婚約者に売られ子供ができたけど、訳あり元騎士様が代理パパになってくれたので幸せです

富士とまと

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「じゃあ、パン屋へ行こう!」
「パカパカパカ」
 ジャンは上機嫌だ。
「パン屋に到着!次はどこに行く?」
「うんと、うんと……パン屋しゃんっ!」
 ジャンの言葉にエディが笑った。
「あはは、またパン屋。いいよ。パン屋へ行こう!しゅっぱーつ」
「パカパカパカ」
 キャッキャと笑っている。
「よーし、到着だ。2つめのパン屋だぞ!次はどうする?」
「うーんと、うーんと、ママ、ママが決めて」
 ジャンの言葉に、エディが私に言葉を落とす。
 密着した状態、エディの息が私の髪を揺らすほどの距離に緊張する。
 頭が働かない。
「エディは?エディの行きたいところへ行きましょう!」
 エディがピクリと反応する。
「僕は……遠くへ。このまま3人で遠くへ行きたい」
 3人で遠くへ?
「よしジャン、全力疾走だ右へ進むぞ~次は左だ~しっかりつかまってるんだぞ~ドドドドドド~!」
 エディが私とジャンの二人に手をまわして落ちないようにしっかりつかみ、揺らす。
「きゃー」
 エディの腕に必死につかまる。
 落ちるようなことをエディはしないと分かっていても、揺らされると怖い。
 ジャンは大はしゃぎだ。
「あはは、ごめん、怖かった?」
 木馬から降りて、青い顔で息をすーはーと大きく吸って吐く。
「う、ううん、ジャンは大喜びだったから……その……ありがとう」 
 エディはジャンを楽しませようとしてくれていたのはよくわかるから。お礼を言う。
「でも、今度から、ジャンと二人で乗って!私は遠慮するから!」
 これだけは念押しをしておく。
 エディがちょっと寂しそうな顔をする。
「じゃあ、本物の馬は?一緒に乗ってくれる?」
「え?本物の馬……?もっと怖いのでは?だって、木馬は止まっているけれど、本物の馬は走るんだよね?あの高さで走っている馬から落ちたら……落ちたら……」
 身体強化を重ね掛けしておけば痛みも感じないのでは?
「落ちないように、しっかり抱きしめるから」
「だ、抱きしめるって……」
 顔が赤くなる。
「違う、抱きとめる?あ、なんていえば……そう、支える、支えるから……」
 エディが慌てて言い直すけれど、頭の中にエディが私を抱きしめるという想像が浮かんでしまって、消え去ってくれない。
「ちゅぎ、ちゅぎあっちよ!」
 ジャンが走り出した。
「こら、ジャン、勝手に行くと迷子になるわよ!」
 慌ててジャンの後を追う。
「そうだぞ、ジャン。迷路っていうのは迷う路って書くんだ。迷子にするための場所だぞ!」
 私より後に動きだしたのに、速いエディはあっという間にジャンを捕まえて抱き上げた。
 うー、速いってずるい。
「迷子、こあい」
 そうそう。怖いのよ。迷子になったら。それはしっかり教えてある。
「おてて、ちゅなぐ、迷子にならない」
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