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やりたいこと1 猫に触る
1-3 ノワール・エ・ブラン
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「猫ちゃん、待ってー!待ってったら~!」
陽光が燦々と降り注ぐ色とりどりの花畑を、白猫と黒猫を追いかけて、ルシンダは走る。
「こら、逃げちゃダメ~!おとなしくしなさ~い!うふふふふふふふふ~」
「にゃー」
「にゃーん」
花と草の海を泳ぐように、飛ぶように駆け抜けてきた二匹だったが、何を思ったか、ふと歩みを止めて互いの顔をまじまじと見ると、なぜかいきなり取っ組み合いの遊びを始めた。そこにすかさずルシンダが突進した。
「つっかまえた~!!!!」
むぎゅううううっ
「んにゃっ!!」
「ふぎゅっ!!」
ルシンダは隙を突かれて腕の中でじたばた暴れる二匹の猫にこれでもかと頬擦りし、締まりのない表情をますますうっとりととろけさせた。
(ああ~、あったかくて柔らかくてもふもふ~…ほんとはこんな強引な遊び方しちゃいけないんだろうけど…夢みたい~…)
「…夢を見てるみたいだな…」
聞いたことのない低い声が降ってきたような気がしたが、猫に夢中のルシンダの耳には右から左だった。
(夢ならどうか覚めないで~…お願い、どうかこのまま永遠にもふもふさせて~)
「おい…おい、起きろ!」
(へっ?この声…誰??)
苛立った男の声がやけにはっきりと耳に突き刺さってきてパチッと目を開けたとき、ルシンダはたたんだコートを枕代わりにして地面に横向きに丸まって寝ていた。眠りにつく前に安全と快眠のために展開させておいた半透明の魔法のバリア越しに、真横に伸びた草とたむろする数人分のブーツの脚が見えた。
「…!?」
ガバッと起き上がると同時に魔法のバリアがぱちんと弾けて消え失せた。そこは猫たちが遊び戯れる青空の下の花畑ではなく、木々が鬱蒼と生い茂り薄い靄の立ちこめる朝の森の中だった。ピピピピ、と小鳥のさえずる声もどこからか聞こえていた。
「あ、やっと起きた。小さい女の子が、よくこんな森の奥でひとりで野宿できるね」
「いくら魔法が使えるからって、無防備すぎる気がするが」
「相当いい夢を見てたらしいな。幸せそうな寝言を言ってたぞ」
溜め息混じりの口調で呆れた台詞を投げかけてきたのは軽装備姿の三人の男だ。三十歳過ぎの落ち着いた風貌の者がひとり、成人したてくらいのまだ細身の者がひとり、そして二十代半ばの寡黙そうな者がひとり。身につけている防具には七つの星を模ったこの国の紋章があしらわれていて、地元のごろつきや盗賊団などではないことだけは即座にわかった。ルシンダは口許の涎を慌てて拭い、頬を両手でぺしぺしと叩いて夢の残像を追い払った。
(いけないいけない、ゆうべの触れ合いが楽しすぎて寝過ごしちゃった。人の接近にも気づかないなんて、よっぽど熟睡してたのね…)
ルシンダがまだ地面にぺたんと座ったまま髪をごしごし撫でていると、三人の中で最も年嵩の、隊長風の男が代表するように前に出てきて身分と目的を明かした。
「安心しろ。我々はシュテルンブルク王国王立騎士団第一分隊第二小隊所属の騎士だ。魔物討伐の任務を終えて王都に戻る途中この近くで野営をしていたら、夜の森をひとりでさまよう謎の少女がいるとの報告を受けたので、規則に基づき捜索、調査しに来た」
(報告…?ひょっとして、サントルムの村の夜廻りに見られてたのかなあ。全然気づかなかった…)
男は愛想の欠片もない太い地声で事務的に続ける。
「いかに錬金魔術師といえども、丸腰の少女がひとりで森の奥を歩き回るのは危険すぎる。いったいなぜこんなところに?夜中に森を徘徊して、何をしていたんだ?」
「班長、圧強すぎますって。そんなんじゃまた怖がらせて泣かせちゃいますよ」
童顔の若い騎士に身も蓋もない指摘をされると、身に覚えがあるのか、班長と呼ばれた男は気難しそうに押し黙った。と、若者はルシンダの方に屈み込み、にこやかな笑顔で話しかけた。
「ごめんね、びっくりさせちゃって。僕は見習い騎士のラウル。で、こっちが班長のサリオンと、先輩のジョシュ。君はサントルムの子?名前は何ていうの?」
「えっ…」
ルシンダはぎくりとした。当たり前であるがゆえにかえってその質問は想定していなかった。いや、考えすらしていなかったのだ。本物のルシンダ・オルフェルネスはとっくに死に、この名前が人間の間にまで知れ渡っているとも考えにくいので、本名を名乗っても構わないだろうかとルシンダはとっさに迷ったが、何か心に引っかかるものを感じて踏みとどまった。
(とりあえず本名は伏せといた方が無難かな…だったら…えーい、ままよっ!)
