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着替えが終わり、食堂へ向かう。
席に座ると、すぐに父も座った。
私の給仕はメイで、父の給仕はセバスがするようだ。まだ使用人の数は足りていないようだ。
「今日は、王宮で婚約締結書にサインする予定だったが」
え?
それはまずい。
「嫌よ、行きたくないわ!」
「何故だ?一日も早くアレン殿下と婚約したいと言っていただろう?」
理由、理由……。頭を回転させてていると、セバスが音を立ててカップを置いた。
給仕に慣れていないのだからそんなものだろうと思ったが、父は不愉快そうにセバスをにらみつけた。
「ほら、セバスが給仕しなくちゃいけないくらい、使用人が足りてないでしょ?誰が私の準備をするの?ドレスを着せてもらえばいいわけじゃないのよ?綺麗に化粧して素敵に髪を結ってもらわないと恥ずかしくて殿下の前になんて出れないわ!」
ユメアらしい理由じゃないだろうか?
「ユメアはそのままでも十分かわいいぞ。気にすることはない」
「でも、昨日はあんなことがあって疲れちゃったし、お義姉様の容態とか聞かれてもめんどくさいし、っていうか、お義姉様があんな状態だったら、婚約しても祝ってもらえないんじゃないの?いやよ、そんなの。ちゃんとみんなに祝ってほしいわ。そうね、婚約披露パーティーでは3回くらいドレスを着替えて、1着目のドレスは殿下の瞳の色に合わせて、それから」
と、ユメアらしくペラペラと話出すと、父が止めた。
「あー、わかった、分かった。ドレスの話はまた後で考えような。ユメアなら何を着ても似合うと思うが。王宮には使いをやろう。昨日のことで体調を崩しているとでも言えばいいだろう。確かに今急いで婚約するのは外聞が悪いかもしれないな。日は改めるか。それにしても忌々しいルイーゼめ」
今回のことは”ルイーゼ”本人のせいではなく、怪我をさせた殿下が悪いのだろう。
でも、世の中の悪いことはすべてルイーゼのせいにしたいのか。
そこまで父は私を憎んでいるんだ。
もう、何の未練もない。
最後にマーサにも会えた。
カーク様の運命も変えられた。
お母様の真実を知り明らかにする。ユメアの出生も。
そうすれば、私が罰せられるだろう。お父様はルイーゼもユメアも二人とも娘を失うのだ。しかも、自ら招いたことで。王家からも睨まれ、もう公爵家はおしまい。
部屋に戻ろうとすると、ルイーゼに自分のパンを運んでくれていたという使用人がカートを押しているのが見えた。
カートの上には、温かい食事が載せられている。
「ねぇ、意識が戻ったの?」
「い、いえ。その……少しは食べられるかもしれないと、マーサさんが……意識が戻らなければ、こちらを少しずつ流し込んでいくそうです」
栄養のある蜂蜜を溶かしたミルクだろうか。
いくら栄養があるからと言っても……。
ずっとそればかりで食事ができなければ……。
意識がこのまま戻らなければ、もって1週間といったところだろうか。
使用人がルイーゼの体のある部屋へカートを運び込む。
席に座ると、すぐに父も座った。
私の給仕はメイで、父の給仕はセバスがするようだ。まだ使用人の数は足りていないようだ。
「今日は、王宮で婚約締結書にサインする予定だったが」
え?
それはまずい。
「嫌よ、行きたくないわ!」
「何故だ?一日も早くアレン殿下と婚約したいと言っていただろう?」
理由、理由……。頭を回転させてていると、セバスが音を立ててカップを置いた。
給仕に慣れていないのだからそんなものだろうと思ったが、父は不愉快そうにセバスをにらみつけた。
「ほら、セバスが給仕しなくちゃいけないくらい、使用人が足りてないでしょ?誰が私の準備をするの?ドレスを着せてもらえばいいわけじゃないのよ?綺麗に化粧して素敵に髪を結ってもらわないと恥ずかしくて殿下の前になんて出れないわ!」
ユメアらしい理由じゃないだろうか?
「ユメアはそのままでも十分かわいいぞ。気にすることはない」
「でも、昨日はあんなことがあって疲れちゃったし、お義姉様の容態とか聞かれてもめんどくさいし、っていうか、お義姉様があんな状態だったら、婚約しても祝ってもらえないんじゃないの?いやよ、そんなの。ちゃんとみんなに祝ってほしいわ。そうね、婚約披露パーティーでは3回くらいドレスを着替えて、1着目のドレスは殿下の瞳の色に合わせて、それから」
と、ユメアらしくペラペラと話出すと、父が止めた。
「あー、わかった、分かった。ドレスの話はまた後で考えような。ユメアなら何を着ても似合うと思うが。王宮には使いをやろう。昨日のことで体調を崩しているとでも言えばいいだろう。確かに今急いで婚約するのは外聞が悪いかもしれないな。日は改めるか。それにしても忌々しいルイーゼめ」
今回のことは”ルイーゼ”本人のせいではなく、怪我をさせた殿下が悪いのだろう。
でも、世の中の悪いことはすべてルイーゼのせいにしたいのか。
そこまで父は私を憎んでいるんだ。
もう、何の未練もない。
最後にマーサにも会えた。
カーク様の運命も変えられた。
お母様の真実を知り明らかにする。ユメアの出生も。
そうすれば、私が罰せられるだろう。お父様はルイーゼもユメアも二人とも娘を失うのだ。しかも、自ら招いたことで。王家からも睨まれ、もう公爵家はおしまい。
部屋に戻ろうとすると、ルイーゼに自分のパンを運んでくれていたという使用人がカートを押しているのが見えた。
カートの上には、温かい食事が載せられている。
「ねぇ、意識が戻ったの?」
「い、いえ。その……少しは食べられるかもしれないと、マーサさんが……意識が戻らなければ、こちらを少しずつ流し込んでいくそうです」
栄養のある蜂蜜を溶かしたミルクだろうか。
いくら栄養があるからと言っても……。
ずっとそればかりで食事ができなければ……。
意識がこのまま戻らなければ、もって1週間といったところだろうか。
使用人がルイーゼの体のある部屋へカートを運び込む。
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