3 / 18
~始まりの異変~
ー否定ー
しおりを挟む
「要件は?」
まぁ、次は俺が自ら解放されろ、とかだろうな。
でも
「解放されるのはシェルターの中で最年長の者が選ばれる。心配しなくても最後には……。」
何が起こった?
目の前にはなんとも言えない柔らかい感触と、心の底から安心出来るような優しい匂い。
俺はマリアに抱きしめられていた。
「どう言う事だ。」
「こう言う事です。貴方が少しお疲れのようでしたので。」
疲れる?俺が?一日中部屋にこもって、動きすらしない俺が?
「それは勘違いだな。俺の体は弱いが健康的だ。」
マリアは俺を抱きしめたまま小さく笑った。
「確かに体は元気かも知れませんね。」
マリアは俺の髪を撫でる。
「でも、疲れとは体だけではありませんよ?」
体以外に何がある。
「……辛かったのでしょう?」
ピシッ。
「……苦しかったのでしょう?」
パキッ。
「……1人、寂しかっ」
「やめろ。」
俺はマリアの腕を払って、石材の廊下に座り込む。
「何故だ、何故お前はそんな目で俺を見」
すると慣れない感触が俺の頬を伝った。
なんだ?
「水漏れ?」
すると、マリアがまた。
しかしさっきよりも強く、大きく、優しく抱きしめた。
「やめろ。」
「貴方が泣き止んだらやめます。」
泣く?俺が?
目を触ると、確かに涙が溢れていた。絶えることなく。
しかしこれはおそらく感情ではない。体の異常。
なるほど、こいつの言う疲れは心の事か……だが。
「死神に心はない。」
「そう、かもしれませんね。でも貴方は死神じゃない。1人の人間。優しい人間。」
優しい?
「この人殺しが?」
するとマリアは、どこか寂しい表情を浮かべた。
「人殺し、ですか。確かに貴方は人殺しに似た行為をしたかも知れません。でも、本当にただの人殺しなら涙は出ませんよ。」
だから違う。
これは
「体の異常だ。感情ではない、だから俺に心はない。」
あってはいけない。
仕事に支障が出てしま
「仕事に忠実なのが正しい訳ではありませんよ?」
マリアは俺の心を読んだかのように否定した。
「貴方の事を心配する人もいると知ってください。」
マリアは小さく笑い、俺の目尻の涙を指で拭うと。
「ごめんなさい時間がなくて」と会釈をしてそそくさと何処かへ行ってしまった。
少しして、俺はやっと現状を把握出来た。
しかし、何故マリアはあんな事をしたのか、そして何故俺は泣いたのか。
それは分からないままだった。
「なんなんだあいつは…。」
まぁ、次は俺が自ら解放されろ、とかだろうな。
でも
「解放されるのはシェルターの中で最年長の者が選ばれる。心配しなくても最後には……。」
何が起こった?
目の前にはなんとも言えない柔らかい感触と、心の底から安心出来るような優しい匂い。
俺はマリアに抱きしめられていた。
「どう言う事だ。」
「こう言う事です。貴方が少しお疲れのようでしたので。」
疲れる?俺が?一日中部屋にこもって、動きすらしない俺が?
「それは勘違いだな。俺の体は弱いが健康的だ。」
マリアは俺を抱きしめたまま小さく笑った。
「確かに体は元気かも知れませんね。」
マリアは俺の髪を撫でる。
「でも、疲れとは体だけではありませんよ?」
体以外に何がある。
「……辛かったのでしょう?」
ピシッ。
「……苦しかったのでしょう?」
パキッ。
「……1人、寂しかっ」
「やめろ。」
俺はマリアの腕を払って、石材の廊下に座り込む。
「何故だ、何故お前はそんな目で俺を見」
すると慣れない感触が俺の頬を伝った。
なんだ?
「水漏れ?」
すると、マリアがまた。
しかしさっきよりも強く、大きく、優しく抱きしめた。
「やめろ。」
「貴方が泣き止んだらやめます。」
泣く?俺が?
目を触ると、確かに涙が溢れていた。絶えることなく。
しかしこれはおそらく感情ではない。体の異常。
なるほど、こいつの言う疲れは心の事か……だが。
「死神に心はない。」
「そう、かもしれませんね。でも貴方は死神じゃない。1人の人間。優しい人間。」
優しい?
「この人殺しが?」
するとマリアは、どこか寂しい表情を浮かべた。
「人殺し、ですか。確かに貴方は人殺しに似た行為をしたかも知れません。でも、本当にただの人殺しなら涙は出ませんよ。」
だから違う。
これは
「体の異常だ。感情ではない、だから俺に心はない。」
あってはいけない。
仕事に支障が出てしま
「仕事に忠実なのが正しい訳ではありませんよ?」
マリアは俺の心を読んだかのように否定した。
「貴方の事を心配する人もいると知ってください。」
マリアは小さく笑い、俺の目尻の涙を指で拭うと。
「ごめんなさい時間がなくて」と会釈をしてそそくさと何処かへ行ってしまった。
少しして、俺はやっと現状を把握出来た。
しかし、何故マリアはあんな事をしたのか、そして何故俺は泣いたのか。
それは分からないままだった。
「なんなんだあいつは…。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる