【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている

卯崎瑛珠

文字の大きさ
27 / 75
第三章 疑惑!? 騒動! 解決!!

27

しおりを挟む


 舞踏会の後の日常は、忙しくてとても充実していた。
 書類仕事の他に、お茶や裁縫の講習を受けたりして、だいぶ上達したように思う。
 
 ちなみに、ロザンナさんたちへのお礼は、きれいな刺繍のハンカチにしたら、とっても喜んでもらえた! レナートとまたデートしたのねーってからかわれたけど。デートじゃないです、買い出しです。
 
 練習ついでに食堂でお茶の時間を設けてみたら、騎士たち、飲みに来てくれるようになった。一緒にお茶して仲良くなれたし、なによりみんなとゆっくり話ができるようになって、色々なことが分かってきた。

 特に書類関係の不満や疑問を雑談で聞くことができたのは、大きな収穫だと思う。それらをレナートと相談して改善するようにしたら、みんなの顔が明るくなった。
 騎士として来たのに、ほとんど文字書いて一日終わるとかー! などという愚痴は、確かに! と思った。みんながみんな、読み書きが得意なわけではない。
 中でも報告書は、そもそも何を書けば良いのか分からない、という声が多かった。それについては、私が『お手本』を作ることで解消。レナートも「問題がないことが分かれば良いし、問題があれば、それを書けば良い」と自由にさせてくれた。ほんと心が広い!
 
 視察後、覚えとけよ! と豪語していたボイドは……ヤンの不在によって絶賛不完全燃焼中。
「すみません、家庭の事情で。ご迷惑おかけします」
 とヤンは長期の休みをもらっている。その間、じゃあ私の護衛はというと。
 
「キーラちゃん、今日はこっち?」
「はい!」

 様々な団員と一緒に、積極的に雑用をするようにしたら、心配そのものがいらなくなってきた。
 少しでも騎士団員の顔と名前を覚えたいからと、手伝うようになったのだけれど、これが功を奏した。それに、
「危ない目にあったんだって? ここで作業したら良いよ」
 と善意で守ってくれる騎士たちも、当然存在していた。もしかしたら、ヤンが何かしてくれたのかもしれない。
 
 レナートが改めて調査したところによると、『素行の悪い』騎士団員たちはボイド傘下。その他は、報復が怖くて嫌々従っていたということらしい。
 アーチーの街中での『告白』によって数名の仲間が処分・解雇され、王都での代金踏み倒しは王宮へも報告されるに至り、少しずつだけれど、平和になりつつある。

「キーラのおかげだ」
 レナートがそう言うので、大したことはしていないですよ、と返したら。
「この『写し』のおかげで不正に金を得ることが難しくなっただろう?」
「はい、そうですね」
「資金源がないと、人はついてこないものだ。悪者は特に、な」
 とのありがたいお言葉が。
 レナートも、だいぶ表情が柔らかくなってきて――時々可愛いなって思っている。本人には言えないけど。


 さて今日は練習用の武器磨きの日。
 演習場脇のベンチで一生懸命に布で拭いているわけだが、とにかく数が多いので、大変!
 
「うわわ、剣が終わったら次は槍ですか?」

 傍らに、山のようになっている刃のつぶされた剣の数々は、少しだけ輝きを取り戻していた。
 それらをガシャガシャと持っていきながら、団員たちが苦笑する。
 
「そー。あと弓と、ナイフと、盾ね」
「ひえええ。大変ですね! みなさん。すごいです」
「キーラちゃんに褒められたら、やる気出るなあ」
「うんうん。がんばっちゃうね」
「ほんとですか? じゃあ、いっぱい褒めます!」

 なんていう、和やかな日々が、とても嬉しかった。



 ◇ ◇ ◇
 


「要人接待? ですか」
「そうだ。今朝、王宮から通達が来た」
「ブルザーク帝国って?」
「リマニに住んでいたなら、少しは見たことないか? 軍船」
「あ! 時々沖を横切っていましたね。すごいですよね。大きくて強そうで」
「そうだ。あれが攻めてきたら、メレランドなどひとたまりもないような軍船をいくつも所有している、海の向こうの大国だ。こういった魔道具をそこから買っているんだが」

 レナートは、こんこん、と机上のランプを指でつつく。魔石で点灯する、便利なものだ。
 
「あちらの軍――こちらの騎士団のようなものだが、人材を一新したらしくてな。海軍大将が直々に挨拶に来たいのだそうだ」
「かいぐんたいしょう」
「帝国の、海軍の中で一番偉い」
「ぎょええええ」
「カエルがつぶれたみたいな声だな」
「だって! めちゃくちゃ偉い人じゃないですか! 具体的に何をすれば……」

 レナートが、渋い顔で紙をぺらりぺらりとめくる。

「晩さん会、夜会の護衛、道中の警備、王都巡回。もし王都観光に行きたいと言われたら、その付き添い」
「ぎょええええ」
「死にそうだな」
「ヤンさんは!」
「どうかな。帰って来られたら良いが……」
「ご家庭の事情、でしたっけ」
「そうだな」
「団長、眉毛がすごい下がってます!」
「はあ。なぜこのような小国にわざわざ……」

 小国。そうか、メレランドは小さい王国なんだ。地図を見たら、アルソスは大きいけど、メレランドってこれっぽっちなの? て思ったもんね。
 
「ま、淡々とやるだけ、やろう」
「そうですね!」

 さらに忙しい日々が、バタバタと始まった。



-----------------------------



お読み頂き、ありがとうございました!
イメージで言うと(国土面積)、
ブルザークがアメリカとしたら
アルソスがフランス、
メレランドは台湾くらいです。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました

下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。 そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。 自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。 そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。 小説家になろう様でも投稿しています。 勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

処理中です...