婚約破棄しようとする皇太子を手違いで殺してしまった私の一日

富士とまと

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 侯爵家の侍女に身なりを整えてもらっている途中、夕食ですと声がかかった。
 わざわざロイドがレレナ伝えに来た。
「殿下はお食事をどうするのでしょうか?」
「呼びに行ったのだけれどね。部屋を覗いたけれどまだ寝ていたから……起きてからになると思う」
「あの、では私も殿下が起きてから一緒に食べようと思います。その、申し訳ありませんが、冷めても食べられる食事を二人分、殿下の部屋に用意していただけないでしょうか」
「え?えーっと、その……殿下の部屋に?あーっと、その、口が堅い使用人ばかりとはいえ……」
 ロイドが言いにくそうに口ごもる。
「ああ、そうね……未婚の女性が男性の部屋に行き二人きりというのは……外聞が悪いですわね……。いくら婚約者と言えども……」
 数日後にはマリアが婚約者になるのであれば……。男爵令嬢が皇太子妃になるのをよく思わない使用人がうっかり口を滑らせてしまう可能性だってないわけではないでしょうし。
「では、ロイド様もご一緒にいかがですか?」
 ロイドはレレナの提案にびくりと肩を震わせた。
「殿下が起きるまでは、私とレレナ様が二人きりということになってしまいますよ?それは、それで、色々と問題が……」
 ロイドがやけに焦った様子なのでレレナは内心ヒヤッとする。
 すぐに起きてしまうと思うのが普通じゃないでしょうか?
 仮死状態でなかなか目を覚まさないということをロイド様は知らないはずなのに……もしかして眠り方が通常とは違うとうすうす感づいているのでは?
 なんとしても、侍女が解毒剤を持ってきてくれるまで隠し通さなければ……。
「分かりましたわ。でしたら、先ほどの侍女をお貸ください。殿下の部屋で二人きりになるようなことはいたしませんわ……」
 ロイドは何故かホッと息を吐きだし。了解の意をレレナに伝える。
 しばらくして侍女と共にレレナは殿下の部屋に足を運んだ。
 ノックをしても返事が返ってくことはない。本来ならば返事を待ち入室するのが礼儀ではあるが、寝ていると分かっているため例外的に部屋に入って起きるのを待つ。
 冷めても食べられる食事が2人分運ばれてきた。おいしそうな臭いが部屋に漂う。
「殿下、お食事をいただきませんこと?」
 レレナはよく眠っている殿下の顔を覗き込み、声をかけた。
 そのとき、くぅーっとレレナのお腹が小さくなる。
「あああ、き、聞かれてませんわよね?殿下は眠っていらっしゃるし、お腹の音、聞こえてませんよね……。だめだわ。このまま殿下が目を覚ますまで食べずに待っていようと思っていたけれど……このままでは、私のお腹の音で殿下を起こしてしまいかねません……ここは、先にいただいた方が……。ねぇ、どちらがいいと思います?」
 侯爵家の侍女に尋ねるると、優しそうな笑顔が帰って来た。
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