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学園入寮編
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31話、帰室後櫂斗side
「ヒックヒック…」
抱きついたまま泣き止まない時雨をリビングのソファで宥めすかす。
身体が小刻みに震えており、首に巻きつく手はかなり力が入っている。
時雨の家族は温和な性格で、敵意に当てられたことのない時雨の初めての経験だったのだろう。
白屋先生は時雨が落ち着くまで待ってくれるようで、ソファーの斜め前のオットマンに座っている。
10分ほどしてようやく泣き止み、泣いて赤い目をこちらに向けた。
「シグ、落ち着いたか?」
こっくりと頷くが、身体がだるいのかまた体を預けてきた。
「月見里君、一度診察しても良いですか?」
再びこっくりと頷いた為、ベッドに移動して時雨を横にする。
聴診器や血圧計を取り出し、時折時雨に確認しながら診察を進めていたが、特に異常は見当たらなかったようで安心する。
「少し脈が速いので、今日は安静に。疲労が溜まっているのだと思います。
何か有れば、夜中でも連絡して下さいね。」
「ありがとうございます。」
時雨はぼぉっとしているようで、いつもならお礼を言っているが何も発さない。
「シグ、何があったかは想像がつく。あの2人にはもう会わせないようにするから安心して?」
アイツらの事は知らないが、シグに暴言を吐くなり威圧したりしたのであろう。
どう、落とし前をつけようか…
「……いい。あの人たちの、せーじゃない。何もしないで…ここにいて…。」
「…わかった。」
シグの言う事は絶対だ。極力その通りにしてあげたい。温情なんて必要ないのに、と内心思いながらも引き下がる。
「では、私はこれで。お大事に。」
白屋先生が帰るというため、玄関まで見送りに行く。
「先生、ありがとうございました。伝言をお願いしてもいいですか?
シグがアイツらのせいじゃないと言うので、今回は無かったことにします。でも、次は無いと。それから、修一先輩が罰則でも与えてると思うのでお任せします、と。」
「了解しました。しっかり伝えておきますね。」
先生が帰宅した為、時雨の元へと急ぐ。
「シグ、今日はもう休もう。お風呂は?」
「あしたでいい…」
「そう、楽な服に着替えようか。着替えれそう?」
コクン。
服を用意して、ノロノロと服を脱ぐ時雨を尻目に湯とタオルを準備し、体を拭く。
着替え終わると、毛布に包まり丸まってしまった。
「俺もシャワー浴びてくるから、少しだけ待ってて?」
毛布がモゾっと動いた為、頷いたのだろう。
急いで片付けをしてシャワーを浴びる。
本当に入寮してから、余計な事をする輩が多い。
ただでさえ、知らない環境で馴染もうと必死な所なのに…
怒りで圧が出そうになるのを必死で抑える。
暫く水を被りながら冷静になり、体を洗って出る。
「おまたせ。」
丸まっている毛布事時雨を抱き締める。
ピクリと動きがあるため、まだ眠っていないのだろう。
「今日は疲れただろ?側にいるから寝な。」
「抱きついても、いい?」
「いいぞ。」
毛布の片側が俺の体にかかり、そのまま中で時雨がお腹にくっついてきた。
心無しか、クンクンと匂いを嗅がれている。
クスリと笑い、少し香りを強くすると嬉しそうにぐりぐりと頭を撫でつけてきた。
「おやすみ。」
一言言うと、直ぐに寝息が聞こえ始めた。
あまりの早さに驚く。
俺はまだ19時過ぎなんて寝られる時間では無いため、起こさないように携帯端末を弄りながらいつもの様に株やメールを確認していく。
メールは何通かあるが、母から連絡が来ている。
『カイの番の子は何が好きかしら?お料理作ってまっておくから、メールしてきなさい。』
ときている。
『食事はあまり食べない。果物と消化にいいものなら食べるから、果物準備しておいて。キウイはアレルギーだからNGで。
紅茶好きだから、紅茶もあるといい。出来ればアールグレイで。』
直ぐに返信が返ってくる。この人は暇なのか?
『分かったわ。会えるのすっごく楽しみにしてるから、櫂斗の都合で来なかったらXXXだからねっ』
息子を脅すなんて何て母親だ。途中で行かなくてもいいかと思い出していた息子の心中を把握しているのは流石だが、脅しにかかるとは…
まぁ,時雨も挨拶はしたいと言っているし、仕方がない。観念して腹をくくろう……。
他のメールも確認していると、生徒会の先輩からも来ている。
『やっほー。櫂ちゃん元気~?番の子はどうかな?
この前の顔合わせ出来なかったから、できたら明日か、日曜までにはしておきたいんだけど。
入学式の代表挨拶櫂ちゃんだし、リハも来てもらわないといけないからね~
いつならこれる~?』
そういえば、顔合わせの日に時雨と出会ったんだった。
いつもであれば連絡をしていたが、完璧に忘れていた。
謝罪の言葉と共に、明日であれば可能と送り返す。先輩方にはお世話になった為、時雨の無事も添えて。
買うものはある程度終えたし、明日はゆっくりする予定だった為問題ないだろう。
時雨も別に俺がいないと動けない訳ではないし、必要であれば羽衣先輩か鳴先輩の所にいて貰えばいい。
明日は何事もなく終わる様に祈っておこう…
櫂斗Side fin.
