婚約破棄しようとする皇太子を手違いで殺してしまった私の一日

富士とまと

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「あ、ああ……で、殿下っ」
 どうしよう。私……。
 殿下を殺してしまったわ!
 震える手で愛しい殿下の髪に触れる。
「殿下、殿下っ」
 ピクリとも動かない殿下。
 そんな……。
 レレナは腰を抜かし、四つん這いになってドアまで移動した。ドアの外に控えているはずの侍女を呼ぶ。
「ああ、大変、助けて……」
 レレナの悲痛な声に、慌てて侍女が部屋に入った。
「お嬢様、どうなさったのですか?」
「で、殿下が……殿下が……」
 真っ青な顔で震えるレレナが指さす方に侍女が視線を向けると、倒れた殿下の姿が目に入った。
「お嬢様、いったい何が……!」
「毒を……私が飲むはずだった毒を、殿下が飲んでしまって……!」
 レレナの言葉を聞いて侍女がほっと息をはきだした。
「ああ、でしたら解毒剤がありますわ。24時間以内に解毒剤を飲めば問題ありません」
 侍女の言葉に、レレナがさらに青ざめた。
「ないわ……解毒剤……」
「え?レレナお嬢様、毒薬と一緒に解毒剤も準備いたしましたけれど」
「王都の私の部屋よ……。使うつもりなどなかったから机の引き出しに入れたまま置いてきたの」
「え?ええええっ!」
 侍女はレレナの言葉を聞いてすぐに立ち上がった。
「分かりました。私が取りに戻ります。大丈夫です。王都まで馬車で4時間です。往復しても10時間とかかりません」
 侍女の言葉に、レレナが目を見開いた。
「そうね、そうよね。殿下は助かりますよね?」
「ええ、大丈夫です!レレナ様は、どうか、屋敷の者に……侯爵家の人たちに殿下の様子を悟られないようにお願いいたします。万が一間違いであったとしても殿下に毒を飲ませたなどと知られてしまえば、公爵家はお終いです」
 侍女の言葉にレレナは再び青ざめる。
「そうよね……。分かったわ。隠し通します」
「それから、この毒は完全にきくまで何度か目を覚ますと聞いています。24時間の間……いつどれくらい目を覚ますか分かりませんが、その間にどこか移動されて解毒剤を飲ませようとしたときにどこかへ行ってしまっていては問題です」
「分かりました。殿下がこの部屋から出ないようにすればいいのね」
 侍女が力強く頷くのを見てレレナも頷き返した。
「なるべく早く戻ってきてね……」
 侍女は話をしながらも、帽子をかぶり、外履きのブーツに履き替え準備を整えている。公爵家の馬車を使い、お嬢様が大切な品をお忘れになったので取りに戻るということで侍女は解毒剤を取りに出かけた。
  レレナの視線には、大好きな殿下が床に倒れている姿が映った。
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