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~第2章~
シオンLOVE
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次の瞬間、ケントは俺の目の前にいた。
うお!ビックリした。
こいつ、俺が瞬きした瞬間を狙ったな?
でもまあ、今のは牽制だろ。
殺気もなくなっ。
20センチほどの距離にいるケントは、いつのまにか手に持っていた短剣を俺の左脇腹に向かって振ってきた。
「てるっ!?」
俺は服を破りながらも避け、ケントと距離をとる。
ケントは確かに殺気は無かったし、今もない。
つまりこいつは殺気を消して殺そうとした…?
「なんつー奴だよ。」
ケントは俺の予測。予想ではなく予測。そしてその反対の行動をした。
つまり俺の危機察知能力の本質に気付いて…?いやまさか気付かれて………。
目の前のケントは不敵な笑みを浮かべていた。
まるで金持ちを騙せた詐欺師のような、まるで巣に蝶がかかった蜘蛛のような、そんな不敵な笑みを。
「いるんだな…こりゃ。」
さてと、ここはお約束通りに聞いておこう。
「なんでこんな事をした?」
ケントは短剣を腰に付けた鞘に刺すと、さっきまでの不敵な笑みが嘘のように爽やかな笑みを浮かべた。
「私は国に仕えているのではなく、シオン姫に仕えているからです。」
これはまたありきたりな…。
つまりはシオンを倒した俺を殺したいと…。
「お前はゆとり世代の親か!?何でもかんでも大人が邪魔な物をどけても子供は育たんぞ!!」
俺もゆとり世代だけどね!!
「邪魔な物?まさか、貴方の事を邪魔だとは思っていませんよ?」
あれ…?
「ただの土台です。高みに登るための土台。とても重要な存在です。」
よかった。俺の考えと対して差はなかった。
ただ、一つ分からない。
もし、シオンLOVEシオンだけいればいいシオン愛してる、という事ならケントに高みに登る必要はない。
もちろん姫であるシオンに近づくためになら力も必要だ。
でもケントは十分に強い。
シオンとは土俵が違うが、強さとしてのレベルならシオンと同等かそれ以上の強さだ。
だがそれ以前にケントに強さは必要はない。
勇者として姫と結婚するとか、膨大な支援の代わりに姫を要求するとかよりも、召使いとしてシオンに使え、いずれはシオン専属の召使いになる。最も現実的で最も可能性の高い、そして最もシオンに近づける方法。
それを考える力のある奴がこれだけの力をつける必要はない。
シオンを守るため、という理由で強くなったのなら殺気を隠すような必要はないし、結局のところあそこまでの強さはいらないと言う答えに戻る。
…人を殺す事を作業としか思えない人格…破綻…者………?
と言うか。
「お前も自分の命どうでもいい系人間かあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
◆◆◆
「やだ…もう、なんか…死にたい。」
マニュアル(お約束)通り叫んだ俺は、ケントに「えっ…コイツ急に何?」と言う顔で見られ、精神的に死んでいた。
「…なぜ膝を抱えて丸まっているのですか?」
「現状説明ありがとう。…でも心配するならその短剣はしまってくれ?」
そして落ち込んでいる間にも、5回ほどケントに殺されかけていた。
というかシオンといいケントといい、契約を気にしなさすぎだ。
俺じゃなかったら今頃大量出血だぞ。
…大量出血?
なんで俺は〈死んでた〉じゃなくて〈大量出血〉と言った?
………。
「よいしょっと。」
俺が立ち上がるとケントは2メートルほど距離をとった。
「………えい!」
たかが数メートルだ。
俺は動く暇を与えないスピードで、さらに殺気を全開にしてケントとの距離を詰めた。
普段武器をもたないというのは、こういう時に役に立つな。
「っ!」
次の瞬間、ケントは素早く短剣を抜き、俺の右肩を狙ってきた。
やっぱりか。
俺はケントを受け流すように避け、ケントと距離をとる。
これならケントはシオンほどめんどくさくはないか。
「もういいや。お前じゃ相手にならん。」
俺はケントに背を向け、丸太を積んだ荷台に腰を下ろした。
「つまり、シオン姫のようになれと?」
大当たり。
だが答えは大ハズレだ。
「それじゃ~ダメなんだなぁ~。」
わざとにやけてケントを見ると、イラ立ったように目元をピクッとさせた。
「シオン姫が間違っていると?」
「そうだ。」
即答した。迷う余地もない答え。
その答えにケントは一歩足を踏み出す。
「今、一瞬我を失ったろ。」
無言。
「自分の追いかけている相手を間違いだと言われて怒ったのか?」
沈黙。
「だがまだマシ、いや上出来だ。今のお前はシオンよりも強いよ。十二分に。」
緘黙。
「一瞬我を失ったが、その時の行動は小さく、我に帰るまでの時間も短かった。もう一度言う。図星を突かれて我を失うシオンよりもお前は強い。」
次の瞬間、ケントは俺の目の前にいた。
お?こいつやっぱり。
そしてケントは殺気を消し。今度は迷いなく俺の首に短剣を振る。
「俺の弟子にならないか?ケント。」
剣先がすこし首に触れた所で短剣が止まった。
うお!ビックリした。
こいつ、俺が瞬きした瞬間を狙ったな?
