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学園入寮編
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「じゃあ、行ってくる。何かあったらすぐに連絡してくれ。」
朝起きると、櫂斗から今日は朝から生徒会の呼び出しがかかったと言われた。
まだひと月ほどしか一緒にいないのに、櫂斗がいない事に違和感がある。
昨日は随分情け無い所を見られてしまった。
しっかり寝て、櫂斗の香りにも癒されたからか翌日に持ち越すことなく過ごす事が出来ている。
「いってらっしゃい。」
頬に口づけを落として、「行きなく無い」と呟く櫂斗を玄関で宥めて見送り、さて、今日は何しようかと考える。
入学前の課題はもう終わってしまったし、部屋の片付けも済んでいる。
外に出る用事も無いしなぁ…。
昨日買った本を今日は読み漁る事にし、部屋から紙袋を持ってきて、ソファに保たれて読む事にした。
書斎の棚も櫂斗と決めて、信頼できる業者が土曜に出かけている間に入れていてくれるらしい。
紅茶を淹れてからソファに沈む。
1冊をあっという間に読み終わり、次の本に手を伸ばした際に突然ふっと頭によぎる。
土曜って、櫂斗のご実家に行く以外に何かあったような……。
本を一度置き、何だっけ?とスケジュールを確認する。
そういえば、診察が入っていた。9時半からだから、まぁ行ってからでも間に合うだろう。
櫂斗に伝えておかないと…と忘れないようにメモをして机に置いておく。
再び本に没頭していると、突然チャイムが鳴った。
時刻はお昼ごろ。羽衣先輩あたりがご飯でも誘いに来てくれたのかな?と思い、モニターを覗く。
みると、昨日エレベーターの所であった2人組が立っていた。
思わずギョッとするも、とりあえず要件を聞かなければと思い通話ボタンを押す。
「はい。月見里です。」
『突然すみません。昨日の事でお話しがあるので、少し出てきて頂けませんか?』
櫂斗もいないし、知らない状況で威圧もされた相手に会うのは正直怖い。でも、昨日とは雰囲気が異なるし、とりあえず話だけ聞こうと思い少し待ってもらえるように伝える。
マスクをつけて、何かあってもいいように携帯を握りしめて玄関に向かう。
「な、何の御用でしょうか…」
扉を半分だけ開けて、顔だけ出し様子を伺う。
「…。昨日は、申し訳ありませんでした。」
長身の威圧をしてきた男性が少しの沈黙の後頭を下げた。
「へ…。」
「昨日はごめんね?怖かったっしょ?体調はどう?昨日は丁度色々あって気も立ってて知らない君を見て、つい威圧フェロモンが出ちゃったみたい。
かっちゃんもあの後すっごい反省してたから、とりあえず謝罪の言葉だけは受け取ってほしいな~。」
口調の軽い男性が長身の男性の背中をバシバシ叩きながら言う。
思わぬ訪問と謝罪の言葉に呆然とするも、今後もこう言う事があると精神的にも身体的にも非常に困る。
とりあえず言いたい事は伝えておこうと、勇気を出して向き合う事にした。
「…謝罪の言葉は受け取ります。ワザとでは無い事も、わかりました。
ですが、事情があるにしろ、こちらの言葉も聞かずに突然威圧されるのは、僕だけでは無く他の人にも辞めて頂きたいです。
αの威圧は、耐性のないΩにとっては身体に物凄く負担がかかります。強さによっては、心臓も止まるくらいには。
番ったとしても、影響を受けないのは発情を促したりする事がないというだけで、威圧などの相手を屈服させる力は少なからず影響を与えますので。
僕が言いたい事は以上です。」
櫂斗と番っていたため、あれくらいで済んでいるが何も無ければ酷い状況になっていたのはわかる。
やった事の重さはしっかり反省してほしい。
「…本当にすみませんでした。今後は、この様な事は無いとお約束します。」
再度深く頭を下げると、軽い口調の先輩も頭を下げ「すみませんでした。」と謝ってきた。
顔は真剣で、反省しているのはわかった。
今回の事は、櫂斗もいたし僕自身は結局何事も無く終わっている。引きずって寮で会う度に気まずくなり生活しにくい方が頂けない。
「もう、いいですから。反省は伝わりました。今後は寮でもお世話になると思いますので、謝罪はこれまでにしましょう。
水には流しませんが、僕は今回の事はこれ以上追求するつもりはありません。
何かあれば、頼らせて頂きますので今後は仲良くして下さいね。先輩方。」
扉からしっかりと体を出して、ペコリと一礼する。
先輩方は呆けた様な表情をしていたが、フッと笑い、
「ええ。わかりました。何かあれば、いつでもどうぞ。名乗ってもいませんでしたね。私は山本克樹と申します。」
「俺は長谷川郁ねー!俺たちは3階に住んでるから、いつでもおいでっ⭐︎」
「月見里時雨です。よろしくお願いします。」
「では、今日は謝罪に来ただけなので。これで失礼します。」軽く一礼するとさっと後ろを向け、エレベーターに向かって歩き出す。
折角足を運んで貰ったし、こういう時はお茶でも出した方が良いのだろうか?
