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第一章 大迷宮クレバス
40話 幼馴染との再会
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昼下がり、大迷宮前の大通りにある喫茶店でアイリス達と別れてから、懐かしの『箱庭亭』前まで来ていた。
「ちょうどランチタイムが終わったくらいか」
今すぐに正確な時間を把握することは出来ないが、扉に立てかけてられている看板から察するに本日のランチタイムは終了しているようだ。
久しぶりに『箱庭亭』の絶品ランチを頂きたかったがそれはまた後日になってしまった。
「……俺の部屋はもうとっくに無いだろうな」
扉に手をかけて中に入ろうとしたところで思い止まる。
約一年も家賃を滞納してずっと帰って来なかったのだ、普通に考えれば俺が間借りしていた部屋はとっくの昔に他の客に貸し出されているだろう。仕方ないと言えば仕方ない。
しかし、長年住んでいた部屋が他の誰かに使われていると思うと勝手ながら悲しい気分になってくる。
もうここには俺の帰る部屋はない。
そう考えると少しだけ中に入るのが躊躇われる。
メリッサ……ハイルング家の人達はどんな顔をして俺の事を出迎えてくれるのだろうか?
もう俺の事など忘れてしまっているだろうか?
勝手にし始めた面白く無い妄想とは、これまた勝手に連鎖してどんどん思考をネガティブなものにしてしまう。そしてネガティブな思考は行動力を縛ってしまう。
現に色々な妄想が頭の中を錯綜し『箱庭亭』の中に入ることを体は拒んでいる。
「スゥ……はぁ……」
一度深呼吸をして気を落ち着かせる。
思考をリセットして気合いを入れ直す。
どんなに考えたところで結果は変わらない。部屋が無くなっていようが、メリッサ達に忘れられていようが、それは俺ではどうしようもない事だ。
時間が経てば人は忘れてしまう。一年もあれば何かを忘れるなんてのは十分すぎる時間だ。それがその人にとって辛く悲しいものならば尚更だ。
一年も探索者の幼馴染が帰ってこなければ死んだと思うのが道理だ。
寧ろ今までの俺のネガティブな思考は実際に起こっていて当然の事ばかり。
何を怖がる必要がある。
それは起こって当然のことなんだ。何の不思議でも無い。
なる様にしかならない。
そう自分の中で結論付け。意を決して扉を引く。
「──キャッ!?」
すると如何にも気の強そうな少女の驚いた声が耳朶を打つ。
中から外に出ようと俺と同じタイミングで扉を開けようとしたのか、その聞き馴染みのある懐かしい声の少女は前のめりに中から出てきた。
「おっと……」
予想より軽い扉を引いた感覚、突然前のめりにこっちに突っ込んでくる少女に驚きはするが、何とか倒れ込みそうな少女の体を抱き抱える。
「あっ!ごめんなさい! 私ったら扉の前に人がいるなんて思わなくて!!」
「あー、大丈夫だ。いつまでま扉の前で突っ立てた俺も悪いし。これは仕方がない」
抱き抱えられた少女は焦った様子で俺から離れると勢いよく頭を下げる。必死に謝る彼女を責め立てる理由は俺には無い。
「そう言って貰えると助かります! あの……お詫びと言ってはなんですけど良かったらお茶でも飲んで行って───」
彼女だけが悪い訳では無いと言うのに、畏まって頭を上げた少女は俺の顔を見た瞬間に時が止まったかのように硬直してしまう。
ああ、随分と懐かしい姿だ。
肩口まで伸びた綺麗な金髪を二つ結びにして、白のワイシャツにベストを羽織り、フリルのあしらわれたロングスカートはとても清潔感がある。『看板娘』と言われるだけあって顔面偏差値もそこそこ高くて……久しく見ないうちにとても大人の女性っぽくなったと思う。
そこには所謂幼馴染のメリッサ・ハイルングが立っている。
「……よっ。久しぶりだなメリッサ」
少しの沈黙の後、手を挙げてできるだけフランクに挨拶をする。
正直驚いた。
扉を開けて直ぐにメリッサと出くわしたのもそうだが、何よりもしばらく見ないうちに随分と雰囲気の変わったメリッサに驚いた。
たったの一年、されど一年だ。
メリッサは以前よりも少し背を伸ばし、可愛らしいというより美しいと言った方向で綺麗になっていた。月並みの表現だが、随分と大人っぽくなった。
内心、そんな事を考えながらメリッサの言葉を待つ。
「───」
「……あの、メリッサ?」
しかし少し待ってみてもメリッサは何も答えず、硬直したまま動かない。
まるで幽霊でも見たように目を見開いて驚いている。
「あの~……」
一歩メリッサに近づいて目の前で手を振ってみる。
しかし反応はない。どうやら相当驚いているようだ。
まあメリッサの反応は当然と言えば当然か。幽霊を見たように、と表現したものの彼女からすれば俺はもう故人で幽霊その者なのだろう。
「……えーと──」
メリッサの反応からそう察しを付けて、どうしたものかと思案する。
お生憎様アイリスの時と同様、俺には気の利いた言葉なんてのは思いつかない。
こんな時、物語に出てくる主人公などはどんな言葉で大切な人と再会を果たすものなのだろうか?