「ル…ルース。ルース・フェルネス…」
かつて姉から呼ばれていた愛称と短くした名字をくっつけて作った即席の偽名は想像した以上に平凡な響きで、三人の騎士もまったく違和感を覚えなかったようだった。ラウルという若い騎士は年上風を吹かせて世話を焼くことのできる対象を見つけたことが嬉しくてたまらない様子だ。
「ルースちゃんだね。それで、ルースちゃんはなんでこんなとこにひとりでいるの?お父さんとお母さんは?」
(あからさまに子供扱いね…実年齢はそんなに変わらないんだけど)
それならば、とルシンダは思いきりしおらしげな鼻声でボソボソと答えた。
「…大切な古い魔法壺を壊しちゃったせいでお師匠様にすごく怒られて、脱走してきたの…お父さんとお母さんは死んじゃって、もういない…」
班長のサリオンが眉根を寄せて間髪入れず尋ねてきた。
「師匠?どこの誰だ。町か村の名前は?」
(うっ…!!)
「…い、言いたくない!」
「し、しかし、言ってもらわねば我々としても対処のしようが…!」
「…!!」
これでどうだ、とルシンダが大粒の両目を潤ませたところへジョシュとラウルがさっと割り込んできた。
「班長、あまり強い口調で詰問すると本当に号泣されて話すどころではなくなる危険性が…。今は何も訊かず、落ち着いてからゆっくり聴き取りをしましょう」
「何も言いたくないなんて、きっと師匠に叱られたことがよっぽどつらかったんですよ。僕にはわかる気がしますけどね。班長も、若いときにはそういうことがあったでしょ?」
「そ、それは…!いや、俺のことはどうでもいいだろう!と、とにかくだ…未成年の浮浪者を見つけた以上ここに置いて戻るわけにいかないから、ひとまず我々と一緒にキャンプに来てもらう。話はそれからだ」
尋問を回避できてラッキー、と安心したのも束の間、ルシンダは飛び上がりそうになった。
(冗談じゃない!せっかく自由気ままなひとり旅ができると思ったのに、騎士団に拘束されるなんて…!)
「い、いえ!私は錬金魔術師で魔法も使えるし、ひとりでも大丈夫ですから…!」
「強がっても駄目だ。そんな服と靴で徒歩の旅は無謀だし、こう言っては何だが、君くらいの年齢の駆け出しがゴブリンやワーグにかなうとも思えない。危険すぎる」
「でも…!」
一応ここまでは無事に来れたんです、とジョシュに反論しようとしたとき、ぐううう、とルシンダの腹が派手に鳴った。昨夜サントルムを出た後ビスケットを数枚食べたきり食事らしい食事をしていないのだ。するとラウルがそれ見たこと、とにやついた。
「何たって、腹ペコじゃ歩けない。そうでしょ?」
「うう…!」
たとえ錬金魔術師でも、天才ルシンダ・オルフェルネスでも食べ物だけは作り出すことができないのだ。旅費も金目の物もなく、今三人をまいて逃げおおせてもこの先食事にありつける望みはない。背に腹はかえられないーー悟った途端に力と元気が出なくなり、ルシンダはとうとう白旗を揚げた。
「わかりました…騎士様たちについていきます…」
その返答を得るとサリオンとジョシュは安堵の笑みを浮かべ、一方ラウルは相変わらず上機嫌でルシンダの頭を撫でた。
「そうそう、いい子だねー。キャンプに着いたら一緒に朝ごはん食べようねー」
ルシンダの唇の端がぴくぴくと吊り上がった。
(こいつ、いちいち子供扱いして…今は言うこと聞いてあげるけど、ごはんもらったらそのうち姿をくらましてやるわ。見てなさいよ)
「では早く戻ろう。我々も朝一から君の捜索に出て、朝飯を食いそびれたからな」
「そうですね。キャンプに着く頃にはあの二人も起きて…いや、さすがにまだ寝てるかな」