「ヒックヒック…」
抱きついたまま泣き止まない時雨をリビングのソファで宥めすかす。
身体が小刻みに震えており、首に巻きつく手はかなり力が入っている。
時雨の家族は温和な性格で、敵意に当てられたことのない時雨の初めての経験だったのだろう。
白屋先生は時雨が落ち着くまで待ってくれるようで、ソファーの斜め前のオットマンに座っている。
10分ほどしてようやく泣き止み、泣いて赤い目をこちらに向けた。
「シグ、落ち着いたか?」
こっくりと頷くが、身体がだるいのかまた体を預けてきた。
「月見里君、一度診察しても良いですか?」
再びこっくりと頷いた為、ベッドに移動して時雨を横にする。
聴診器や血圧計を取り出し、時折時雨に確認しながら診察を進めていたが、特に異常は見当たらなかったようで安心する。
「少し脈が速いので、今日は安静に。疲労が溜まっているのだと思います。
何か有れば、夜中でも連絡して下さいね。」
「ありがとうございます。」
時雨はぼぉっとしているようで、いつもならお礼を言っているが何も発さない。
「シグ、何があったかは想像がつく。あの2人にはもう会わせないようにするから安心して?」
アイツらの事は知らないが、シグに暴言を吐くなり威圧したりしたのであろう。
どう、落とし前をつけようか…
「……いい。あの人たちの、せーじゃない。何もしないで…ここにいて…。」
「…わかった。」
シグの言う事は絶対だ。極力その通りにしてあげたい。温情なんて必要ないのに、と内心思いながらも引き下がる。
「では、私はこれで。お大事に。」
白屋先生が帰るというため、玄関まで見送りに行く。
「先生、ありがとうございました。伝言をお願いしてもいいですか?
シグがアイツらのせいじゃないと言うので、今回は無かったことにします。でも、次は無いと。それから、修一先輩が罰則でも与えてると思うのでお任せします、と。」
「了解しました。しっかり伝えておきますね。」
先生が帰宅した為、時雨の元へと急ぐ。
「シグ、今日はもう休もう。お風呂は?」
「あしたでいい…」
「そう、楽な服に着替えようか。着替えれそう?」
コクン。
服を用意して、ノロノロと服を脱ぐ時雨を尻目に湯とタオルを準備し、体を拭く。
着替え終わると、毛布に包まり丸まってしまった。
「俺もシャワー浴びてくるから、少しだけ待ってて?」
毛布がモゾっと動いた為、頷いたのだろう。
急いで片付けをしてシャワーを浴びる。
本当に入寮してから、余計な事をする輩が多い。
ただでさえ、知らない環境で馴染もうと必死な所なのに…
怒りで圧が出そうになるのを必死で抑える。
暫く水を被りながら冷静になり、体を洗って出る。
「おまたせ。」
丸まっている毛布事時雨を抱き締める。
ピクリと動きがあるため、まだ眠っていないのだろう。
「今日は疲れただろ?側にいるから寝な。」
「抱きついても、いい?」
「いいぞ。」
毛布の片側が俺の体にかかり、そのまま中で時雨がお腹にくっついてきた。
心無しか、クンクンと匂いを嗅がれている。
クスリと笑い、少し香りを強くすると嬉しそうにぐりぐりと頭を撫でつけてきた。
「おやすみ。」
一言言うと、直ぐに寝息が聞こえ始めた。
あまりの早さに驚く。
俺はまだ19時過ぎなんて寝られる時間では無いため、起こさないように携帯端末を弄りながらいつもの様に株やメールを確認していく。
メールは何通かあるが、母から連絡が来ている。
『カイの番の子は何が好きかしら?お料理作ってまっておくから、メールしてきなさい。』
ときている。
『食事はあまり食べない。果物と消化にいいものなら食べるから、果物準備しておいて。キウイはアレルギーだからNGで。
紅茶好きだから、紅茶もあるといい。出来ればアールグレイで。』
直ぐに返信が返ってくる。この人は暇なのか?
『分かったわ。会えるのすっごく楽しみにしてるから、櫂斗の都合で来なかったらXXXだからねっ』
息子を脅すなんて何て母親だ。途中で行かなくてもいいかと思い出していた息子の心中を把握しているのは流石だが、脅しにかかるとは…
まぁ,時雨も挨拶はしたいと言っているし、仕方がない。観念して腹をくくろう……。
他のメールも確認していると、生徒会の先輩からも来ている。
『やっほー。櫂ちゃん元気~?番の子はどうかな?
この前の顔合わせ出来なかったから、できたら明日か、日曜までにはしておきたいんだけど。
入学式の代表挨拶櫂ちゃんだし、リハも来てもらわないといけないからね~
いつならこれる~?』
そういえば、顔合わせの日に時雨と出会ったんだった。
いつもであれば連絡をしていたが、完璧に忘れていた。
謝罪の言葉と共に、明日であれば可能と送り返す。先輩方にはお世話になった為、時雨の無事も添えて。
買うものはある程度終えたし、明日はゆっくりする予定だった為問題ないだろう。
時雨も別に俺がいないと動けない訳ではないし、必要であれば羽衣先輩か鳴先輩の所にいて貰えばいい。
明日は何事もなく終わる様に祈っておこう…
櫂斗Side fin.
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