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第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!
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しおりを挟む事務官のお仕事は、いきなり暇になってしまった。
一番隊は、王太子の警護任務でバタバタ。レナートとロランは、お出迎えしてそのまま会議。ヨナターンとボジェクは、帝国の仕事は終わったから早じまいだって、帰り支度を始めるそうだ。
だから、私は団長室でオリヴェルから色々なことを教わっている。分かったことは、帝国は広くて、魔道具の技術がすごい。あと、海軍大将って滅多に会えないくらいに偉い。ヨナターンってあんなだから、あまりそう見えないねって言ったら、ヤンがゲラゲラ笑って、オリヴェルにまた拳骨を食らっていた。ごめんなさい。
「はあー! まだ八日しか経ってないよ? 二十日は居るって言ってたのに。結論も出さなくちゃだよね……」
「どうかお許しを。ああ見えて、大変にお忙しいお方なのです」
オリヴェルは、私の八つ当たりにも優しく接してくれる。
「まだ、決めかねてる感じ?」
ヤンもヤンなりに、気を遣ってくれているみたい。オリヴェルがその口調を叱ったんだけど、そのままが良いのってお願いしてある。
――まだ、怖くて言えないの。
私がブルザークに行くなら、レナートとはお別れになる。
今までだったら、仕方ないなって思えたのに。
「ふむ。どうやら、結論は出ていらっしゃるようですね」
「!」
「……決意ができていらっしゃらない。違いますか?」
「鋭いなあ、オリヴェルってばー」
思わず机に突っ伏してしまった。
「恐縮です」
「わがまま、言っちゃえばいーんでないの?」
「う……」
「こら、ヤン」
「さーせん!」
私は、怖いのだ。
「あのね……皇帝の妹が、どんな立場なのか……私には分からないの。だから、何も言えなくて。ごめんなさい」
だって、あんな王女の『気に食わないから解雇』が、まかり通るんだ(私のは通らなかったけど)。
たった一言で、誰かの人生を変えてしまえる。迂闊に『わがまま』なんか、言えないよ。
「殿下。迷われたら、いつでも何でも言ってくだされば良いのです。周りがなんとかすることも、できるのですよ」
「そっすよー!」
「……うん。ありがとうございます」
レナートと、離れたくない。
でも。
――レナートの人生を、変えたくない。
◇ ◇ ◇
「うあー、疲れたぁ」
「ロラン! おかえり」
「ただいまあ」
レナートに指摘されてから、みんなに「呼び捨てで良い?」て聞いたら、笑顔でむしろそうして! と言ってくれたロラン。
団長室に戻ってきたそんな銀狐は、化けの皮がだいぶ剥がれている。相当気疲れしているようだ。
「お茶飲む?」
「うん、おねがいぃ~」
もう副団長室にはほとんど戻っていなくて、ここに机持って来ようかな、なんて言っているぐらいに、入り浸っている。
「しっかし、キーラの机さあ、してやられたよね」
「ふふ。さすがに気づかなかったね」
ボイドが用意した私の机は、引き出しの鍵が複製されていた。悪党のくせに、知恵が回る。
「なくなった書類は、案の定クレイグのところにあったよ~。キーラのこと、王太子殿下が褒めてた」
「え? なんで?」
「提出したのを確認した時にね、記録の仕方も綴じ方もとても分かりやすい、だって。皇帝の妹じゃなかったら、嫁にしたかったって言って、ヨナターンとレナートが静かにキレてたー。見せたかった」
「えー? ヨナさんは分かるけど、レナートまで?」
俺の猫を取るなって感じかな?
「あー」
「ふふ。でしょうね」
「えぇ? あ、ヨナさんも王太子殿下と会ったの?」
「あーうん。是非挨拶したいって言われてさ」
「そっかあ。偉い人って、大変だね」
「キーラも、ドレス着てカーテシーで、ってやるんだよ」
「ぎゃー、やめてロラン。言わないで!」
「大丈夫、大丈夫。もうできてる」
「……そ、かもだけど」
私も自分で不思議だったけれど、ダンスやマナー、所作がたった十日でなんとかなったのは……皇帝が教えてくれていたなら納得だ、という結論に達した。
記憶がなくても、身体が覚えていたんだろう、とヨナターンに言われたのだ。
「なるほど、もう帝国に行こうとは思ってるんだね」
「!」
「キーラ。……変に受け取らないで欲しいんだけどさ。キーラが行こうと行くまいと、僕は帝国に行くよ」
「え!」
「ああ、受理されましたか」
「良かったっす!」
「え、え、え!」
「僕は、ビゼー伯爵家から抜けて、帝国での伯爵位を賜ります……破格の待遇だけれど、ヨナが推挙してくれていてね。伯爵なら、キーラとの謁見もできて便利なんだって。安心した?」
「すごい!」
嬉しい! 嬉しい!
「安心っていうか……ほんと、良かった……」
「そう言ってくれて、嬉しいな」
だってね。ロランもタウンハウスに泊まるってなった時に打ち明けてくれて思ったんだけど、男だろうと女だろうと、誰を好きになっても良いじゃない?
そんなことぐらいで病気とか、意味が分からないもの!
「だから、キーラが良かったら、その、僕を家族みたいに思ってくれたら嬉しいな」
――嬉しい!!
「ありがと、ロラン!」
この人は、最初から――ずっと前から、私を探し続けて。見つけてくれて。どうしたら良いのか、どう連れて行こうか、私を思ってそっと寄り添ってくれていた。
優しくて、賢い、私の自慢の。
「お兄様!」
「わあ! それってめちゃくちゃ嬉しいなあ、キーラ!」
同じ目の色同士で、笑い合って。
お茶を淹れるのも忘れてぎゅーって抱き合っていたら、オリヴェルが淹れてくれていて。
飲んでみたら、私のよりもずっとずっと美味しくて。
「んもー! オリヴェルすごい! 悔しい!」
「恐縮です」
みんなで、笑った。
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