……昔読んだ物語を思い出してみるがいい案は思いつかない。
ここまで言うことがなければ結局のところ最後は先程のような簡単な言葉しか出てこない。
だが、それでいいのかもしれない。
ごちゃごちゃと何かを言う前に、最初に言うべきことはやはりこの言葉なのだろう。
「──ただいまメリッサ」
「………ッッッ!!」
少し小っ恥ずかしさを覚えながら帰ってきたことを告げた次の瞬間、メリッサはその綺麗な翡翠色の綺麗な瞳を一層見開き、飛び出してくる。
「おっと……! またいきなりだな」
「ファイクッ!? ファイクなの!? 本当にファイクなのよね!!?」
突然飛びついて来たメリッサを受け止めると、彼女は瞳から大粒の涙を流しながら確認してくる。
「どっからどう見ても俺だよ。人を化けて出てきた幽霊みたいな目で見やがって……一年も帰らなかったからしょうがないけど、俺の顔忘れたか?」
冗談交じりに言いながら無意識にメリッサの涙を拭ってやる。
こうして彼女が泣いているところをマジマジと見たのは探協で俺の両親の死を聞いて泣いていた時以来だろうか。
それほど彼女が泣いているのを久しぶりに見た気がする。
「ファイクッ……生きて……生きてたのね……良かった……本当に良かった……もう会えないと……本当に………!!」
メリッサは堰を切ったように俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。
「ごめん……心配かけたな……」
そんな彼女の頭を優しく撫でる。
普通、女の子にこんな事を言われれば強く抱きしめてやるのが雰囲気と言うモノなんだろうが、アイリスの時とは違ってなまじ冷静な今の俺ではそんな大胆なことは出来るはずがない。
出来ても今やっているように頭を優しく撫でてやれるぐらいだ。
"……ヘタレめ"
「……」
呆れた嗄れ声は無視する。
そもそも誰彼構わずに抱きついてたらそれこそ問題だろうが。節操が無さすぎる。
「な、なんだ! 何があったんだメリッサ……ってファイク!?」
「えっ! ファイ君、帰ってきたの!?」
なんて頭の中で自分を正当化していると、パトス、メネルと奥の厨房からハイルング家の面々が何事かと顔を出す。
「あー……お久しぶりです。ファイク・スフォルツォ、ただいま帰りました」
泣きじゃくるメリッサの頭を撫でてあやしている。という何とも親御さんや妹さんに見られると気まずい状況の中、苦笑を浮かべながら挨拶をする。
そんな俺たちをハイルング家の皆様は何とも生暖かい眼差しでニヤニヤと見つめている。
大事な娘さんが男の胸で泣いているのだからもう少し別の反応は無いのだろうか?
