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「ふほふほ、過去の栄光を使っただけじゃ。これでも名の知れた冒険者じゃったからな」
そうだった。冒険者たちに一目置かれてるんだよね。しかも国内に2人しかないS級冒険者のギルド長の祖母だし。子爵程度が敵に回せるような相手じゃなかった。
「それにしてもクリスがいると言うことは、王都に連れてこられたということで間違いなさそうじゃ。案外すぐに会えるんじゃないかの」
「はい」
ほっと息を吐き出して通された部屋で待つ。
「お待たせして申し訳ありません。クリスです。どのようなご用件だったでしょうか」
お茶が用意されるほどの時間も待たされず、すぐにクリスと名乗る青年が現れた。
「え?誰、ですか?」
「誰とは?私を訪ねてきたのではないですか?」
アイシャさんが私の顔を見た。
「人違いなのかい?」
こくりとうなずく。
どことなく似たところはあるけれど、別人だ。
「……でも、確かに、クリスは、ハムレイ子爵家の三男だと……」
青年がはぁーとため息をついた。
「それはたぶん私のいとこでしょう。前にも見知らぬ人から貸した金を返せと言われたことがあって……迷惑しているんですよ」
何てこと……。
クリスは何一つ私に本当のことを言ってなかったんだ。名前さえ……。
「あの、それで……クリスと名乗たその人はどこにいるのかご存じありませんか?」
本物のクリスが首を横に振った。
「シャルムは家からも勘当されていますしね。親戚一同関わりは断っています。どこでどうしているのかまるっきりわかりませんよ」
シャルム、それがクリスの本当の名前。
家から勘当されているということは、すでに貴族ではなく平民になっているということだ。
じゃあ、貴族が集まる舞踏会に現れることもないということだ。
……一体どうやって探せばいいというの?
「うむ、何かシャルムについて分かったらギルドに知らせてくれるかの?例はするからの」
師匠が立ち上がった。
「ええ、分かりました。これ以上あいつに悪さをされては困りますし、協力は惜しみません。お礼は結構ですので、こちらにも見つけたら知らせてもらえますか」
師匠が本物のクリスと約束を交わして屋敷を後にした。
「さぁ、行くぞ!」
師匠が私の背中をばしりとたたく。
「行くって、どこへ?だって、もう……手がかりが……」
足に力が入らない。クリスがいたと、すぐに情報が手に入ると喜んだ分ショックが大きい。
「十分手がかりがあるじゃないか」
アイシャさんがにやっと笑った。
「どうしようもないろくでなしという手がかりが」
ろくでなしが手がかり?
ギルドに戻り、アイシャさんはお酒を飲んでいる男を捕まえた。
「シャルムって貴族崩れの20歳くらいの男を探してるんだ。顔はそこそこ整っているが、クリスだとかなんだとか名前を偽って悪さを働いてる男だよ。髪の色は……」
アイシャさんが私を見た。
「金です」
それから目の色体系服装などいくつかの特徴を伝える。
「最近大金を手に入れたとか、手に入るとかいう話をしてるかもしれないねぇ。探して連れてきてくれ。あ、こっそり頼むよ。いい儲け話があるとでもいえばほいほいついてくるんじゃないかね」
「はい。アイシャ様!」
男はすっと立ち上がると音もなくギルドを出て行った。
「あとは、待ってればいいよ」
男が使っていたテーブルに座り、お茶を注文する。
「本当に大丈夫なんですか?」
アイシャさんがにっと笑う。
「ろくでなしが行きつく先なんて想像がつくさ。飲む打つ買うって昔から言うだろう?」
出てきたお茶を一口飲んでアイシャさんが顔をしかめた。
お茶に何かあったのかな?と飲んだら、ずいぶん濃い紅茶だった。
「悪い奴らが集まるところはカモがいないかと手ぐすねを引くさらに悪い奴がいるもんさ。金回りがよさそうな男の噂はすぐに広まる。案外狭い世界だからね。さっきの男はそういった裏の世界の情報屋だよ」
「へー」
「ああ、思ったより早かったね」
アイシャさんがギルドの入り口に視線を向けたので、つられて視線を向けると、さっきの男と一緒にクリス……いや、本当の名前はシャルムだったか。シャルムが入ってきた。