「すみません、私のために」
口先では一応詫びを入れ、内心では誰も捜してくれとは言ってない、と文句を垂れながらルシンダはしぶしぶ三人についていった。
麓へと下る道なき道を、騎士たちがあらかじめ木の幹に捺してきていた狩人姫オルガことオーガスティンの魔法のスタンプを頼りに騎士たちとルシンダは歩いた。勾配のきつい箇所や大きめの石がごろごろしている場所ではときどき大人たちの手を借りながら、ひたすら足を動かすことおよそ三十分。そろそろ身体がきつくなってきたとルシンダが感じ始めた頃、樹木の間に人や人工物の姿がちらちらと見えてきた。
こうして四人は騎士団のキャンプ地に到着した。森の中の空き地に簡易のテントがいくつも建てられ、その間をサリオンたちと同じ軽装の人間が忙しく盛んに行き来している。荷物を運んでいる者や洗濯物を干している者、焚き火の側でお茶を飲んでいる者。久しぶりに触れる日常生活の匂いややかましさが不思議と新鮮に感じられ、ルシンダは思わず深呼吸をした。
「第二班班長サリオン、副班長ジョシュ、班員ラウル、ただ今帰還した」
「あ、お疲れ様です、サリオン殿」
「お帰りなさい、班長。女の子は見つかりました?」
「ああ、無事保護した。怪我などもない」
群がってきた騎士たちの中から女性がひとり進み出てルシンダに近づいた。
「向こうのテントに着替えを用意してますので、私が付き添います」
「頼む、テリーザ。だがその前に、人違いということはないと思うが、念のため確認してもらいたい。二人は?」
(二人?)
ルシンダがきょとんとすると、出迎えの騎士たちが答えた。
「それが、二人ともまだ寝てるみたいなんですよ」
「いつもどおりっちゃいつもどおりなんですけど…」
それを聞いたサリオンは渋い表情で腕組みした。
「まあ、そういう取り決めになってるからな…しかたない、先に朝飯にするか」
サリオンが仕切り直すようにそう言ってルシンダと部下たちを促したとき、騎士たちの輪の外からよく通る若い男の声がした。
「それを求められると思って、頑張って起きてきましたよ」
「!」
騎士たちが一斉に振り向いたので、ルシンダもつられてその方向を見た。
(え、誰?何?)
ルシンダ以外の全員の視線が集まった先に、二人の若者が立っている。ひとりはさらさらとした金髪と晴天のような青い瞳を持ち、軽装すらしていない普段着ながら全身白い装いをしている。対してもうひとりは少し癖のある黒髪と満月のような珍しい金色の瞳で、似た作りの黒い服に身を包んでいる。そして二人とも隠しきれない気品と風格を漂わせる、掛け値なしの美男子だった。…寝起きでぼんやり、どんよりとした最悪の顔である点を除けば。
「黒と白の貴公子のお出ましだ」
つぶやいたサリオンの脇をすり抜けてジョシュたちが二人の若者を取り囲んだ。
「おはよう。カナン、エリオ」
「今朝はえらく早起きだけど、大丈夫?」
「心配ご無用、仕事ですから。後で二度寝させてもらいますけどね」
「…同じく」
金髪で白い服のカナンはおどけた調子で飄々と、一方黒髪で黒い服のエリオはぼそっとぶっきらぼうに応対する。正反対の態度ながら、周囲の和やかな雰囲気から察するに、二人とも仲間内では慕われる人気者らしい。
(カナンに、エリオか…けどこの時間で早起きって、どれだけ寝起きが悪いんだか…)
その二人に向け、ルシンダの頭の上を越すようにサリオンが声を張り上げた。
「宵っぱりで疲れてるところ悪いな、二人とも。早速だが、ゆうべおまえたちが森の奥で見つけたのはこの少女で間違いないか?」
(はっ?)
