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「あー、いや。俺の……いや、まぁ、上品そうな服を着ていたので、来る場所を間違えたんじゃないかと尋ねていたところだ」
 上品そうって、まぁ、アルフレッド様が子供のころの服だし。腐っても公爵様の服で、確かに回りにいる冒険者たちとは全然違うかも。
 ギルド長?と呼ばれた青年も、私が商業ギルドだかどっか敵対する組織からクレームを言いに来たかと思ったのかな?カイと一緒にいるからにらまれたんじゃなかったのかな?いや、敵対する組織があるかも知らないけども。だって、冒険者ギルドがあるって知ったのもちょっと前だし。小説だと商業ギルドと冒険者ギルドがライバル関係にあるのは定番だよ?
 それにしても、ギルド長と呼ばれる青年は若く見える。20代前半でギルド長?すごく優秀なんだ。
 ギルドの女性職員が私とカイを見てからギルド長に尋ねた。
「それで、間違いでしたか?」
「ああ、間違いだったようだ」
「いえ、来る場所を間違いじゃないです!私、冒険者ギルドに用があって来たんですっ!」
 ふんすっと鼻息あらく答える。
「え?いや、そういえば、俺に用があるんじゃなきゃ何しに来たんだ?」
 ギルド長がうろたえた。
 ってか、なんでギルド長に用があると思って……あれ?
「私、冒険者ギルドに登録しに来たんですけど……もしかして、登録業務はギルド長の仕事?だったら、ギルド長に用があるということに……」
「は?冒険者登録?嘘だろ?そんな不自由な生活じゃないだろう?俺は受付ないぞ!」
 ギルド長が驚いている。自分の服装を見る。お金に不自由しているようには確かに見えないかも。でも、離婚後の生活も考えないといけないし。
 っていうか俺は受け付けないってどういうこと?だいたい、本当にギルド長が受付業務するの?読んだ小説や漫画では受付業務をギルド長がするなんてないよ?やたらとスタイルのいいかわいい受付のお姉さんがしてくれるよ?目の前にいるこのお姉さんみたいな人が……。
「まあ!女性の冒険者は大歓迎よ!登録受付ね!おいで、いらっしゃい」
 優しい笑顔に吸い込まれるようにしてお姉さんとカウンターへと向かう。
 護衛のカイが私の後ろについてくるのはわかる。
 なぜギルド長が受付のお姉さんの後ろについてくるのか。そんなに私が冒険者登録するのが気に入らないの?
「登録は簡単。こちらの用紙に名前と属性魔法を書くだけです。ランクはFからスタートして、依頼をこなしていくとランクアップします」
 それからお姉さんは簡単にギルドの説明をしてくれた。Bランクから強制依頼があるだとか、依頼達成の条件だとか。漫画みたいだなぁと思いながら、右耳から左耳に聞き流す。
 だって、魔物討伐系は私には関係なさそうだし。
 登録用紙に名前を書く。
「えーっと、り、り、……」
 待てよリリアリスなんて珍しい名前、すぐに公爵夫人だってバレちゃうんじゃない?
 そうそう、カイに言ったように、アリスでいいか。
 アリスと書いたら、ギルド長がぷっと笑った。なぜ笑う!顔を上げると、目が合った。
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