泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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竜の国

現王スレイニグ

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私達はギルディンに連れられて現王の城に向かっている。
ギルディンはあった時と同じ様に人の姿で竜の背に乗り私達を先導してくれた。

少しだけ上昇して山の上へと向かうと居城が見えて来た。

城と言うにはお粗末だが巨大な岩を組み上げた神殿の様な建物で、トコヤミの様な巨大な竜でも悠々と中に入る事が出来そうだ。

入り口の両側には赤と青の竜が門番をしていた。ギルディンの乗る竜より一回り小さく、まだ若い竜だと思われる。

私達は地面に降りてギルディンを先頭に入り口へと近付いた。

『ギルディンか。スレイニグ様に何の様だ?』

青色の竜はギルディンを睨み付けながら聞いてくる。

「エレネージュが帰還したので報告に参った。お目通を願う」
『あの腰抜け姫が帰って来ただと?』
『エレネージュ様を侮辱するのは我が許さん。今すぐ謝罪するかこの場で消し炭になるか選ぶがいい』

赤の竜が鼻で笑いそう言うとトコヤミが身体を起こして威嚇する。その姿を見た
二体の竜は身を縮ませて頭を下げる。

『も、申し訳ありません……どうかお許しください』
『どうしますか?エレネージュ様』
『え……?はい。謝罪を受け入れます。どうか気にしないでください』
『ありがとうございます!』

エレは戸惑いながらトコヤミに答える。
トコヤミの威嚇が余程恐ろしかったのだろう、赤と青の竜は頭を伏せたままだ。

「では通してもらう」
『は、はい……』

私達は城の中へと歩を進める。
ロニとギルディンが乗っていた竜は入り口で待つ事になった。

まっすぐな道を暫く進むと一際開けた空間に出る。天井はとてつもなく高く、等間隔に嵌め込まれた魔力石が煌々と広間を照らしている。

その奥には黒ずんだ緑色の竜が寝そべっていた。

『スレイニグさん……鱗の色が……』

エレは苦しそうに呟く。元々はあの様な色では無かった様だ。

『何事だ?』
「ギルディンです。エレネージュが帰還したので報告とご挨拶に参りました」

左目を開けて聞く緑の竜に跪いて答えるギルディン。私達もギルディンに倣う。

『エレネージュ……今更何をしに戻ってきた?』

エレを睨みつけるスレイニグ。

『わ、私が戻って来たのは……ルドガイアに従うのをやめるべきだと言いに来ました。天空竜の子供を人質にとるのも良くない事だと思います』
『そんな事のために態々戻って来たのか。俺の意志は変わらん』

勇気を出して言葉にしたエレに対して冷たく言い返すスレイニグ。

『それより……ギルディン、傷はどうした?貴様の血の匂いがしなくなっている』

頭を起こしギルディンを見下ろしたスレイニグはここでようやくもう片方の目を開いた。

「お母さん、あれ……」
「ええ。凶石ね」

小声で芽依と話す。

彼の右目は燃える様な赤い凶石に置き換わっていた。あれが彼をエレの知る竜では無くしてしまったのだろう。

『そこのニンゲン……お前達、只者では無いな?』

気付かれたか。

「私は泉の精霊ハルです。貴方、その目の石はどうしたの?」
『貴様……敵をここに連れて来たのか!』

私の問いかけに答えるつもりはなく、エレに向かって牙を剥き出しにして怒鳴るスレイニグ。

『魔竜王を恐れる必要はありません。ハル様と共にズロヴァストと戦いましょう』
『戯言を……!!この場で泉の精霊を討ち取れば魔竜王様もお喜びになる筈だ』

どうやら戦いは避けられない様ね。

「ハル様、天空竜の子は奥の間の地下に幽閉されています。私がスレイニグを抑えておきますので救出に向かってください」
「分かったわ。なるべく早く戻ります」

ギルディンはスレイニグに駆け寄ると竜に変身する。見る見るうちにスレイニグの背丈を追い越し、身体を密着させていたため両者は体勢を崩して石畳に転がる。

『今のうちに、お早く!』
「ありがとう」

軽く礼を言って隅をすり抜ける。竜の姿のエレは二人を飛び越えて来た。

「こっちです。奥に竜用の扉があります」

グラムの案内で私達は天空竜の子供が捕えられている地下へと向かう事にした。
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