ルシンダは唖然とする。サリオンの言葉の意味が理解できない。しかし当のカナンとエリオはルシンダを一瞥しただけで首を縦に振った。
「間違いないです」
「ええ。この娘です」
「…ちょっ…!え、ええっ!?」
「どうかした?ルースちゃん」
ルシンダがすっかり混乱し、ひとり取り乱しているのとは対照的に、ラウル他、居並ぶ騎士たちの顔は、皆明らかににやにや笑いを堪えている。まるで寄ってたかってルシンダをからかっているように。
(やっぱり、歩いてるとこか寝てるとこをこの二人に見られてたの?…いや、そんなはずない。姿を見られるくらい近くにいたなら、私が気づかないはずないもの。ゆうべ私は誰も見てない。見たのはあの二匹の…)
人懐こく美しい白猫と、人を寄せつけない気高い黒猫を思い出す。そして今目の前には、明朗快活な白の貴公子と、無愛想な黒の貴公子が…。
(…嘘でしょ?)
「君、ルースっていうんだ。ゆうべのこと、思い出してくれたんだね。そう。今君が想像してるとおりだよ」
ルシンダが口をあんぐりとさせるのを見て取ったカナンはわざとらしく身体を開き、金髪をさらりとかき上げながら流し目を送ってきた。
「僕とエリィは生まれつき特殊な体質でね。夜になると呪いの魔力でときどき猫に変身するから、夜間や人間の足では踏み込みにくい場所での偵察任務に重宝されてるんだ。ゆうべはたまたまエリィと森をパトロールしてたとき君を見つけたんだよ」
初対面の者の驚く様を見るのが何よりの楽しみなのか、カナンは手で口を覆ってそっと欠伸をしているエリオを放置してルシンダに歩み寄った。
「君、僕の身体をあっちこっち触りまくって悦に入ってたよね。でも、猫にほとんど触り慣れてない感じだった。あの手つきじゃ、僕以外の猫なら速攻逃げ出してたね」
「!?」
「…やめろ、カナン。何も知らない小さい女の子をそんなふうにいじめるな」
エリオが低い声でたしなめたが、カナンはルシンダを気に入ったらしく、お構いなしにどんどん攻撃してくる。
「まだ信じられない?じゃあ、僕が知ってるはずがないことを教えてあげようか」
そう言って不意に爪先が触れるほど深く迫ると、肩を屈め、硬直するルシンダの耳許に顔を近づけた。
整った輪郭のその唇が、笑みを混じらせて短く動く。
(…はああっ!!!?)
そこから耳の奥に流し込まれた驚愕の情報に全身総毛立った。
(ま、間違いない…!いや、それはゆうべ私も見たからそうなんだけど…!)
カナンは身体を離すと平然とした無邪気な笑顔でルシンダを見下ろした。
「確かにこの目で見たんだからね」
「あ、あんた、いつもそうやって女の子の…!?」
「失礼だなあ、そんなわけないでしょ。僕は君が幽霊や幻じゃなくて、手も脚もちゃんとある生きてる人間であることを確かめただけだよ。エリィは知らない女には絶対近づきたくないって言うし」
(あのとき…私の脚にじゃれついたりなでなでを要求してきたりしたのは、それが目的だったの!?)
「だからエリィの分まで僕が仕事したってわけ」
「さも俺がおまえに仕事を押しつけたかのような言い方をするな。俺はその代わり、おまえが危害を加えられそうになったらいつでも飛びかかってひっかいてやれるように注意してたんだぞ」
エリオが目尻の少し切れ上がった端整なまなざしで自分をじっと見つめて…いや、睨んでくる。エリオはカナンとは違って人と馴れ合うのは嫌いらしい。その黄金色に輝く双眸は、まさにあの警戒心剥き出しの猫の両目そのものだった。
(今目の前にいるこの二人が、あの白猫と黒猫の正体…ということは…)
呪いの魔力でときどき猫に変身する、というカナンの言葉が頭の中を埋め尽くす。遭遇したときの感激や触れ合いの喜びの思い出が急速に彩度を落として過去のものになっていき、片隅に追いやられて忘れかけていた小さな記憶が突然輝きを放ち始めた。猫たちの去り際にちらりと見えた首輪のきらめきだ。
(そんな、まさか…まさかね…)
「猫になると夜行性だから、翌朝眠くてしょうがないんだよね…ふぁ…それじゃみんな、また後でね」
「…俺も、少しの間、失礼します」
ルシンダは二人の襟許を摑んでその内側を覗き込みたい衝動に駆られたが、二人はもう彼女に背を向けて二度寝をするためにそれぞれのテントに引き上げるところだった。
陽光が燦々と降り注ぐ色とりどりの花畑を、白猫と黒猫を追いかけて、ルシンダは走る。