今まで客人対応なんてした事がないから普通がわからない。
「あの、」
くるっと克樹が振り向く。
「どうしました?」
「…折角来て頂きましたし、お茶でも飲んで行かれますか…?」
2人は番同士で顔を見合わせるとプッと破顔し、「では、お邪魔しても良いですか?」「飲むーっ!」と足を止めた。
間違って無かったと思い、ほっとして頬を緩める。
「では、こちらにどうぞ。」
ガチャリと扉を開こうとドアノブを引いたが…
「……開かない…?」
あれ、何でだろう。
1人ではてなマークを浮かべていると、後ろから声がかかった。
「扉、防犯対策でオートロックですよ。カードはお持ちですか?」
「…………。部屋の、中に…。」
この2日間櫂斗に任せっきりで失念していた。
櫂斗はいないし、帰ってくるのはもう暫く後だ。
どうしよう…。やっちゃったぁ~~
はぁとため息をついていると、
「俺達の部屋くる?なんにも面白いものはないけど、昨日のお詫びにお菓子でも出しちゃうよっ!」
「ええ、来栖は僕達が来たのに出てこないという事はいないのでしょう?寮長達も今は部活で出払っていますし。帰って来るまで、是非どうぞ。」
「お世話になります…。」
部屋は電気も暖房もつけたままだが、戸締まりはしてある。
少し勿体無いが、仕方あるまい。
ペコリと再度御礼をいい、櫂斗に急ぎでは無い為、終わったら連絡してもらえる様に伝えて先輩達の部屋に向かった。
Side櫂斗
先輩達との顔合わせが無事に終了し、そのまま入学式の準備や新入生歓迎会の話し合いを行う事になった。
午後いっぱいかかりそうだ。
時雨はどうしているだろうか。昨日大量に本を購入していたから、リビングで本に没頭してそうだな。
食堂で先輩方と昼食を取っていると、メールの通知が来た。時雨からだ。何かあったか?
すぐにメールを開いて何事もない様で安心する。
『仕事お疲れ様。
体調は問題無いから心配しないで、生徒会頑張ってね。
終わったら連絡くれると嬉しい。
あ、何かあるわけじゃ無いから、急がなくていいからね!!!!』
終わったら連絡してほしいって、何故だろうか。
不思議に思いながらも、何もない事が強調されている為『わかった』と返信を送る。
「櫂ちゃん、嬉しそうだねぇ~。番ちゃん?」
ニマニマと先輩が横から唆してくる。
「番からですよ。先輩が思ってるような事は無いので安心して下さいね。さ、休憩終わって早く打ち合わせしますよ。」
「えぇ~?櫂ちゃんがいなくて寂しいっ!早く帰ってきて~っ!とかないのぉ?」
「無いです。どちらかと言うと、しっかり仕事しないとむくれるタイプです。体は弱いですが意志はしっかりしてるので、不安定な時以外はそんな事はいいません。」
スパッと切って、まだグダグダと妄想を述べる先輩を引きずり、生徒会室へと戻った。
「じゃ、今日のところはこの辺で。次は入学式前日、日曜の10時から。入学式の最終調整、設営及びリハーサルを行う。」
生徒会長が次の集まりをいう。
「会長、すみません。土曜に実家に帰る事になってまして、泊まりになりそうなので場合によっては10時に来れないかもしれないです。」
「ああ?土曜に帰るたぁ、ギリギリだな。まぁ、設営が先で、お前は担当してないからな。最悪休憩後の13時に来ればいい。」
7時前に出るのは流石に避けたい。13時であれば問題ないだろう。
「すみません。ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。」
「珍しいね~。櫂ちゃんがギリギリに帰るの。何かあるの~?」
「父に入学前に一度番に会わせなさいと言われているんですよ。いろいろあって、時間が取れたのが前日だけだったので。」
「天下の来栖なら、両家に挨拶してから番って決められると思ってた~。」
周囲は驚いた様な反応をみせる。
「余程変な人や、犯罪歴でもない限りは否定されませんよ。電話で両家の了承は得ていますし、問題ないです。俺も実際シグの両親しは会っていませんしね。」