「うちの娘を泣かしてんじゃねぇ」とか。「うちの娘になに抱き着いんでんだ」とか。色々とこの状況を見て言うべきことがあるだろう。
決してニマニマと傍観する状況ではない。
「えーと……俺の部屋ってまだ空いてます?」
そんな精神的居心地の悪さを感じながら俺はそんなことを聞く。
ハイルング家の皆様は厨房の出入口でニマニマとしたまま一つ頷いて、こちらを凝視し続ける。
……とりあえず俺の部屋がまだ誰の手に渡っていないことが分かって一安心ではあるが、どうして最初の発言から皆さん全く話さないんですか?
そんな疑問を頭の片隅に投げ捨てながら、俺は少し異色な『箱庭亭』への帰宅・ハイルング家との再会を果たした。
・
・
・
夜になった。
かなり予想と違った『箱庭亭』の帰宅・メリッサ達との再会からかなりの時間が経った。
現在は俺が間借りさせてもらっている部屋のベットの上。時刻は部屋の時計を見遣れば午後の9時を回ったところだ。
「ふう……」
やっと一息つくことが出来た。
あの後は色々と大変だった。
メリッサはなかなか泣き止んでくれないわ、パトスさんやメネルはそれをただ楽しそうに見ているだけだし。
それが落ち着いたら今度は色々と質問攻めだ。これはまあいい。しょうがない。一年も帰らなかったんだ説明の義務はある。
しかしまあこれが大変だった。
本当の事を殆ど話せない状況で、この一年間何処で何をしていたのか説明するのは骨が折れた。
なんせさっきまでその説明をしていて、やっと今それから開放されたのだ。もう何も考えたくない。
嘘八百。
あることないことでっち上げて何とか彼らには納得して貰えたが、人として何か失ってはいけないものを失った気がする。
「……」
まあこの際それは仕方がない。
今まであったことを嘘偽りなく話すことなど出来ないのだ。一般人の彼らを変な事に巻き込む訳にはいかない。
そう結論付けて改めて部屋を見渡す。
「それにしても部屋をずっと取っておいてくれるとは思わなかったな……」
一年も空けていたというのに俺の部屋は全くと言っていいほど変わっていなかった。もちろん掃除はされている。埃ぽさなど微塵も感じない綺麗な部屋だ。
しかし、探協から死んだと正式に通達された探索者の部屋を今日まで空室扱いにせず、毎日掃除をしてくれていたと考えるとメリッサ達には感謝しかない。
「この部屋はファイクのものでしょ! 家族なんだから当たり前じゃない!!」
と、目を真っ赤に腫らしたメリッサの言葉を忘れることは一生ないだろう。
本当に嬉しい限りだ。
不覚にもその言葉の嬉しさに泣いてしまい、改めて帰ってきたのだと思った。
「随分とお疲れの様子だな」
大きく伸びをして勢いよくベットに身を預けるとスカーの嗄れた声が聞こえてくる。
「……まあな。十分にリイヴさんの所で休んだつもりではいたけど、ここに戻ってきた途端に謎の疲れがドッと出てきた」
天井を仰ぎ答える。
安心感とでも言うべきか、ここまで何度も帰ってきた自覚はあったがこの部屋に戻ってきてさらにその実感が強くなった。
十年近く住み着いた部屋だと考えればそれも不思議ではないが、ここまでとは思わなかった。現にベットに身を預けただけでものすごい睡魔がやってきている。
「今日はもう休むのか?」
「……そうしたいのは山々だけど色々と考えないといけないことがあるんだよな~」
「明日では駄目なのか?」
スカーの疑問は最もだ。
別に帰ってきて疲れているのならば休息を優先した方がいい。
しかし、今考えなければいけない議題は明日に持ち越しという甘えは許されない。
今日決めきれなくても少しは考えを纏めなければ駄目だ。
「……駄目だな。明日には色々と動き出さなきゃ行けない。ここで方針を詰めとかなきゃいけない」
「方針?」
スカーの要領得ていない声がする。
……コイツ本当に言ってるのか?
