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今さら帰れない。
いや、帰りたくない。
「おばあさん、お金くださいっ!」
「はぁ?何言ってんだ、さっさと出ていけっ」
追い払おうと箒を振り上げた手をがしっと掴む。
「ばばぁだからとなめんじゃないよ。こう見えてもわしは若かいころは冒険者として腕を鳴らしたんだ。そこらのお嬢ちゃんなど……む、むむむ、動かん」
箒を振り回そうとするおばあさんの手に力がこもる。
元冒険者だけあって、思った以上に力強い。でも、身体強化魔法を3まで重ねかけすると互角に張り合える。
しばらく力比べしたあと、おばあさんはぱっと力を抜いた。
行き場を失った私の体が前に傾いた瞬間、おばあさんは後ろに飛んで、箒の柄を抜いた。
なんと、箒から剣が出てきた。
「仕込み杖ならぬ、仕込み箒?」
初めて見るものにポカーンとしていると、剣先が私の首に向いた。
「はっ。おいぼれだと思って油断したね。アイシャから金を奪おうとしても無駄さ小娘。憲兵に突き出してやる。迅疾のアイシャ相手に強盗しようとしたのが運の尽きさ」
「え?強盗?ち、違います!働くのでお金をくださいっ。何でもやります。銅貨1枚でもいいんですっ」
おばあさんがはんっと鼻で笑った。
「分が悪くなった途端に言い訳かい?」
突き出された剣の刃を手で押しのけておばあさんの手を握る。
剣の刃も身体強化5にすればなんてことはない。
「小娘、お前、剣を……って、無傷かい……くっ。まさかこんな手練れだったとは。わしの勘も鈍っちまったねぇ」
おばあさんは剣を箒に戻すと、両手を上げた。
「煮るなり焼くなり好きにしな。たいして金目のもんはないけどね」
「煮る?焼く?料理を手伝えってことですか?あ、あの、何でもやりますと言いましたが、料理はしたことがなくて……あの、でも教えてもらえれば覚えられると……」
おばあさんが唖然とした顔をしてから、はぁと息を吐きだした。
「悪かったよ。強盗と間違えて……なぜお金がいるのか、聞かせてもらえるかい?」
アイシャさん(おばあさんと呼ぶと怒られた)に伯爵令嬢だということは伏せてかいつまんで話をした。
「なんだって?男に騙されて、荷物も金も盗られて、アパートを引き払って帰る場所もないだって?その上純潔まで奪われたと……」
いや、純潔は別の男の人だし、どうやら大金をクリスに払っていたみたいなのでクリスに騙された被害者仲間の可能性も……。
「分かった。稼ぎ方を教えてやるよ。ついておいで」
にやりと笑い部屋を出て行ったアイシャさんの後ろをついていく。
「ここは?」
一つの建物の前でアイシャさんが立ち止まった。見上げると剣とジョッキが描かれた看板が掲げられている。
ジョッキっていうことは酒場?給仕の仕事を紹介してくれるのだろうか?
アイシャさんの後ろについて建物に入る。
むわっとした血と汗と酒の匂いが混じった空気が鼻につく。
ごつい男の人がニヤニヤしてこちらを見た。
「ひゅぅー、綺麗な嬢ちゃんが冒険者ギルドに何の用だ?」
「護衛の依頼でも出しにきたのか?俺なんてどうだ?」
「俺なら護衛だけでなく、夜の相手もしてやるぞ~」
何人かの男に囲まれる。
……冒険者ギルド?
話に聞いたことがある、ここが……。
「どきな、お前たちに用はないよ」
と、アイシャさんが箒でしっしと男たちを追い払った。
「なんだ、ばばぁこそ邪魔なんだよ!俺は嬢ちゃんに話かけてるんだ!」
「箒なんか振り回して嬢ちゃんの護衛のつもりか?かかか、無理すんなおいぼれが!」
いや、帰りたくない。
「おばあさん、お金くださいっ!」
「はぁ?何言ってんだ、さっさと出ていけっ」
追い払おうと箒を振り上げた手をがしっと掴む。
「ばばぁだからとなめんじゃないよ。こう見えてもわしは若かいころは冒険者として腕を鳴らしたんだ。そこらのお嬢ちゃんなど……む、むむむ、動かん」
箒を振り回そうとするおばあさんの手に力がこもる。
元冒険者だけあって、思った以上に力強い。でも、身体強化魔法を3まで重ねかけすると互角に張り合える。
しばらく力比べしたあと、おばあさんはぱっと力を抜いた。
行き場を失った私の体が前に傾いた瞬間、おばあさんは後ろに飛んで、箒の柄を抜いた。
なんと、箒から剣が出てきた。
「仕込み杖ならぬ、仕込み箒?」
初めて見るものにポカーンとしていると、剣先が私の首に向いた。
「はっ。おいぼれだと思って油断したね。アイシャから金を奪おうとしても無駄さ小娘。憲兵に突き出してやる。迅疾のアイシャ相手に強盗しようとしたのが運の尽きさ」
「え?強盗?ち、違います!働くのでお金をくださいっ。何でもやります。銅貨1枚でもいいんですっ」
おばあさんがはんっと鼻で笑った。
「分が悪くなった途端に言い訳かい?」
突き出された剣の刃を手で押しのけておばあさんの手を握る。
剣の刃も身体強化5にすればなんてことはない。
「小娘、お前、剣を……って、無傷かい……くっ。まさかこんな手練れだったとは。わしの勘も鈍っちまったねぇ」
おばあさんは剣を箒に戻すと、両手を上げた。
「煮るなり焼くなり好きにしな。たいして金目のもんはないけどね」
「煮る?焼く?料理を手伝えってことですか?あ、あの、何でもやりますと言いましたが、料理はしたことがなくて……あの、でも教えてもらえれば覚えられると……」
おばあさんが唖然とした顔をしてから、はぁと息を吐きだした。
「悪かったよ。強盗と間違えて……なぜお金がいるのか、聞かせてもらえるかい?」
アイシャさん(おばあさんと呼ぶと怒られた)に伯爵令嬢だということは伏せてかいつまんで話をした。
「なんだって?男に騙されて、荷物も金も盗られて、アパートを引き払って帰る場所もないだって?その上純潔まで奪われたと……」
いや、純潔は別の男の人だし、どうやら大金をクリスに払っていたみたいなのでクリスに騙された被害者仲間の可能性も……。
「分かった。稼ぎ方を教えてやるよ。ついておいで」
にやりと笑い部屋を出て行ったアイシャさんの後ろをついていく。
「ここは?」
一つの建物の前でアイシャさんが立ち止まった。見上げると剣とジョッキが描かれた看板が掲げられている。
ジョッキっていうことは酒場?給仕の仕事を紹介してくれるのだろうか?
アイシャさんの後ろについて建物に入る。
むわっとした血と汗と酒の匂いが混じった空気が鼻につく。
ごつい男の人がニヤニヤしてこちらを見た。
「ひゅぅー、綺麗な嬢ちゃんが冒険者ギルドに何の用だ?」
「護衛の依頼でも出しにきたのか?俺なんてどうだ?」
「俺なら護衛だけでなく、夜の相手もしてやるぞ~」
何人かの男に囲まれる。
……冒険者ギルド?
話に聞いたことがある、ここが……。
「どきな、お前たちに用はないよ」
と、アイシャさんが箒でしっしと男たちを追い払った。
「なんだ、ばばぁこそ邪魔なんだよ!俺は嬢ちゃんに話かけてるんだ!」
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