男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

富士とまと

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イニシャル

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「贈った人物であれば、イニシャルの文字を知っているであろう」
 ハンカチのイニシャル……!
「シェミリオールのSではない。本人のイニシャルである可能性がある……名乗り出てくれぬか。Rを名前に持つ息子が恋する者よ」
 走馬灯のように、エミリーと過ごした日々が頭に浮かぶ。
 一緒に刺繍をさしたね。エミリーは針に糸を通すだけでもとても楽しそうで。
 大きな手で不器用にハンカチにひと針ひと針刺していく。嬉しそうな顔。はにかんだ笑顔を私に向けて縫ったハンカチを見せてくれた。
 陛下が見せてくれたのは2つの品だけだ。
 あれ?刺繍を刺すときに使ったミニ裁縫道具は、お盆の上にない……。
 あれは、あまりにも怖い絵が描いてあったからまさか贈られたものだと思わなかったのかな……?
 エミリーなら雑に扱うわけないと思うけれど……。
 ……!
 エミリーなら……。
 エミリーじゃないから、不気味だと、捨ててしまったのかも。
 ずきりと心臓が痛む。
 ブーケ・ド・コサージュやハンカチとちがって……。エミリーじゃなければ、あれが何かなんて分からないだろうし。
 エミリーと一緒に過ごした日々は……もう、私の記憶の中にしかない……。
 エミリーの心の中には、私はいない。私は……。
 私は……。
 ねぇ、エミリー。忘れてしまっても、エミリーがシェミリオール殿下の中に生きていれば、また同じような関係になれるの?
 ……もし、そうじゃなければ。エミリーなのにエミリーじゃないと日々感じるのは辛すぎるよ。
 ザワザワと会場のざわめきが収まらない。
「リリー、大丈夫かい?顔色が悪い。無理をしなくていいんだよ。もう陛下への挨拶も終わった。帰るかい?」
 お兄様の心配そうな声が耳に届く。
「今なら、誰かに捕まって足止めされることもないよ」
 足止め?
「さっきから、リリーを見ている奴らが多いからな……」
 え?私を見ている?
 エミリーのことばかり気にしていたから全く気が付かなかったけれど、言われて周りに視線を向けると、確かに私とお兄様に視線を向けている者は多い。
「あ、もしかして、お兄様は婚約を解消されましたし、自分が次の婚約者にと女性たちが待ち受けているんでしょうか」
 時期公爵となるお兄様だ。見た目もとても素敵だし、何より優しい。世界で一番素敵な……いえ、お父様と並んで素敵な男性だもの。
 そりゃ、婚約者がいなくなったのだから……自分が!という人はいるわよね。
「何を言っている、リリーと話がしたくてみんなうずうずしてるんだよ」
「え?」
「王妃様が注目をしているファッションリーダーである公爵令嬢と仲良くして損はないだろうし、何より……リリーは可愛いからね。世界一可愛い。そりゃ、男どもはリリーと話がしたくて仕方がないさ」
 お兄様、兄の欲目じゃないかしらね?


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よいお年をお迎えください。
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