そんなスカーの反応に思わず痛くもない頭を抑える。
「これからどうするか。リイヴさんにも聞かれたろ。あの時の答えを今ハッキリ明確にさせよう」
「明確に……そんなのもうできているだろうが。お前は世界最強の魔法使い。俺は魔法の消失を防ぐ。それはこれからも変わりはしない」
「それは最終目標だ。俺が言ってるのは細かい所……具体的なこれからの方針だよ。俺の方はまあいい、大迷宮をこれからも攻略していくことで目標は達成される。けどお前の方は別だろう。この現状を作り上げた元凶は大まかに掴めた。それを踏まえてお前はこれからの身の振り方をどう考える?」
俺の質問にスカーは思考する。
スカーが各国の治者と……この魔法理論衰退の原因を作った奴らとやり合うと言うのならば構わない。
互いの利害は一致しているのだ。そこに一切の迷いはない。
しかし、ここまでスカーは特に何もこれからの事を決めることなかった。
標的が分かったのだ、スカーならば直接ソイツらを潰す考えになると思っていたが実際はこれだ。その現状に少し違和感すら覚える。
「……だからもう明確になっているだろう。元凶が分かったからと言ってやる事は変わらんさ。結局のところ俺たちの最適解は大迷宮を全て攻略することだ──」
思考した結果、スカーの答えは変わらなかった。
「──その中で色々と障害が出てくればその都度対処していけばいい。俺らが元凶に直接ちょっかいをかける必要は無い。お前が全ての大迷宮を完全攻略して世界最強の魔法使いになる。その時点でもうほとんど俺の目標は達成される」
「俺が世界最強になった時点でほとんど……ってどうしてだ? 俺が世界最強の魔法使いになって何か変わるとは思えないけど」
続けられたスカーの言葉の意図が読めない。何故それだけで奴の目標のほとんどが達成される。
「世界最強と言うことはこの世で一番魔法の扱いに長けていると言うことだ。魔法使いというのは貪欲だ。自身が知ってる魔法の使い方よりも優れた魔法の使い方があると知れば、その方法を会得しようとお前の元にたくさんの魔法使いが弟子になろうと訪れるだろう。そこでお前が本来の魔法の在り方を教えてやればいい。知識とは拡散する。複数の人間が元の魔法を取り戻せばあとは勝手に元通りになるって寸法だ」
「……」
自信たっぷりなスカーの根拠を聞いて思わず呆然とする。
なんて楽観的な考えだ。
本当にこいつは世界最強と謳われた影の賢者なのか疑いたくなってくる。到底ご大層な賢者様が考えることじゃないだろこれ。
「なんだ? 納得いかない様子だが、俺の言っていることが信じられないか?」
「信じられないというか……何とも単純と言うか……本気で言ってるのか?」
もう一度確認するように俺はスカーに問う。
「本気も本気さ。これは俺の経験則だが……別に小難しいことなんて必要ないんだ。これぐらい馬鹿げていて分かりやすい方が上手くいく。そんなもんさ」
「……そう……か」
「ああ」
自信に満ち溢れたスカーの返答に俺はそれ以上何も言えない。
確かに変に小難しいことをするよりもこっちの方が分かりやすくていい。
今までと何らやることだって変わりはしない。
「確認は終わりか? 終わりならさっさと寝ろ。明日から動き出すんだろ。こんな確認よりもお前はあの女をどうするか考えた方がいいんじゃないか?」
「あ、ああ……」
スカーはそう言うとそれ以上何も口にはしない。
時刻はまだ午後9時を少し過ぎたばかり。夜はまだまだこれからだ。
これからの行動方針に変わりはない。
スカーのその言葉はその通りだと納得できた。
俺はなにか勘違いをしていたのかもしれない。降りかかる火の粉は払うが、わざわざ自ら争いに身を投じる必要は無い。そう言った意味ではスカーの考え方は最もだと思う。寧ろ最適解だろう。
だからこそ考える。
スカーが今最後に言い残した言葉「あの女をどうするか」。
直接は元凶とはやり合わない。しかし結局のところ危険な旅になることは変わりはしない。果たしてそれに彼女を巻き込むべきなのだろうか。
「……」
天井を仰ぎ目を閉じる。
堂々巡りの思考、意識は段々と微睡み沈んでいく。
暗く沈んでいく睡魔に抗うことは適わない。あと数分とせずに強制的な眠りに着くだろう。
暗くなる意識の最中、ふと彼女の姿が浮かぶ。
夢の中の彼女はとても嬉しそうにこちらに微笑んでいた。
「ちょうどランチタイムが終わったくらいか」
今すぐに正確な時間を把握することは出来ないが、扉に立てかけてられている看板から察するに本日のランチタイムは終了しているようだ。
久しぶりに『箱庭亭』の絶品ランチを頂きたかったがそれはまた後日になってしまった。
「……俺の部屋はもうとっくに無いだろうな」
扉に手をかけて中に入ろうとしたところで思い止まる。
約一年も家賃を滞納してずっと帰って来なかったのだ、普通に考えれば俺が間借りしていた部屋はとっくの昔に他の客に貸し出されているだろう。仕方ないと言えば仕方ない。
しかし、長年住んでいた部屋が他の誰かに使われていると思うと勝手ながら悲しい気分になってくる。
もうここには俺の帰る部屋はない。
そう考えると少しだけ中に入るのが躊躇われる。
メリッサ……ハイルング家の人達はどんな顔をして俺の事を出迎えてくれるのだろうか?