「こら、逃げちゃダメ~!おとなしくしなさ~い!うふふふふふふふふ~」
「にゃー」
「にゃーん」
花と草の海を泳ぐように、飛ぶように駆け抜けてきた二匹だったが、何を思ったか、ふと歩みを止めて互いの顔をまじまじと見ると、なぜかいきなり取っ組み合いの遊びを始めた。そこにすかさずルシンダが突進した。
「つっかまえた~!!!!」
むぎゅううううっ
「んにゃっ!!」
「ふぎゅっ!!」
ルシンダは隙を突かれて腕の中でじたばた暴れる二匹の猫にこれでもかと頬擦りし、締まりのない表情をますますうっとりととろけさせた。
(ああ~、あったかくて柔らかくてもふもふ~…ほんとはこんな強引な遊び方しちゃいけないんだろうけど…夢みたい~…)
「…夢を見てるみたいだな…」
聞いたことのない低い声が降ってきたような気がしたが、猫に夢中のルシンダの耳には右から左だった。
(夢ならどうか覚めないで~…お願い、どうかこのまま永遠にもふもふさせて~)
「おい…おい、起きろ!」
(へっ?この声…誰??)
苛立った男の声がやけにはっきりと耳に突き刺さってきてパチッと目を開けたとき、ルシンダはたたんだコートを枕代わりにして地面に横向きに丸まって寝ていた。眠りにつく前に安全と快眠のために展開させておいた半透明の魔法のバリア越しに、真横に伸びた草とたむろする数人分のブーツの脚が見えた。
「…!?」
ガバッと起き上がると同時に魔法のバリアがぱちんと弾けて消え失せた。そこは猫たちが遊び戯れる青空の下の花畑ではなく、木々が鬱蒼と生い茂り薄い靄の立ちこめる朝の森の中だった。ピピピピ、と小鳥のさえずる声もどこからか聞こえていた。
「あ、やっと起きた。小さい女の子が、よくこんな森の奥でひとりで野宿できるね」
「いくら魔法が使えるからって、無防備すぎる気がするが」
「相当いい夢を見てたらしいな。幸せそうな寝言を言ってたぞ」
溜め息混じりの口調で呆れた台詞を投げかけてきたのは軽装備姿の三人の男だ。三十歳過ぎの落ち着いた風貌の者がひとり、成人したてくらいのまだ細身の者がひとり、そして二十代半ばの寡黙そうな者がひとり。身につけている防具には七つの星を模ったこの国の紋章があしらわれていて、地元のごろつきや盗賊団などではないことだけは即座にわかった。ルシンダは口許の涎を慌てて拭い、頬を両手でぺしぺしと叩いて夢の残像を追い払った。
(いけないいけない、ゆうべの触れ合いが楽しすぎて寝過ごしちゃった。人の接近にも気づかないなんて、よっぽど熟睡してたのね…)
ルシンダがまだ地面にぺたんと座ったまま髪をごしごし撫でていると、三人の中で最も年嵩の、隊長風の男が代表するように前に出てきて身分と目的を明かした。
「安心しろ。我々はシュテルンブルク王国王立騎士団第一分隊第二小隊所属の騎士だ。魔物討伐の任務を終えて王都に戻る途中この近くで野営をしていたら、夜の森をひとりでさまよう謎の少女がいるとの報告を受けたので、規則に基づき捜索、調査しに来た」
(報告…?ひょっとして、サントルムの村の夜廻りに見られてたのかなあ。全然気づかなかった…)
男は愛想の欠片もない太い地声で事務的に続ける。
「いかに錬金魔術師といえども、丸腰の少女がひとりで森の奥を歩き回るのは危険すぎる。いったいなぜこんなところに?夜中に森を徘徊して、何をしていたんだ?」
「班長、圧強すぎますって。そんなんじゃまた怖がらせて泣かせちゃいますよ」
童顔の若い騎士に身も蓋もない指摘をされると、身に覚えがあるのか、班長と呼ばれた男は気難しそうに押し黙った。と、若者はルシンダの方に屈み込み、にこやかな笑顔で話しかけた。
「ごめんね、びっくりさせちゃって。僕は見習い騎士のラウル。で、こっちが班長のサリオンと、先輩のジョシュ。君はサントルムの子?名前は何ていうの?」
「えっ…」
ルシンダはぎくりとした。当たり前であるがゆえにかえってその質問は想定していなかった。いや、考えすらしていなかったのだ。本物のルシンダ・オルフェルネスはとっくに死に、この名前が人間の間にまで知れ渡っているとも考えにくいので、本名を名乗っても構わないだろうかとルシンダはとっさに迷ったが、何か心に引っかかるものを感じて踏みとどまった。
(とりあえず本名は伏せといた方が無難かな…だったら…えーい、ままよっ!)
