転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

文字の大きさ
356 / 826
地球

散り散りの仲間達1

しおりを挟む
~side マサキ~

ここは…どうやら地球の日本、それも実家の近くだ。
咄嗟に剣も投げてしまったし、この格好じゃ目立ち過ぎるか…。

みんなとの合流場所は決めてある。そこへはかなりの距離もあるし、足も確保しなければならないか。

ネネとハナは…近くにはいない。
ネネはともかく、ハナはこっちの人間じゃない。早く見つけてやらないとマズいだろう。

何となくだけど、実家に行ってしまった。時間は早朝。人通りが少ないのご幸いして久し振りの実家を近くで眺めていた。

俺は中学への通学中に車にはねられて生命を落とした。

あれからどれくらい経ったんだろうな。

玄関のドアが開いて、出て来たのは白髪混じりのやつれた女性。

「母さん…」

思わず言ってしまった。こちらでは何年経っているのだろうか?母親が生きているという事は80年という月日は流れていない事は間違いない。

「正樹…正樹なのね。」

俺を見つけて近付いてくる母さん。

「おかえりなさい。何をしてあるの、さあ、うちに入りなさい。」

俺の手を引いて家に入る母さん。

「あなた!正樹が帰って来たわ!この子ったら今までどこに行っていたのやら…お腹空いたでしょ?昨日の残りならすぐに出せるから、待ってなさい」

そう言って俺を居間に残して台所に行ってしまった。

廊下から足音が聞こえて来る。
今の扉がゆっくりと開いて白髪混じりの眼鏡の男性が顔を覗かせる。

「君は…何だねその格好は?」
「え、あぁ…すみません」

父さんは俺の事を正樹だとは思っていない様だ。まあ、当たり前か。

「家内が迷惑を掛けてしまったね。今の内に帰りなさい」
「そう、ですね。そうさせてもらいます」

居間から出ようとすると母さんが戻ってきた。

「何処に行くの?ご飯食べて行きなさい!」
「あ、はい…」

父さんは『やれやれ』とため息をついて、俺を促してダイニングに座る。
並べられたのは煮物に焼き魚。
いただきますをして食べ始める。

「美味い……」

久し振りの母の料理。まさかまた食べられる日が来ようとは。

「泣くほど美味しいの?作り甲斐があるわ」

笑顔で言っている母さん。その様子を見て父さんも目を潤ませていた。

「ご馳走様でした」

食器を下げて洗い物を始める母さん。

「すまないな」
「いえ…」

父さんは他人だと思っている俺に詫びていた。そんな必要は無いのに。

「家内は息子が死んでからおかしくなってしまってな。あれから20年、ずっと帰りを待っているんだ」
「20年…」

そうか、そんなに経っていたのか…。

「あんなに元気な家内を見たのは久し振りだ。見ず知らずの老人に付き合ってもらって悪かった」
「気にしないでください」

2人は俺が人生を狂わせてしまったんだな。
ごめん…。

「正樹、今日はどうするの?」

母さんが洗い物を済ませてこちらにやって来る。
言わなくちゃな。

「母さん。俺は20年前に車に轢かれて死んだんだ。でも、アスティアって世界に生まれ変わって今は楽しくやってるよ。だから2人も、俺の事で苦しまないで、これから生きて欲しいんだ」

母さんは俺の言う事を黙って聞いていた。そして俺の事を抱きしめてくれた。

「ありがとう…ごめんなさい」

母さんはしっかりとした口調で言った。

もしかしたら、とっくの昔に俺の事を死んだと認めていたのかも知れない。でも認めたくない心もあって、いつまでも引き摺っていたのだろう。

「もう、行くのね?」
「うん。ごめん母さん。俺が行かなくちゃ、待ってる奴もいるんだ。俺の妻と娘だよ。いつか合わせてやりたい」
「ええ、今度来る時は連れてきて。楽しみだわ」

母さんは瞳を潤ませながら笑顔を作る、

「部屋のものはあの時のままにしてあるんだ。必要なものがあれば持っていけ」

父さんが言ってくれる。
ありがたい、使わせてもらおう。

2階の自分の部屋に行って、服を着替えて幾つかを大きなリュックに詰め込む。着ている服と鎧も入れた。靴もスニーカーに履き替える。
靴のサイズも変わってなくて助かった。

「なぜ息子の部屋がすぐに分かった?」
「本当に俺が正樹だからだよ。父さん」

父さんは何も言わなかったが、ポケットから自分の財布を出して渡して来る。

「持っていけ」
「いや、久し振りに帰ってきて金をせびるなんて、何処の放蕩息子だよ。いいよそんな事」
「久し振りに息子に会えたんだ。これくらいは親として当然だ。持っていけ」

無理やり手に握らされる。

「わかったよ。でも、全部は要らない。」

財布を開けると5万円入っていたが、1枚だけ抜き取ると返す。

「これだけあれば充分だよ。ありがとう、父さん」
「そうか…気をつけて行くんだぞ」

2人に見送られて家を出る。

ありがとう、行ってきます。
しおりを挟む
感想 1,520

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!! もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ! ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。 まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。