もう俺の事など忘れてしまっているだろうか?
勝手にし始めた面白く無い妄想とは、これまた勝手に連鎖してどんどん思考をネガティブなものにしてしまう。そしてネガティブな思考は行動力を縛ってしまう。
現に色々な妄想が頭の中を錯綜し『箱庭亭』の中に入ることを体は拒んでいる。
「スゥ……はぁ……」
一度深呼吸をして気を落ち着かせる。
思考をリセットして気合いを入れ直す。
どんなに考えたところで結果は変わらない。部屋が無くなっていようが、メリッサ達に忘れられていようが、それは俺ではどうしようもない事だ。
時間が経てば人は忘れてしまう。一年もあれば何かを忘れるなんてのは十分すぎる時間だ。それがその人にとって辛く悲しいものならば尚更だ。
一年も探索者の幼馴染が帰ってこなければ死んだと思うのが道理だ。
寧ろ今までの俺のネガティブな思考は実際に起こっていて当然の事ばかり。
何を怖がる必要がある。
それは起こって当然のことなんだ。何の不思議でも無い。
なる様にしかならない。
そう自分の中で結論付け。意を決して扉を引く。
「──キャッ!?」
すると如何にも気の強そうな少女の驚いた声が耳朶を打つ。
中から外に出ようと俺と同じタイミングで扉を開けようとしたのか、その聞き馴染みのある懐かしい声の少女は前のめりに中から出てきた。
「おっと……」
予想より軽い扉を引いた感覚、突然前のめりにこっちに突っ込んでくる少女に驚きはするが、何とか倒れ込みそうな少女の体を抱き抱える。
「あっ!ごめんなさい! 私ったら扉の前に人がいるなんて思わなくて!!」
「あー、大丈夫だ。いつまでま扉の前で突っ立てた俺も悪いし。これは仕方がない」
抱き抱えられた少女は焦った様子で俺から離れると勢いよく頭を下げる。必死に謝る彼女を責め立てる理由は俺には無い。
「そう言って貰えると助かります! あの……お詫びと言ってはなんですけど良かったらお茶でも飲んで行って───」
彼女だけが悪い訳では無いと言うのに、畏まって頭を上げた少女は俺の顔を見た瞬間に時が止まったかのように硬直してしまう。
ああ、随分と懐かしい姿だ。
肩口まで伸びた綺麗な金髪を二つ結びにして、白のワイシャツにベストを羽織り、フリルのあしらわれたロングスカートはとても清潔感がある。『看板娘』と言われるだけあって顔面偏差値もそこそこ高くて……久しく見ないうちにとても大人の女性っぽくなったと思う。
そこには所謂幼馴染のメリッサ・ハイルングが立っている。
「……よっ。久しぶりだなメリッサ」
少しの沈黙の後、手を挙げてできるだけフランクに挨拶をする。
正直驚いた。
扉を開けて直ぐにメリッサと出くわしたのもそうだが、何よりもしばらく見ないうちに随分と雰囲気の変わったメリッサに驚いた。
たったの一年、されど一年だ。
メリッサは以前よりも少し背を伸ばし、可愛らしいというより美しいと言った方向で綺麗になっていた。月並みの表現だが、随分と大人っぽくなった。
内心、そんな事を考えながらメリッサの言葉を待つ。
「───」
「……あの、メリッサ?」
しかし少し待ってみてもメリッサは何も答えず、硬直したまま動かない。
まるで幽霊でも見たように目を見開いて驚いている。
「あの~……」
一歩メリッサに近づいて目の前で手を振ってみる。
しかし反応はない。どうやら相当驚いているようだ。
まあメリッサの反応は当然と言えば当然か。幽霊を見たように、と表現したものの彼女からすれば俺はもう故人で幽霊その者なのだろう。
「……えーと──」
メリッサの反応からそう察しを付けて、どうしたものかと思案する。
お生憎様アイリスの時と同様、俺には気の利いた言葉なんてのは思いつかない。
こんな時、物語に出てくる主人公などはどんな言葉で大切な人と再会を果たすものなのだろうか?