でもまあ、今のは牽制だろ。
殺気もなくなっ。
20センチほどの距離にいるケントは、いつのまにか手に持っていた短剣を俺の左脇腹に向かって振ってきた。
「てるっ!?」
俺は服を破りながらも避け、ケントと距離をとる。
ケントは確かに殺気は無かったし、今もない。
つまりこいつは殺気を消して殺そうとした…?
「なんつー奴だよ。」
ケントは俺の予測。予想ではなく予測。そしてその反対の行動をした。
つまり俺の危機察知能力の本質に気付いて…?いやまさか気付かれて………。
目の前のケントは不敵な笑みを浮かべていた。
まるで金持ちを騙せた詐欺師のような、まるで巣に蝶がかかった蜘蛛のような、そんな不敵な笑みを。
「いるんだな…こりゃ。」
さてと、ここはお約束通りに聞いておこう。
「なんでこんな事をした?」
ケントは短剣を腰に付けた鞘に刺すと、さっきまでの不敵な笑みが嘘のように爽やかな笑みを浮かべた。
「私は国に仕えているのではなく、シオン姫に仕えているからです。」
これはまたありきたりな…。
つまりはシオンを倒した俺を殺したいと…。
「お前はゆとり世代の親か!?何でもかんでも大人が邪魔な物をどけても子供は育たんぞ!!」
俺もゆとり世代だけどね!!
「邪魔な物?まさか、貴方の事を邪魔だとは思っていませんよ?」
あれ…?
「ただの土台です。高みに登るための土台。とても重要な存在です。」
よかった。俺の考えと対して差はなかった。
ただ、一つ分からない。
もし、シオンLOVEシオンだけいればいいシオン愛してる、という事ならケントに高みに登る必要はない。
もちろん姫であるシオンに近づくためになら力も必要だ。
でもケントは十分に強い。
シオンとは土俵が違うが、強さとしてのレベルならシオンと同等かそれ以上の強さだ。
だがそれ以前にケントに強さは必要はない。
勇者として姫と結婚するとか、膨大な支援の代わりに姫を要求するとかよりも、召使いとしてシオンに使え、いずれはシオン専属の召使いになる。最も現実的で最も可能性の高い、そして最もシオンに近づける方法。
それを考える力のある奴がこれだけの力をつける必要はない。
シオンを守るため、という理由で強くなったのなら殺気を隠すような必要はないし、結局のところあそこまでの強さはいらないと言う答えに戻る。
…人を殺す事を作業としか思えない人格…破綻…者………?
と言うか。
「お前も自分の命どうでもいい系人間かあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
◆◆◆
「やだ…もう、なんか…死にたい。」
マニュアル(お約束)通り叫んだ俺は、ケントに「えっ…コイツ急に何?」と言う顔で見られ、精神的に死んでいた。
「…なぜ膝を抱えて丸まっているのですか?」
「現状説明ありがとう。…でも心配するならその短剣はしまってくれ?」
そして落ち込んでいる間にも、5回ほどケントに殺されかけていた。
というかシオンといいケントといい、契約を気にしなさすぎだ。
俺じゃなかったら今頃大量出血だぞ。
…大量出血?
なんで俺は〈死んでた〉じゃなくて〈大量出血〉と言った?
………。
「よいしょっと。」
俺が立ち上がるとケントは2メートルほど距離をとった。
「………えい!」
たかが数メートルだ。
俺は動く暇を与えないスピードで、さらに殺気を全開にしてケントとの距離を詰めた。
普段武器をもたないというのは、こういう時に役に立つな。
「っ!」
次の瞬間、ケントは素早く短剣を抜き、俺の右肩を狙ってきた。
やっぱりか。
俺はケントを受け流すように避け、ケントと距離をとる。
これならケントはシオンほどめんどくさくはないか。
「もういいや。お前じゃ相手にならん。」
俺はケントに背を向け、丸太を積んだ荷台に腰を下ろした。
「つまり、シオン姫のようになれと?」
大当たり。
だが答えは大ハズレだ。
「それじゃ~ダメなんだなぁ~。」
わざとにやけてケントを見ると、イラ立ったように目元をピクッとさせた。
「シオン姫が間違っていると?」
「そうだ。」
即答した。迷う余地もない答え。
その答えにケントは一歩足を踏み出す。
「今、一瞬我を失ったろ。」
無言。
「自分の追いかけている相手を間違いだと言われて怒ったのか?」
沈黙。
「だがまだマシ、いや上出来だ。今のお前はシオンよりも強いよ。十二分に。」
緘黙。
「一瞬我を失ったが、その時の行動は小さく、我に帰るまでの時間も短かった。もう一度言う。図星を突かれて我を失うシオンよりもお前は強い。」
次の瞬間、ケントは俺の目の前にいた。
お?こいつやっぱり。
そしてケントは殺気を消し。今度は迷いなく俺の首に短剣を振る。
「俺の弟子にならないか?ケント。」
剣先がすこし首に触れた所で短剣が止まった。
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