「ル…ルース。ルース・フェルネス…」
かつて姉から呼ばれていた愛称と短くした名字をくっつけて作った即席の偽名は想像した以上に平凡な響きで、三人の騎士もまったく違和感を覚えなかったようだった。ラウルという若い騎士は年上風を吹かせて世話を焼くことのできる対象を見つけたことが嬉しくてたまらない様子だ。
「ルースちゃんだね。それで、ルースちゃんはなんでこんなとこにひとりでいるの?お父さんとお母さんは?」
(あからさまに子供扱いね…実年齢はそんなに変わらないんだけど)
それならば、とルシンダは思いきりしおらしげな鼻声でボソボソと答えた。
「…大切な古い魔法壺を壊しちゃったせいでお師匠様にすごく怒られて、脱走してきたの…お父さんとお母さんは死んじゃって、もういない…」
班長のサリオンが眉根を寄せて間髪入れず尋ねてきた。
「師匠?どこの誰だ。町か村の名前は?」
(うっ…!!)
「…い、言いたくない!」
「し、しかし、言ってもらわねば我々としても対処のしようが…!」
「…!!」
これでどうだ、とルシンダが大粒の両目を潤ませたところへジョシュとラウルがさっと割り込んできた。
「班長、あまり強い口調で詰問すると本当に号泣されて話すどころではなくなる危険性が…。今は何も訊かず、落ち着いてからゆっくり聴き取りをしましょう」
「何も言いたくないなんて、きっと師匠に叱られたことがよっぽどつらかったんですよ。僕にはわかる気がしますけどね。班長も、若いときにはそういうことがあったでしょ?」
「そ、それは…!いや、俺のことはどうでもいいだろう!と、とにかくだ…未成年の浮浪者を見つけた以上ここに置いて戻るわけにいかないから、ひとまず我々と一緒にキャンプに来てもらう。話はそれからだ」
尋問を回避できてラッキー、と安心したのも束の間、ルシンダは飛び上がりそうになった。
(冗談じゃない!せっかく自由気ままなひとり旅ができると思ったのに、騎士団に拘束されるなんて…!)
「い、いえ!私は錬金魔術師で魔法も使えるし、ひとりでも大丈夫ですから…!」
「強がっても駄目だ。そんな服と靴で徒歩の旅は無謀だし、こう言っては何だが、君くらいの年齢の駆け出しがゴブリンやワーグにかなうとも思えない。危険すぎる」
「でも…!」
一応ここまでは無事に来れたんです、とジョシュに反論しようとしたとき、ぐううう、とルシンダの腹が派手に鳴った。昨夜サントルムを出た後ビスケットを数枚食べたきり食事らしい食事をしていないのだ。するとラウルがそれ見たこと、とにやついた。
「何たって、腹ペコじゃ歩けない。そうでしょ?」
「うう…!」
たとえ錬金魔術師でも、天才ルシンダ・オルフェルネスでも食べ物だけは作り出すことができないのだ。旅費も金目の物もなく、今三人をまいて逃げおおせてもこの先食事にありつける望みはない。背に腹はかえられないーー悟った途端に力と元気が出なくなり、ルシンダはとうとう白旗を揚げた。
「わかりました…騎士様たちについていきます…」
その返答を得るとサリオンとジョシュは安堵の笑みを浮かべ、一方ラウルは相変わらず上機嫌でルシンダの頭を撫でた。
「そうそう、いい子だねー。キャンプに着いたら一緒に朝ごはん食べようねー」
ルシンダの唇の端がぴくぴくと吊り上がった。
(こいつ、いちいち子供扱いして…今は言うこと聞いてあげるけど、ごはんもらったらそのうち姿をくらましてやるわ。見てなさいよ)
「では早く戻ろう。我々も朝一から君の捜索に出て、朝飯を食いそびれたからな」
「そうですね。キャンプに着く頃にはあの二人も起きて…いや、さすがにまだ寝てるかな」