……昔読んだ物語を思い出してみるがいい案は思いつかない。
ここまで言うことがなければ結局のところ最後は先程のような簡単な言葉しか出てこない。
だが、それでいいのかもしれない。
ごちゃごちゃと何かを言う前に、最初に言うべきことはやはりこの言葉なのだろう。
「──ただいまメリッサ」
「………ッッッ!!」
少し小っ恥ずかしさを覚えながら帰ってきたことを告げた次の瞬間、メリッサはその綺麗な翡翠色の綺麗な瞳を一層見開き、飛び出してくる。
「おっと……! またいきなりだな」
「ファイクッ!? ファイクなの!? 本当にファイクなのよね!!?」
突然飛びついて来たメリッサを受け止めると、彼女は瞳から大粒の涙を流しながら確認してくる。
「どっからどう見ても俺だよ。人を化けて出てきた幽霊みたいな目で見やがって……一年も帰らなかったからしょうがないけど、俺の顔忘れたか?」
冗談交じりに言いながら無意識にメリッサの涙を拭ってやる。
こうして彼女が泣いているところをマジマジと見たのは探協で俺の両親の死を聞いて泣いていた時以来だろうか。
それほど彼女が泣いているのを久しぶりに見た気がする。
「ファイクッ……生きて……生きてたのね……良かった……本当に良かった……もう会えないと……本当に………!!」
メリッサは堰を切ったように俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。
「ごめん……心配かけたな……」
そんな彼女の頭を優しく撫でる。
普通、女の子にこんな事を言われれば強く抱きしめてやるのが雰囲気と言うモノなんだろうが、アイリスの時とは違ってなまじ冷静な今の俺ではそんな大胆なことは出来るはずがない。
出来ても今やっているように頭を優しく撫でてやれるぐらいだ。
"……ヘタレめ"
「……」
呆れた嗄れ声は無視する。
そもそも誰彼構わずに抱きついてたらそれこそ問題だろうが。節操が無さすぎる。
「な、なんだ! 何があったんだメリッサ……ってファイク!?」
「えっ! ファイ君、帰ってきたの!?」
なんて頭の中で自分を正当化していると、パトス、メネルと奥の厨房からハイルング家の面々が何事かと顔を出す。
「あー……お久しぶりです。ファイク・スフォルツォ、ただいま帰りました」
泣きじゃくるメリッサの頭を撫でてあやしている。という何とも親御さんや妹さんに見られると気まずい状況の中、苦笑を浮かべながら挨拶をする。
そんな俺たちをハイルング家の皆様は何とも生暖かい眼差しでニヤニヤと見つめている。
大事な娘さんが男の胸で泣いているのだからもう少し別の反応は無いのだろうか?
「うちの娘を泣かしてんじゃねぇ」とか。「うちの娘になに抱き着いんでんだ」とか。色々とこの状況を見て言うべきことがあるだろう。
決してニマニマと傍観する状況ではない。
「えーと……俺の部屋ってまだ空いてます?」
そんな精神的居心地の悪さを感じながら俺はそんなことを聞く。
ハイルング家の皆様は厨房の出入口でニマニマとしたまま一つ頷いて、こちらを凝視し続ける。
……とりあえず俺の部屋がまだ誰の手に渡っていないことが分かって一安心ではあるが、どうして最初の発言から皆さん全く話さないんですか?