「シグちゃんって言うんだね~っ。いやぁ、どんな子かなぁ~。こんなに櫂ちゃんをメロメロにするシグちゃんに会いたいなぁっ。日曜、連れてきてもいいんだよぉ?」
「ほう、それはいいな。俺も気になる。櫂斗、連れてこい。」
先輩と生徒会長が面白そうに命令してくる。
「お断りします。寮でしっかり休んで貰う予定なので。先輩達と絡ませると疲労が溜まりそうですし。今日はこれで終わりですよね?帰りますので、お疲れ様でした。」
これ以上ここにいると、ずっと揶揄われかねない。いそいそと荷物をまとめて生徒会室を出る。
時雨に連絡しないとな。
『シグ、終わったよ。今から帰る。』
足早に寮に向かって足を進めていると残り僅かといった所で返信が返ってきた。
『お疲れ様。そのまま3階の右側の部屋に来て?』
3階の右側?部屋にいるんじゃないのか?
会った先輩方でもない為、怪訝に思いながらも急いで指定された場所に向かう。
301と書かれた部屋のインターホンを鳴らすと中から笑顔の時雨が出てきた。
「おかえりなさいっ。」
櫂斗Side fin.
~お知らせ~ 2021.12.01
※私生活が多忙な為、12月より、2日に1度の更新頻度に暫くの間なります💦
なるべく更新出来る時は2日に関わらず投稿していきます(^^)
やや不定期気味にはなりますが、今後ともよろしくお願い致します。
朝起きると、櫂斗から今日は朝から生徒会の呼び出しがかかったと言われた。
まだひと月ほどしか一緒にいないのに、櫂斗がいない事に違和感がある。
昨日は随分情け無い所を見られてしまった。
しっかり寝て、櫂斗の香りにも癒されたからか翌日に持ち越すことなく過ごす事が出来ている。
「いってらっしゃい。」
頬に口づけを落として、「行きなく無い」と呟く櫂斗を玄関で宥めて見送り、さて、今日は何しようかと考える。
入学前の課題はもう終わってしまったし、部屋の片付けも済んでいる。
外に出る用事も無いしなぁ…。
昨日買った本を今日は読み漁る事にし、部屋から紙袋を持ってきて、ソファに保たれて読む事にした。
書斎の棚も櫂斗と決めて、信頼できる業者が土曜に出かけている間に入れていてくれるらしい。
紅茶を淹れてからソファに沈む。
1冊をあっという間に読み終わり、次の本に手を伸ばした際に突然ふっと頭によぎる。
土曜って、櫂斗のご実家に行く以外に何かあったような……。
本を一度置き、何だっけ?とスケジュールを確認する。
そういえば、診察が入っていた。9時半からだから、まぁ行ってからでも間に合うだろう。
櫂斗に伝えておかないと…と忘れないようにメモをして机に置いておく。
再び本に没頭していると、突然チャイムが鳴った。
時刻はお昼ごろ。羽衣先輩あたりがご飯でも誘いに来てくれたのかな?と思い、モニターを覗く。
みると、昨日エレベーターの所であった2人組が立っていた。
思わずギョッとするも、とりあえず要件を聞かなければと思い通話ボタンを押す。
「はい。月見里です。」
『突然すみません。昨日の事でお話しがあるので、少し出てきて頂けませんか?』
櫂斗もいないし、知らない状況で威圧もされた相手に会うのは正直怖い。でも、昨日とは雰囲気が異なるし、とりあえず話だけ聞こうと思い少し待ってもらえるように伝える。
マスクをつけて、何かあってもいいように携帯を握りしめて玄関に向かう。
「な、何の御用でしょうか…」
扉を半分だけ開けて、顔だけ出し様子を伺う。
「…。昨日は、申し訳ありませんでした。」
長身の威圧をしてきた男性が少しの沈黙の後頭を下げた。
「へ…。」
「昨日はごめんね?怖かったっしょ?体調はどう?昨日は丁度色々あって気も立ってて知らない君を見て、つい威圧フェロモンが出ちゃったみたい。
かっちゃんもあの後すっごい反省してたから、とりあえず謝罪の言葉だけは受け取ってほしいな~。」
口調の軽い男性が長身の男性の背中をバシバシ叩きながら言う。