「すみません、私のために」
口先では一応詫びを入れ、内心では誰も捜してくれとは言ってない、と文句を垂れながらルシンダはしぶしぶ三人についていった。
麓へと下る道なき道を、騎士たちがあらかじめ木の幹に捺してきていた狩人姫オルガことオーガスティンの魔法のスタンプを頼りに騎士たちとルシンダは歩いた。勾配のきつい箇所や大きめの石がごろごろしている場所ではときどき大人たちの手を借りながら、ひたすら足を動かすことおよそ三十分。そろそろ身体がきつくなってきたとルシンダが感じ始めた頃、樹木の間に人や人工物の姿がちらちらと見えてきた。
こうして四人は騎士団のキャンプ地に到着した。森の中の空き地に簡易のテントがいくつも建てられ、その間をサリオンたちと同じ軽装の人間が忙しく盛んに行き来している。荷物を運んでいる者や洗濯物を干している者、焚き火の側でお茶を飲んでいる者。久しぶりに触れる日常生活の匂いややかましさが不思議と新鮮に感じられ、ルシンダは思わず深呼吸をした。
「第二班班長サリオン、副班長ジョシュ、班員ラウル、ただ今帰還した」
「あ、お疲れ様です、サリオン殿」
「お帰りなさい、班長。女の子は見つかりました?」
「ああ、無事保護した。怪我などもない」
群がってきた騎士たちの中から女性がひとり進み出てルシンダに近づいた。
「向こうのテントに着替えを用意してますので、私が付き添います」
「頼む、テリーザ。だがその前に、人違いということはないと思うが、念のため確認してもらいたい。二人は?」
(二人?)
ルシンダがきょとんとすると、出迎えの騎士たちが答えた。
「それが、二人ともまだ寝てるみたいなんですよ」
「いつもどおりっちゃいつもどおりなんですけど…」
それを聞いたサリオンは渋い表情で腕組みした。
「まあ、そういう取り決めになってるからな…しかたない、先に朝飯にするか」
サリオンが仕切り直すようにそう言ってルシンダと部下たちを促したとき、騎士たちの輪の外からよく通る若い男の声がした。
「それを求められると思って、頑張って起きてきましたよ」
「!」
騎士たちが一斉に振り向いたので、ルシンダもつられてその方向を見た。
(え、誰?何?)
ルシンダ以外の全員の視線が集まった先に、二人の若者が立っている。ひとりはさらさらとした金髪と晴天のような青い瞳を持ち、軽装すらしていない普段着ながら全身白い装いをしている。対してもうひとりは少し癖のある黒髪と満月のような珍しい金色の瞳で、似た作りの黒い服に身を包んでいる。そして二人とも隠しきれない気品と風格を漂わせる、掛け値なしの美男子だった。…寝起きでぼんやり、どんよりとした最悪の顔である点を除けば。
「黒と白の貴公子のお出ましだ」
つぶやいたサリオンの脇をすり抜けてジョシュたちが二人の若者を取り囲んだ。
「おはよう。カナン、エリオ」
「今朝はえらく早起きだけど、大丈夫?」
「心配ご無用、仕事ですから。後で二度寝させてもらいますけどね」
「…同じく」
金髪で白い服のカナンはおどけた調子で飄々と、一方黒髪で黒い服のエリオはぼそっとぶっきらぼうに応対する。正反対の態度ながら、周囲の和やかな雰囲気から察するに、二人とも仲間内では慕われる人気者らしい。
(カナンに、エリオか…けどこの時間で早起きって、どれだけ寝起きが悪いんだか…)
その二人に向け、ルシンダの頭の上を越すようにサリオンが声を張り上げた。
「宵っぱりで疲れてるところ悪いな、二人とも。早速だが、ゆうべおまえたちが森の奥で見つけたのはこの少女で間違いないか?」
(はっ?)