そんな疑問を頭の片隅に投げ捨てながら、俺は少し異色な『箱庭亭』への帰宅・ハイルング家との再会を果たした。
・
・
・
夜になった。
かなり予想と違った『箱庭亭』の帰宅・メリッサ達との再会からかなりの時間が経った。
現在は俺が間借りさせてもらっている部屋のベットの上。時刻は部屋の時計を見遣れば午後の9時を回ったところだ。
「ふう……」
やっと一息つくことが出来た。
あの後は色々と大変だった。
メリッサはなかなか泣き止んでくれないわ、パトスさんやメネルはそれをただ楽しそうに見ているだけだし。
それが落ち着いたら今度は色々と質問攻めだ。これはまあいい。しょうがない。一年も帰らなかったんだ説明の義務はある。
しかしまあこれが大変だった。
本当の事を殆ど話せない状況で、この一年間何処で何をしていたのか説明するのは骨が折れた。
なんせさっきまでその説明をしていて、やっと今それから開放されたのだ。もう何も考えたくない。
嘘八百。
あることないことでっち上げて何とか彼らには納得して貰えたが、人として何か失ってはいけないものを失った気がする。
「……」
まあこの際それは仕方がない。
今まであったことを嘘偽りなく話すことなど出来ないのだ。一般人の彼らを変な事に巻き込む訳にはいかない。
そう結論付けて改めて部屋を見渡す。
「それにしても部屋をずっと取っておいてくれるとは思わなかったな……」
一年も空けていたというのに俺の部屋は全くと言っていいほど変わっていなかった。もちろん掃除はされている。埃ぽさなど微塵も感じない綺麗な部屋だ。
しかし、探協から死んだと正式に通達された探索者の部屋を今日まで空室扱いにせず、毎日掃除をしてくれていたと考えるとメリッサ達には感謝しかない。
「この部屋はファイクのものでしょ! 家族なんだから当たり前じゃない!!」
と、目を真っ赤に腫らしたメリッサの言葉を忘れることは一生ないだろう。
本当に嬉しい限りだ。
不覚にもその言葉の嬉しさに泣いてしまい、改めて帰ってきたのだと思った。
「随分とお疲れの様子だな」
大きく伸びをして勢いよくベットに身を預けるとスカーの嗄れた声が聞こえてくる。
「……まあな。十分にリイヴさんの所で休んだつもりではいたけど、ここに戻ってきた途端に謎の疲れがドッと出てきた」
天井を仰ぎ答える。
安心感とでも言うべきか、ここまで何度も帰ってきた自覚はあったがこの部屋に戻ってきてさらにその実感が強くなった。
十年近く住み着いた部屋だと考えればそれも不思議ではないが、ここまでとは思わなかった。現にベットに身を預けただけでものすごい睡魔がやってきている。
「今日はもう休むのか?」
「……そうしたいのは山々だけど色々と考えないといけないことがあるんだよな~」
「明日では駄目なのか?」
スカーの疑問は最もだ。
別に帰ってきて疲れているのならば休息を優先した方がいい。
しかし、今考えなければいけない議題は明日に持ち越しという甘えは許されない。
今日決めきれなくても少しは考えを纏めなければ駄目だ。
「……駄目だな。明日には色々と動き出さなきゃ行けない。ここで方針を詰めとかなきゃいけない」
「方針?」
スカーの要領得ていない声がする。
……コイツ本当に言ってるのか?