思わぬ訪問と謝罪の言葉に呆然とするも、今後もこう言う事があると精神的にも身体的にも非常に困る。
とりあえず言いたい事は伝えておこうと、勇気を出して向き合う事にした。
「…謝罪の言葉は受け取ります。ワザとでは無い事も、わかりました。
ですが、事情があるにしろ、こちらの言葉も聞かずに突然威圧されるのは、僕だけでは無く他の人にも辞めて頂きたいです。
αの威圧は、耐性のないΩにとっては身体に物凄く負担がかかります。強さによっては、心臓も止まるくらいには。
番ったとしても、影響を受けないのは発情を促したりする事がないというだけで、威圧などの相手を屈服させる力は少なからず影響を与えますので。
僕が言いたい事は以上です。」
櫂斗と番っていたため、あれくらいで済んでいるが何も無ければ酷い状況になっていたのはわかる。
やった事の重さはしっかり反省してほしい。
「…本当にすみませんでした。今後は、この様な事は無いとお約束します。」
再度深く頭を下げると、軽い口調の先輩も頭を下げ「すみませんでした。」と謝ってきた。
顔は真剣で、反省しているのはわかった。
今回の事は、櫂斗もいたし僕自身は結局何事も無く終わっている。引きずって寮で会う度に気まずくなり生活しにくい方が頂けない。
「もう、いいですから。反省は伝わりました。今後は寮でもお世話になると思いますので、謝罪はこれまでにしましょう。
水には流しませんが、僕は今回の事はこれ以上追求するつもりはありません。
何かあれば、頼らせて頂きますので今後は仲良くして下さいね。先輩方。」
扉からしっかりと体を出して、ペコリと一礼する。
先輩方は呆けた様な表情をしていたが、フッと笑い、
「ええ。わかりました。何かあれば、いつでもどうぞ。名乗ってもいませんでしたね。私は山本克樹と申します。」
「俺は長谷川郁ねー!俺たちは3階に住んでるから、いつでもおいでっ⭐︎」
「月見里時雨です。よろしくお願いします。」
「では、今日は謝罪に来ただけなので。これで失礼します。」軽く一礼するとさっと後ろを向け、エレベーターに向かって歩き出す。
折角足を運んで貰ったし、こういう時はお茶でも出した方が良いのだろうか?
今まで客人対応なんてした事がないから普通がわからない。
「あの、」
くるっと克樹が振り向く。
「どうしました?」
「…折角来て頂きましたし、お茶でも飲んで行かれますか…?」
2人は番同士で顔を見合わせるとプッと破顔し、「では、お邪魔しても良いですか?」「飲むーっ!」と足を止めた。
間違って無かったと思い、ほっとして頬を緩める。
「では、こちらにどうぞ。」
ガチャリと扉を開こうとドアノブを引いたが…
「……開かない…?」
あれ、何でだろう。
1人ではてなマークを浮かべていると、後ろから声がかかった。
「扉、防犯対策でオートロックですよ。カードはお持ちですか?」
「…………。部屋の、中に…。」
この2日間櫂斗に任せっきりで失念していた。
櫂斗はいないし、帰ってくるのはもう暫く後だ。
どうしよう…。やっちゃったぁ~~
はぁとため息をついていると、
「俺達の部屋くる?なんにも面白いものはないけど、昨日のお詫びにお菓子でも出しちゃうよっ!」
「ええ、来栖は僕達が来たのに出てこないという事はいないのでしょう?寮長達も今は部活で出払っていますし。帰って来るまで、是非どうぞ。」
「お世話になります…。」
部屋は電気も暖房もつけたままだが、戸締まりはしてある。
少し勿体無いが、仕方あるまい。
ペコリと再度御礼をいい、櫂斗に急ぎでは無い為、終わったら連絡してもらえる様に伝えて先輩達の部屋に向かった。
Side櫂斗
先輩達との顔合わせが無事に終了し、そのまま入学式の準備や新入生歓迎会の話し合いを行う事になった。
午後いっぱいかかりそうだ。
時雨はどうしているだろうか。昨日大量に本を購入していたから、リビングで本に没頭してそうだな。
食堂で先輩方と昼食を取っていると、メールの通知が来た。時雨からだ。何かあったか?
