う事はないてあろう?カクカミ殿とヤト殿が言われた通り、妾では太刀打ち出来ぬ事も良く理解しておる。加えていうならメト殿にも勝てぬかもしれぬな。あの怪力で身体を引き千切られてしまいそうじゃ」
そう言いながら身震いするメリーゼハーヴ。
ということはトコヤミよりもメトの方が強いのかしら。
眷属化も済んだので森に帰ろうかと思っていたら、メリーゼハーヴとカクカミ、ヤトが何かに気付いたらしく空を見上げる様にして動きを止めていた。
「どうしたの?」
「ふむ、どうやらルドガイアの手の者の様じゃな」
メリーゼハーヴは一点を見つめながら答える。
『お気を付け下さいハル様』
カクカミが私を庇う様にして立つ。
『単騎ですね。しかも大して強そうではありませんが』
ヤトはトグロを巻いて戦闘態勢に入っている。
『海竜達よ、海の中に退避せよ』
『なんの、あれくらい我らが倒して見せましょう!』
『もしもの時にお主らが海に浮かんでいては全力の攻撃が出来んのだ』
『は、はい……失礼しました』
トコヤミにそう言われて沖へと逃げ始める海竜達。
『ハル様、対話をなされるおつもりですね?』
「ええ。話が出来ればいいのだけど」
空を見上げながらカクカミに答える。
青空の中に一点、白いものが見える。あれは……翼の大きな竜だ。それはみるみる近付いてくる。
『ハル様の目の前に連れて参ります』
「連れて来るって、どうするの?」
『しばしお待ちください』
ヤトは体をバネの様に伸ばして跳躍した。凄まじい振動と衝撃が地面に伝わって来るが、カクカミが体を丸めて私と精霊達を庇ってくれる。
海岸は、ヤトの居た所を中心に大きなクレーターが出来上がっていた。
『ヤトの奴め、張り切りおって……ご無事ですかハル様?』
「ええ大丈夫よ。ありがとう」
空を見上げると遥か上空でヤトが白い竜に絡みついていた。
そのまま海に落ちてきて巨大な波飛沫を上げていた。
『お待たせしましたハル様』
何事もなかったかの様にヤトは言うと、尻尾に近い方でグルグルに巻きつかれた白い竜を引き摺って海岸に戻って来た。
勿論、海竜族の者達にも話をして、全員の同意を得てからだが。
彼らはメリーゼハーヴが私の眷属になる事を反対するどころか賛成していた。
ならば海竜達がいる目の前で眷属化を行うべきだろう。場所はメリーゼハーヴと取り決めを作ったあの海岸。海側にはかなりな数の海竜が頭を出して私と人の姿のメリーゼハーヴに注目していた。
同席しているのはカクカミとヤトと精霊達にも来てもらった。
精霊達を呼んだのは、以前カクカミとヤトの姿を見ている者らが怯えない様にする為だ。人の姿のこの子達がいる事で少しは安心するだろうと思い呼び出した。
眷属化の手続きは簡単だ。私が認めるだけなのだから。
「メリーゼハーヴ、今日からあなたを私の眷属とします。そしてこれよりはあなた達海竜は私の家族です。私は全ての種族と仲良く暮らせる事を望みます。粗暴な振る舞いは許しません」
「うむ、分かったのじゃ。皆の者、これより我らは泉の精霊ハル様の眷属である。精霊様の名を汚す振る舞いをした者は同族であろうと容赦はせぬ。しかと心得よ」
メリーゼハーヴがそう言うと、皆頭を高く持ち上げて甲高い鳴き声を発している。
『おおお!力が漲る……!』
『長が眷属になった事で我らにも力が……』
『まさかこれほどとは!』
どうやら眷属化の効果は想像以上にだった様だ。
「うむうむ妾にも分かるぞ。今ならトコヤミ殿とも互角に戦えよう」
という事は芽依では勝てない程に強化されたのね。
『トコヤミと同列なら私達の方が戦闘力は上ですか』
『少なくとも海中では勝ち目はないな。陸に上げて仕舞えば一撃だが』
ヤトとカクカミも対抗心を燃やしている。
「妾は家族になったのだから戦う事はないてあろう?カクカミ殿とヤト殿が言われた通り、妾では太刀打ち出来ぬ事も良く理解しておる。加えていうならメト殿にも勝てぬかもしれぬな。あの怪力で身体を引き千切られてしまいそうじゃ」
そう言いながら身震いするメリーゼハーヴ。
ということはトコヤミよりもメトの方が強いのかしら。
眷属化も済んだので森に帰ろうかと思っていたら、メリーゼハーヴとカクカミ、ヤトが何かに気付いたらしく空を見上げる様にして動きを止めていた。
「どうしたの?」
「ふむ、どうやらルドガイアの手の者の様じゃな」
メリーゼハーヴは一点を見つめながら答える。
『お気を付け下さいハル様』
カクカミが私を庇う様にして立つ。
『単騎ですね。しかも大して強そうではありませんが』
ヤトはトグロを巻いて戦闘態勢に入っている。
『海竜達よ、海の中に退避せよ』
『なんの、あれくらい我らが倒して見せましょう!』
『もしもの時にお主らが海に浮かんでいては全力の攻撃が出来んのだ』
『は、はい……失礼しました』
トコヤミにそう言われて沖へと逃げ始める海竜達。
『ハル様、対話をなされるおつもりですね?』
「ええ。話が出来ればいいのだけど」
空を見上げながらカクカミに答える。
青空の中に一点、白いものが見える。あれは……翼の大きな竜だ。それはみるみる近付いてくる。
『ハル様の目の前に連れて参ります』
「連れて来るって、どうするの?」
『しばしお待ちください』
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