そんなスカーの反応に思わず痛くもない頭を抑える。
「これからどうするか。リイヴさんにも聞かれたろ。あの時の答えを今ハッキリ明確にさせよう」
「明確に……そんなのもうできているだろうが。お前は世界最強の魔法使い。俺は魔法の消失を防ぐ。それはこれからも変わりはしない」
「それは最終目標だ。俺が言ってるのは細かい所……具体的なこれからの方針だよ。俺の方はまあいい、大迷宮をこれからも攻略していくことで目標は達成される。けどお前の方は別だろう。この現状を作り上げた元凶は大まかに掴めた。それを踏まえてお前はこれからの身の振り方をどう考える?」
俺の質問にスカーは思考する。
スカーが各国の治者と……この魔法理論衰退の原因を作った奴らとやり合うと言うのならば構わない。
互いの利害は一致しているのだ。そこに一切の迷いはない。
しかし、ここまでスカーは特に何もこれからの事を決めることなかった。
標的が分かったのだ、スカーならば直接ソイツらを潰す考えになると思っていたが実際はこれだ。その現状に少し違和感すら覚える。
「……だからもう明確になっているだろう。元凶が分かったからと言ってやる事は変わらんさ。結局のところ俺たちの最適解は大迷宮を全て攻略することだ──」
思考した結果、スカーの答えは変わらなかった。
「──その中で色々と障害が出てくればその都度対処していけばいい。俺らが元凶に直接ちょっかいをかける必要は無い。お前が全ての大迷宮を完全攻略して世界最強の魔法使いになる。その時点でもうほとんど俺の目標は達成される」
「俺が世界最強になった時点でほとんど……ってどうしてだ? 俺が世界最強の魔法使いになって何か変わるとは思えないけど」
続けられたスカーの言葉の意図が読めない。何故それだけで奴の目標のほとんどが達成される。
「世界最強と言うことはこの世で一番魔法の扱いに長けていると言うことだ。魔法使いというのは貪欲だ。自身が知ってる魔法の使い方よりも優れた魔法の使い方があると知れば、その方法を会得しようとお前の元にたくさんの魔法使いが弟子になろうと訪れるだろう。そこでお前が本来の魔法の在り方を教えてやればいい。知識とは拡散する。複数の人間が元の魔法を取り戻せばあとは勝手に元通りになるって寸法だ」
「……」
自信たっぷりなスカーの根拠を聞いて思わず呆然とする。
なんて楽観的な考えだ。
本当にこいつは世界最強と謳われた影の賢者なのか疑いたくなってくる。到底ご大層な賢者様が考えることじゃないだろこれ。
「なんだ? 納得いかない様子だが、俺の言っていることが信じられないか?」
「信じられないというか……何とも単純と言うか……本気で言ってるのか?」
もう一度確認するように俺はスカーに問う。
「本気も本気さ。これは俺の経験則だが……別に小難しいことなんて必要ないんだ。これぐらい馬鹿げていて分かりやすい方が上手くいく。そんなもんさ」
「……そう……か」
「ああ」
自信に満ち溢れたスカーの返答に俺はそれ以上何も言えない。
確かに変に小難しいことをするよりもこっちの方が分かりやすくていい。
今までと何らやることだって変わりはしない。
「確認は終わりか? 終わりならさっさと寝ろ。明日から動き出すんだろ。こんな確認よりもお前はあの女をどうするか考えた方がいいんじゃないか?」
「あ、ああ……」
スカーはそう言うとそれ以上何も口にはしない。
時刻はまだ午後9時を少し過ぎたばかり。夜はまだまだこれからだ。
これからの行動方針に変わりはない。
スカーのその言葉はその通りだと納得できた。
俺はなにか勘違いをしていたのかもしれない。降りかかる火の粉は払うが、わざわざ自ら争いに身を投じる必要は無い。そう言った意味ではスカーの考え方は最もだと思う。寧ろ最適解だろう。
だからこそ考える。
スカーが今最後に言い残した言葉「あの女をどうするか」。
直接は元凶とはやり合わない。しかし結局のところ危険な旅になることは変わりはしない。果たしてそれに彼女を巻き込むべきなのだろうか。
「……」
天井を仰ぎ目を閉じる。
堂々巡りの思考、意識は段々と微睡み沈んでいく。
暗く沈んでいく睡魔に抗うことは適わない。あと数分とせずに強制的な眠りに着くだろう。
暗くなる意識の最中、ふと彼女の姿が浮かぶ。
夢の中の彼女はとても嬉しそうにこちらに微笑んでいた。
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40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
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50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
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途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
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『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
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> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
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