すぐにメールを開いて何事もない様で安心する。
『仕事お疲れ様。
体調は問題無いから心配しないで、生徒会頑張ってね。
終わったら連絡くれると嬉しい。
あ、何かあるわけじゃ無いから、急がなくていいからね!!!!』
終わったら連絡してほしいって、何故だろうか。
不思議に思いながらも、何もない事が強調されている為『わかった』と返信を送る。
「櫂ちゃん、嬉しそうだねぇ~。番ちゃん?」
ニマニマと先輩が横から唆してくる。
「番からですよ。先輩が思ってるような事は無いので安心して下さいね。さ、休憩終わって早く打ち合わせしますよ。」
「えぇ~?櫂ちゃんがいなくて寂しいっ!早く帰ってきて~っ!とかないのぉ?」
「無いです。どちらかと言うと、しっかり仕事しないとむくれるタイプです。体は弱いですが意志はしっかりしてるので、不安定な時以外はそんな事はいいません。」
スパッと切って、まだグダグダと妄想を述べる先輩を引きずり、生徒会室へと戻った。
「じゃ、今日のところはこの辺で。次は入学式前日、日曜の10時から。入学式の最終調整、設営及びリハーサルを行う。」
生徒会長が次の集まりをいう。
「会長、すみません。土曜に実家に帰る事になってまして、泊まりになりそうなので場合によっては10時に来れないかもしれないです。」
「ああ?土曜に帰るたぁ、ギリギリだな。まぁ、設営が先で、お前は担当してないからな。最悪休憩後の13時に来ればいい。」
7時前に出るのは流石に避けたい。13時であれば問題ないだろう。
「すみません。ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。」
「珍しいね~。櫂ちゃんがギリギリに帰るの。何かあるの~?」
「父に入学前に一度番に会わせなさいと言われているんですよ。いろいろあって、時間が取れたのが前日だけだったので。」
「天下の来栖なら、両家に挨拶してから番って決められると思ってた~。」
周囲は驚いた様な反応をみせる。
「余程変な人や、犯罪歴でもない限りは否定されませんよ。電話で両家の了承は得ていますし、問題ないです。俺も実際シグの両親しは会っていませんしね。」
「シグちゃんって言うんだね~っ。いやぁ、どんな子かなぁ~。こんなに櫂ちゃんをメロメロにするシグちゃんに会いたいなぁっ。日曜、連れてきてもいいんだよぉ?」
「ほう、それはいいな。俺も気になる。櫂斗、連れてこい。」
先輩と生徒会長が面白そうに命令してくる。
「お断りします。寮でしっかり休んで貰う予定なので。先輩達と絡ませると疲労が溜まりそうですし。今日はこれで終わりですよね?帰りますので、お疲れ様でした。」
これ以上ここにいると、ずっと揶揄われかねない。いそいそと荷物をまとめて生徒会室を出る。
時雨に連絡しないとな。
『シグ、終わったよ。今から帰る。』
足早に寮に向かって足を進めていると残り僅かといった所で返信が返ってきた。
『お疲れ様。そのまま3階の右側の部屋に来て?』
3階の右側?部屋にいるんじゃないのか?
会った先輩方でもない為、怪訝に思いながらも急いで指定された場所に向かう。
301と書かれた部屋のインターホンを鳴らすと中から笑顔の時雨が出てきた。
「おかえりなさいっ。」
櫂斗Side fin.
~お知らせ~ 2021.12.01
※私生活が多忙な為、12月より、2日に1度の更新頻度に暫くの間なります💦
なるべく更新出来る時は2日に関わらず投稿していきます(^^)
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