視線が合うと、すぐにシャルムは驚いたように目を見開いた。
そうだった。冒険者たちに一目置かれてるんだよね。しかも国内に2人しかないS級冒険者のギルド長の祖母だし。子爵程度が敵に回せるような相手じゃなかった。
「それにしてもクリスがいると言うことは、王都に連れてこられたということで間違いなさそうじゃ。案外すぐに会えるんじゃないかの」
「はい」
ほっと息を吐き出して通された部屋で待つ。
「お待たせして申し訳ありません。クリスです。どのようなご用件だったでしょうか」
お茶が用意されるほどの時間も待たされず、すぐにクリスと名乗る青年が現れた。
「え?誰、ですか?」
「誰とは?私を訪ねてきたのではないですか?」
アイシャさんが私の顔を見た。
「人違いなのかい?」
こくりとうなずく。
どことなく似たところはあるけれど、別人だ。
「……でも、確かに、クリスは、ハムレイ子爵家の三男だと……」
青年がはぁーとため息をついた。
「それはたぶん私のいとこでしょう。前にも見知らぬ人から貸した金を返せと言われたことがあって……迷惑しているんですよ」
何てこと……。
クリスは何一つ私に本当のことを言ってなかったんだ。名前さえ……。
「あの、それで……クリスと名乗たその人はどこにいるのかご存じありませんか?」
本物のクリスが首を横に振った。
「シャルムは家からも勘当されていますしね。親戚一同関わりは断っています。どこでどうしているのかまるっきりわかりませんよ」
シャルム、それがクリスの本当の名前。
家から勘当されているということは、すでに貴族ではなく平民になっているということだ。
じゃあ、貴族が集まる舞踏会に現れることもないということだ。
……一体どうやって探せばいいというの?
「うむ、何かシャルムについて分かったらギルドに知らせてくれるかの?例はするからの」
師匠が立ち上がった。
「ええ、分かりました。これ以上あいつに悪さをされては困りますし、協力は惜しみません。お礼は結構ですので、こちらにも見つけたら知らせてもらえますか」
師匠が本物のクリスと約束を交わして屋敷を後にした。
「さぁ、行くぞ!」
師匠が私の背中をばしりとたたく。
「行くって、どこへ?だって、もう……手がかりが……」
足に力が入らない。クリスがいたと、すぐに情報が手に入ると喜んだ分ショックが大きい。
「十分手がかりがあるじゃないか」
アイシャさんがにやっと笑った。
「どうしようもないろくでなしという手がかりが」
ろくでなしが手がかり?
ギルドに戻り、アイシャさんはお酒を飲んでいる男を捕まえた。
「シャルムって貴族崩れの20歳くらいの男を探してるんだ。顔はそこそこ整っているが、クリスだとかなんだとか名前を偽って悪さを働いてる男だよ。髪の色は……」
アイシャさんが私を見た。
「金です」
それから目の色体系服装などいくつかの特徴を伝える。
「最近大金を手に入れたとか、手に入るとかいう話をしてるかもしれないねぇ。探して連れてきてくれ。あ、こっそり頼むよ。いい儲け話があるとでもいえばほいほいついてくるんじゃないかね」
「はい。アイシャ様!」
男はすっと立ち上がると音もなくギルドを出て行った。
「あとは、待ってればいいよ」
男が使っていたテーブルに座り、お茶を注文する。
「本当に大丈夫なんですか?」
アイシャさんがにっと笑う。
「ろくでなしが行きつく先なんて想像がつくさ。飲む打つ買うって昔から言うだろう?」
出てきたお茶を一口飲んでアイシャさんが顔をしかめた。
お茶に何かあったのかな?と飲んだら、ずいぶん濃い紅茶だった。
「悪い奴らが集まるところはカモがいないかと手ぐすねを引くさらに悪い奴がいるもんさ。金回りがよさそうな男の噂はすぐに広まる。案外狭い世界だからね。さっきの男はそういった裏の世界の情報屋だよ」
「へー」
「ああ、思ったより早かったね」
アイシャさんがギルドの入り口に視線を向けたので、つられて視線を向けると、さっきの男と一緒にクリス……いや、本当の名前はシャルムだったか。シャルムが入ってきた。
視線が合うと、すぐにシャルムは驚いたように目を見開いた。
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