婚約破棄しようとする皇太子を手違いで殺してしまった私の一日

富士とまと

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「僕がレレナがベットから落ちないようにずっと抱きしめていてあげる」
 殿下が、私を包み込むように抱きしめて、ベットに横になりました。
 きゃー。きゃー。
 何、どうして、どうして……ん?
 私の顔の前にある殿下の胸が、上下しています。
 ゆっくりと……。これは、まるで、眠ったときのようなゆっくりとしたリズムです。
「殿下?」
 レレナが声をかけても殿下から返事はなく、レレナがそっと殿下の顔を見上げると、眠っています。
 いえ、また仮死状態に戻っていると言った方がいいでしょうか。
「殿下……もう少しこのまま、居てもいいでしょうか……」
 レレナは殿下の胸に頬をすりつけた。
 どうしよう、夢にまで見た殿下の腕の中。
 誰かと勘違いしているとか、夢だから自分の思い通りに行動しているわけではないとか、……いつもの現実のレレナ相手には決して殿下はこんなことしないだろうと……そうは思っても。
 レレナの胸はキュンキュンしていた。
 最後の想い出だわ。
 殿下との最高の想い出だわ。
 へへ、嬉しいな。殿下に抱きしめられた。もう、この想い出だけで、私、修道院に入れられても幸せに過ごせそうです。
「好き……。ねぇ、殿下、大好き……。一時でも婚約者になれてよかった。殿下……」
 レレナは誰にも聞かれていないと思い、本音をポロポロとこぼす。
「嘘です。一時なんて嫌です。ずっと殿下と一緒に過ごしたかった。……死ぬまで一緒がよかった。殿下……大大大好き。もう少しだけこのまま……」
 ベットの上。
 殿下の腕の中に包まれ、レレナは、あまりの幸福感で……あっさり寝てしまった。

「え?うそ!私、寝ちゃった!」
 飛び起きると、ベットには一人きりだった。
「で、殿下は?殿下はまた少しだけ意識を取り戻したの?で、どこへ……?」
 どうしよう!
 殿下を見失ってしまうと、解毒剤を飲ませられなくなってしまう!
 慌てて部屋を飛び出すと、ロイド様と廊下で会った。
「殿下はどちらにいるかご存知ですか?」
「ああ、殿下でしたら殿下用に準備した客間に……えーっとその……」
 ほっとレレナは息を吐きだした。殿下は屋敷の中にいる。行方が分からなくなったわけではない。
「レレナ様の侍女は王都に忘れ物を取りに行ったと伺っています。手が足りないでしょうから、侯爵家の侍女をやりましょう。スイマセン、配慮が足りなくて……」
 ロイド様がふっと恥ずかしそうに顔を逸らした。
 廊下に飾ってあった金属製の彫刻にぼんやりとレレナの姿が映る。
 髪は乱れ、服にもシワが寄っている。
「あっ。ロイド様失礼いたしました。その……侍女をお借りいたします」
 何たる失態。
 眠って殿下を見失ってしまったのも失態だけれど……ベットから飛び起きてそのまま部屋を出てしまうなど、淑女としてあるまじき行為。
 乱れた髪や服など、裸で歩いているのを見られるようなもので……。
「美しさしか取り柄がないのに……その美しさを保つことすら私には出来ないなんて……」



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頑張れ私。さっさと終わる。ああ、終わるとも!後しばらくお付き合いを
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