ルシンダは唖然とする。サリオンの言葉の意味が理解できない。しかし当のカナンとエリオはルシンダを一瞥しただけで首を縦に振った。
「間違いないです」
「ええ。この娘です」
「…ちょっ…!え、ええっ!?」
「どうかした?ルースちゃん」
ルシンダがすっかり混乱し、ひとり取り乱しているのとは対照的に、ラウル他、居並ぶ騎士たちの顔は、皆明らかににやにや笑いを堪えている。まるで寄ってたかってルシンダをからかっているように。
(やっぱり、歩いてるとこか寝てるとこをこの二人に見られてたの?…いや、そんなはずない。姿を見られるくらい近くにいたなら、私が気づかないはずないもの。ゆうべ私は誰も見てない。見たのはあの二匹の…)
人懐こく美しい白猫と、人を寄せつけない気高い黒猫を思い出す。そして今目の前には、明朗快活な白の貴公子と、無愛想な黒の貴公子が…。
(…嘘でしょ?)
「君、ルースっていうんだ。ゆうべのこと、思い出してくれたんだね。そう。今君が想像してるとおりだよ」
ルシンダが口をあんぐりとさせるのを見て取ったカナンはわざとらしく身体を開き、金髪をさらりとかき上げながら流し目を送ってきた。
「僕とエリィは生まれつき特殊な体質でね。夜になると呪いの魔力でときどき猫に変身するから、夜間や人間の足では踏み込みにくい場所での偵察任務に重宝されてるんだ。ゆうべはたまたまエリィと森をパトロールしてたとき君を見つけたんだよ」
初対面の者の驚く様を見るのが何よりの楽しみなのか、カナンは手で口を覆ってそっと欠伸をしているエリオを放置してルシンダに歩み寄った。
「君、僕の身体をあっちこっち触りまくって悦に入ってたよね。でも、猫にほとんど触り慣れてない感じだった。あの手つきじゃ、僕以外の猫なら速攻逃げ出してたね」
「!?」
「…やめろ、カナン。何も知らない小さい女の子をそんなふうにいじめるな」
エリオが低い声でたしなめたが、カナンはルシンダを気に入ったらしく、お構いなしにどんどん攻撃してくる。
「まだ信じられない?じゃあ、僕が知ってるはずがないことを教えてあげようか」
そう言って不意に爪先が触れるほど深く迫ると、肩を屈め、硬直するルシンダの耳許に顔を近づけた。
整った輪郭のその唇が、笑みを混じらせて短く動く。
(…はああっ!!!?)
そこから耳の奥に流し込まれた驚愕の情報に全身総毛立った。
(ま、間違いない…!いや、それはゆうべ私も見たからそうなんだけど…!)
カナンは身体を離すと平然とした無邪気な笑顔でルシンダを見下ろした。
「確かにこの目で見たんだからね」
「あ、あんた、いつもそうやって女の子の…!?」
「失礼だなあ、そんなわけないでしょ。僕は君が幽霊や幻じゃなくて、手も脚もちゃんとある生きてる人間であることを確かめただけだよ。エリィは知らない女には絶対近づきたくないって言うし」
(あのとき…私の脚にじゃれついたりなでなでを要求してきたりしたのは、それが目的だったの!?)
「だからエリィの分まで僕が仕事したってわけ」
「さも俺がおまえに仕事を押しつけたかのような言い方をするな。俺はその代わり、おまえが危害を加えられそうになったらいつでも飛びかかってひっかいてやれるように注意してたんだぞ」
エリオが目尻の少し切れ上がった端整なまなざしで自分をじっと見つめて…いや、睨んでくる。エリオはカナンとは違って人と馴れ合うのは嫌いらしい。その黄金色に輝く双眸は、まさにあの警戒心剥き出しの猫の両目そのものだった。
(今目の前にいるこの二人が、あの白猫と黒猫の正体…ということは…)
呪いの魔力でときどき猫に変身する、というカナンの言葉が頭の中を埋め尽くす。遭遇したときの感激や触れ合いの喜びの思い出が急速に彩度を落として過去のものになっていき、片隅に追いやられて忘れかけていた小さな記憶が突然輝きを放ち始めた。猫たちの去り際にちらりと見えた首輪のきらめきだ。
(そんな、まさか…まさかね…)
「猫になると夜行性だから、翌朝眠くてしょうがないんだよね…ふぁ…それじゃみんな、また後でね」
「…俺も、少しの間、失礼します」
ルシンダは二人の襟許を摑んでその内側を覗き込みたい衝動に駆られたが、二人はもう彼女に背を向けて二度寝をするためにそれぞれのテントに引き上げるところだった。
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